川崎市は現在、市民が出した空き缶や粗大ゴミなど、資源ゴミの持ち去りを禁止する条例の改正を進めている。

市によると、近年はトラックで乗りつけ、大量の資源ゴミを運んでいく組織的持ち去りが増加している。だが、根拠となる条例がないために指導できず、対応に苦慮してきたという。

実は、資源ゴミの持ち去りに悩む自治体は少なくない。川崎市を含む全国20の政令指定都市のうち、条例で規制しているのは14都市にのぼる(広島市は要綱で対応)。そうした条例がないのは4都市だけだ。

一方、資源ゴミの中では、空き缶ホームレスの人たちの収入源の一つにもなっており、人権擁護から規制に反対する声もある。川崎市は今後、どのような舵取りをするのだろう。

「悪質で組織的な持ち去り」に苦慮

川崎市によると、この問題は長年の行政課題でもあった。資源ゴミが持ち去られる際に騒音が発生したり、ゴミ集積所が散らかったりすることもあり、市民から苦情が寄せられる。また、川崎市にとっても貴重な収入源の流出にもなっている。

川崎市の推計では、2015年から5年の被害は空き缶だけで年平均280トンとなり、被害額は2000万円相当という。市環境局生活環境部の担当者は「資源ゴミの持ち去りは、積年の課題でした」と話す。

「法律上、資源ゴミを含めた廃棄物の処理責任は市町村にあります。しかし、勝手に持ち去られてしまうと、廃棄物がどう処理されているのかわかりません。世界的にも廃棄物の適正処理が求められている中で、市としての責任をきちんと果たしていこうということで、条例の改正を検討しているところです」(同担当者)

川崎市では条例改正のねらいは、「トラックで来て悪質かつ組織的な持ち去り」という。

「持ち去りを見つけたときに注意することもありますが、なぜ持ち去ってはいけないのかと聞かれたときに、条例がないままだと根拠を持った指導が難しい。口頭のお願いベースでは限界があり、振り切って持っていってしまうケースもあります」と担当者。

また、川崎市では資源ゴミの市況が高騰すれば、さらに悪質で組織的な持ち去りが増えるとみて、現行条例のみの対応では困難と説明する。

「我々には空き缶集めしかない」

一方で、資源ゴミの中には、ホームレスの人たちの収入源となっている空き缶も含まれている。川崎市内のホームレスの人たちは年々減少しているものの、現在も200人程度が生活している。

川崎市では、条例改正への方針を決定するにあたり、2020年12月ホームレスの人や支援団体から意見を聞く集会を2回にわたり開いた。

「我々には空き缶集めしかない、というご意見もいただきました。市としても、ただ頭ごなしに進めるのではなく、お身体が厳しい方には福祉的な援助を受けていただく、働ける方には就労支援につなげるといったように、健康福祉部局と密に連携しながら丁寧な対応をしていきたいと思っています」(担当者)

また、川崎市は今年2月から3月にかけて、市民からパブリックコメントを募集した。

その中には、「(ホームレスの人が)缶集めをすることは悪いこととは思っているが、地域の人たちとコミュニケーションを取りながら協力してもらっている場合もあり、持ち去りを禁止しないでほしい」「様々な事情で路上生活をし、缶集めをおこなっている人がいるので、個別の事情に応じた、自立支援に向けた取り組みなどが必要である」といった声があった。

これまで、資源ゴミ持ち去りを規制した自治体の中には、ホームレスや支援団体からの激しい反発にあい、社会問題に発展した事例もある。

川崎市では、早ければ今秋の市議会に改正案を提出したいとしているが、同時にそうしたホームレスの人たちへの対応も急務となっており、その動向が注視される。

ホームレスの収入源が断たれる? 川崎市が「資源ゴミ」持ち去り禁止条例を進めるワケ