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無事に暮らせるのかという不安

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
新型コロナウイルスワクチン接種が始まり、ようやく復調の兆しが見えてきた英国。明るいとはいえない1年の前半だったが、筆者の一家にとっては、ランボルギーニからの提案で想像以上に輝きのあるものとなった。

【画像】これぞスーパーSUV ランボルギーニ・ウルス 小変更間近 試作車も 全61枚

ある日の朝、1本の電話が入った。思わず朝食後のコーヒーをこぼしそうな内容だった。ほとんど何も考えずに「もちろん、お願いします」。と答えた気がする。

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ランボルギーニ・ウルス(英国仕様)

果たしてロックダウン最中での、イタリア生まれのスーパーSUVとの暮らしはどんなものだろう。特別な週末にしか乗らなそうな、極めて目立つ、ランボルギーニ・ウルスとの毎日は。

結果として、実際はかなり楽しめたと思う。家族は間違いなく楽しんでいた。改めて振り返ってみると、少し複雑な気持ちにもなる。ウルスを返却する時、少しホッとしたところもあったが、悲しくもあった。

電話から数日後、木曜日にウルスが我が家へ届けられた。先週の木曜日より気分が明るくなっただけでなく、家の前の様子も壮観なほど華やかになった。

ボディカラーはジアッロ・ソリッドというイエロー。積載車からオモチャのクルマのようにクレーンで吊り降ろされ、もともと広くない家の前の駐車スペースを専有した。路上に置かれると、一層巨大で派手に見える。

客観的に面白く感じたが、それは初めの数分だけ。これからの10週間、無事に暮らすことができるのかという不安がどこからともなく湧いてくる。

気がつけば普段の移動手段に

子どもたちは、すぐに乗って出かけたいとせがむ。しかし英国はロックダウン中。どこも開いていないし、気安く外出するわけにはいかない。

ランボルギーニなんて、滅多に自由に乗れるクルマではない。しかもハイオク満タンにして、家族で出かけられるSUVだ。しかし、スクーターのように気軽に乗れる環境にはない。皮肉過ぎる。

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ランボルギーニ・ウルス(英国仕様)

英国では珍しいことではないのだが、駐車場は家の前の路肩。21万6634ポンド(3336万円)もするエキゾチックなSUVを、昼夜問わず路上駐車することになる。誰かに盗まれないかと、強い不安に駆られる。

高価なクルマを路上に置いて出かけるのは、あまりに気が引ける。ウルスが「わたしを盗んで!」と叫んでいるようにも思える。そう感じるのは筆者だけかも知れないけれど。

ロックダウン中のステイホームに対する、新しい手段のようでもあった。大きく目立つから、安易に乗るわけにもいかない。ウルスを家の前に置いて、出かけるわけにもいかない。苦笑いするしかない。

ところが2週間ほどが過ぎ、週末の買い物や仕事の移動手段として乗る回数を重ねるうちに、それほど人目を引かない存在に思えるようになった。毎日の足としてランボルギーニへ乗ることに抵抗を感じていてたが、気がつけば普段の移動手段に変わっていた。

路上の砂埃を吹き飛ばしながら買い物へ

プレス発表の会場にも乗って行ったし、ネットで注文した品物のピックアップにも何度か使った。実際に運転してみると、ディスカウントストアの駐車場にも、想像以上に問題なく停められる。

荷室は広く、フロアを仕切れるオーガナイザーも付いている。冷凍食品や野菜などを分けて載せられ、卵がペットボトルに押しつぶされるのを防げる。ありがたい。

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ランボルギーニ・ウルス(英国仕様)

3週間が過ぎた頃には自信も湧いてきて、郊外のスーパーマーケットまで、筆者の好きな道を経由して試乗テストのような運転を試せるようにもなった。警察の目を盗むことなく。慣れとは恐ろしい。

ウルスで郊外の道へ出て、大きなトランスミッション・トンネルの上に配されたドライビングモードのセレクターを操作する。路上に浮く砂埃を、吹き飛ばしながら走る。

セレクターは一方向にしか押せず、6種類のプリセットを順番に選ぶ。表記はイタリア語だが、つまりは、ロード、スポーツ、サーキット、スノー、ロック&サンドと、設定を自由に組み合わせられる最後のエゴ・モードがある。

うっかり選びたいモードを逃してしまうと、もう一度6回クリックし直さなければいけない。少し面倒に感じた。一緒に暮らすと、使用上の小さなつまづきにも気付ける。

筆者が頻繁に選んだのは、ロードとスポーツの2つのモードだった。ロードは、クルマのデフォルト。一度クルマから降りると、毎回ロードが選ばれてしまう。

この続きは後編にて。


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