きょう6月27日、最終回を迎えるTBS系連続ドラマ「ドラゴン桜」(毎週日曜 後9:00)。注目を集めた若手キャスト陣の好演もあり、6月20日放送の第9話では平均視聴率15.4%と自己最高を更新しました(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 今回は生徒役を務めた、南沙良さん、細田佳央太さん、鈴鹿央士さんの3人に焦点を当て、これまでの活躍を振り返っていきます。

ドラゴン桜」が新たな代表作に

 まずは南さんです。何らかの問題を抱えている生徒が多い中、何不自由なく、家族の愛情を一身に受けて育った、天真らんまんで明るい性格の早瀬奈緒を演じています。

 南さんは、2014年にファッション誌「ニコラ」のモデルオーディションでグランプリを受賞、同誌の専属モデルとなります。2017年公開の映画「幼な子われらに生まれ」で女優デビューを果たし、その後もさまざまな作品に出演しています。

 翌年、「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」で映画初主演。吃音(きつおん)症を抱え、周りとうまくなじむことができない女子高生・大島志乃役を見事に演じていました。初主演とは思えないほどの演技力で、人とコミュニケーションを取り、仲良くなるからこそ生まれる苦悩を表現する演技や、徐々に解き放たれていく様子、そして、泣きの演技が特に印象的で、当時から注目を集めていた女優の一人です。

 以降、映画「もみの家」、ドラマ「ココア」(フジテレビ系)、「これっきりサマー」(NHK総合)で主演を務め、今年2月放送のドラマ「六畳間のピアノマン」(同)では、理想とのギャップに悩まされながらも、夢をかなえるために奮闘する女子高生地下アイドルを演じました。

 どちらかというと、苦悩を抱える内向的な役を演じる印象が強い南さんですが、「ドラゴン桜」では打って変わって、明るく外向的な役で、彼女の新境地となる新たな代表作となるでしょう。東大専科の中でもムードメーカー的存在で、仲間思いな一面もあります。

 今まで何かを頑張った経験がなく、成功体験がないからこそ、いざというときに緊張して力が発揮できず、自分に自信を持つことができなかったり、明るさの中に時折見せる裏の一面もしっかりと表現されています。

 そんな南さんは、2022年放送予定のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」への出演も決まっています。

 続いて、発達障害を抱えながらも昆虫が大好きで、優しい心を持つ原健太を演じている細田さん。2014年公開の映画「もういちど 家族落語」で俳優デビューを果たし、2019年には映画「町田くんの世界」で、1000人以上の中から主人公・町田一役にオーディションで選ばれ、映画初主演を務めました。

 同作は、数々の名作を生み出している石井裕也監督が映画化した作品で、脇を固める俳優陣に、岩田剛典さん、高畑充希さん、前田敦子さん、仲野太賀さん、池松壮亮さん、戸田恵梨香さん、佐藤浩市さん、北村有起哉さん、松嶋菜々子さんら豪華な顔ぶれがそろい、その中で、町田さんは見事に主演を務め上げました。

 石井監督は「オーディションで1人だけ異彩を放ち、彼と組めば間違いないと思った」と大絶賛しています。純粋で善意の心に満ちあふれていて、知らない間に周りを笑顔にする町田をフレッシュさ全開で演じています。そんな町田の姿はどこか、高良健吾さんが演じていた横道世之介役をほうふつとさせるものがあり、愛されるべき人物像を見事に体現していました。

 直近では、映画「花束みたいな恋をした」やドラマ「イチケイのカラス」(フジテレビ系)の第4話にも出演しており、認知度も徐々に高まってきている細田さん。まだ19歳ながら、役に入り込んでいく憑依(ひょうい)性を感じ、それだけ、役に真摯(しんし)に向き合っている印象を受けます。

ドラゴン桜」でも、1000人を超えるオーディションの中から選ばれ、健太役をつかみ取りました。役作りで丸刈りにし、10キロ以上の増量をして作品に挑んでいますが、普段の細田さんと比較してみると、同一人物とは思えないほど、健太になりきっていて、ネット上でもその高い演技力が話題になっています。

広瀬すずさんの目に留まりデビュー

 最後に鈴鹿さんですが、学年トップの成績で優秀ながらも、人を見下して、ばかにするような性格に難のある生徒・藤井遼を演じています。

 高校2年生の頃、映画「先生!、、、好きになってもいいですか?」のロケが通っていた高校で行われ、エキストラとして参加。その際、出演者の広瀬すずさんの目に留まり、広瀬さんが、スカウトするようマネジャーに進言したことがきっかけで芸能界入りしたという経歴を持っています。

 その後、ファッション誌「MEN’S NON-NO」の専属モデルオーディションでグランプリを獲得。2019年から俳優活動を始め、同年公開の映画「蜜蜂と遠雷」で天才ピアニスト・風間塵役をオーディションで勝ち取り、映画初出演を果たしています。

 役作りができなかったと語る鈴鹿さんでしたが、天才ピアニストでありながら、音楽を心の底から楽しむ人物像を体現した演技が評価され、「第93回キネマ旬報ベスト・テン」「第43回日本アカデミー賞」など数々の新人賞を受賞する活躍ぶりとなりました。

 以降、ドラマ「MIU404」(TBS系)では菅田将暉さん演じる久住を慕う重要な役どころを存在感ある演技で担い、「ホリミヤ」(MBSTBS系)では久保田紗友さんとのダブル主演にも抜てきされました。いずれも、役によって印象がガラッと変わるのが特徴的で、幅広い役柄を演じています。

 藤井役もまた、新たな役柄で、普段の爽やかな印象からは想像できないほどの性悪な面を見せながら、東大専科に入ることで徐々に変わっていき、素直さや臆病な一面も見せています。そのギャップによって、憎めない人間味のある藤井を確立していると言っても過言ではないでしょう。

 今年7月には主演を務める「星空のむこうの国」の他、「かそけきサンカヨウ」と2作の映画が公開を控えています。

 この3人以外にも、アイドルグループ・King & Princeのメンバーとして活躍し、さまざまな作品で学生役をこなす高橋海人さん、欅坂46を脱退し、活躍の幅を広げている平手友梨奈さん、子役の頃から大活躍だった加藤清史郎さん、「ゆるキャン△」(テレビ東京系)や今泉力哉監督作に度々出演している志田彩良さんと、生徒役を務めた若手俳優たちの活躍から今後も目が離せません。

ライター 岡田拓朗

細田佳央太さん(2019年6月、時事通信フォト)