2020年12月25日経済産業省が発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、電気自動車については、「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる」と記されました。

これをきっかけに各種メディアで「日本でも2030年代、ガソリン車やディーゼル車の新車販売が禁止になる」という報道が相次ぎましたが、電気自動車・ガソリン車の販売シェアは現状どうなのでしょうか。各種統計データをもとに実態を見ていきます。

国内における電気自動車販売シェア推移

国土交通省経済産業省「EV/PHV普及の現状について」によると、日本の次世代自動車の年間販売台数は2017年度で約159万台であり、新車販売の36.7%にとどまっています。

最新の販売状況については、一般社団法人日本自動車販売協会連合会が「燃料別販売台数(乗用車)」を月別で集計・公表しています。

最新データである2021年5月分は下記の通りです。構成比が高い順に並び替えました。

直近であっても、ガソリン車の販売実績が過半数を占め、エンジンをモーターで補助するガソリン車であるHV(ハイブリッド車)が続きました。

最新のデータでも次世代自動車(HV・PHV・EV・FCVの4種)の販売シェアは41.4%にとどまっている状況です。

「LIMO[リーモ]の今日の記事へ」

ガソリン供給量と給油所の推移

では、ガソリン車の燃料であるガソリン供給量と、それを補給する給油所の状況はどのようになっているのでしょうか。

ガソリン供給量についてはe-Stat(政府統計の総合窓口) 「石油製品需給動態統計調査 石油統計(統計表)」で確認できます。

上記のように供給量は直近で減少傾向にあります。

また、経済産業省 資源エネルギー庁「令和元年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました」中の資料「揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)」によると、揮発油販売業者数・給油所(ガソリンスタンド)数ともに、この10年間で減少傾向です。

<給油所数>

<揮発油販売業者数>

さらに、給油所数の新設・廃止の内訳をみると、下記の通りでした。

<平成22年度→令和元年度までの給油所新設・廃止の内訳>

  • 新設:1708(運営者交替・継承を除く)

  • 廃止:1万2428

新しい給油所は毎年登録されているものの、廃止のスピードに追い付いていないというのが実情のようです。

ガソリン車の今後について

電気自動車の販売シェアが伸びない一方、給油所(ガソリンスタンド)は年々減少していることがわかりました。

では、ガソリン車の今後はどのようになるのでしょうか。一般財団法人 自動車検査登録情報協会「自動車保有台数推移表(令和2年)」のデータを踏まえて考察してみます。

日本における乗用車の保有台数は、令和2年(2020年)3月末において「61,808,586台」でした。

乗用車の保有台数は2006年頃から横ばいの傾向が続いており、仮に次世代自動車が年に200万台新たに売れたと仮定しても、保有台数に占める割合としては3.2ポイント増加するにすぎません。

このペースでは10年後の2031年時点でも日本においては乗用車の過半数がガソリン車のままでしょう。また、次世代自動車のうちHV(ハイブリッド車)はベースがガソリン車である点も考慮が必要です。

日本において、メディアが報道するような「2030年までにガソリン車全面禁止」は現実的ではありません。

統計データを見ると、各種報道とは異なる動きをしていることがしばしばあります。
ニュースを見て「あれ?本当にそうだろうか」と気になった際は、各種統計データを集めて調べてみると、新たな発見があるかもしれません。

参考資料