グラフィットが国の制度を通じて申請していた、ペダル付き電動バイクを「自転車モードなら車両区分上も自転車として扱う」ことが警察庁に認められました。「車両区分を変化させることができるモビリティ」の誕生、その影響は大きそうです。

警察庁通達でた!

ペダル付き電動バイク「GFR」シリーズなどを製造販売するグラフィット(和歌山市)は2021年7月2日(金)、同バイクが「車両区分を変化させることができるモビリティ」の日本第一号案件になったことを受け、東京都内で記者会見を開きました。

GFRシリーズはバイクモード、電動アシストモード、自転車モードの切り替えが可能ですが、原付ナンバープレートを隠す機構を取り付けることで、「自転車モードであれば道路交通法上も自転車として扱う」ことが警察庁に認められたのです。

警察庁6月28日付けで「『車両区分を変化させることができるモビリティ』について」と題した通達を発出し、このことを全国の警察などへ周知しました。

通常、このようなペダル付きバイクは電源オフで自転車としてでも、原付として扱われるため、免許携帯のうえヘルメットを装着し、車道を走行する必要があります。

グラフィットの鳴海禎造社長は会見のプレゼンで、道路の写真を示しながら「これは最近できた大きな道で、車道は60km/h規制のためクルマのスピードが速いです。(自転車通行可の)歩道は広く取られていますが、GFRは車道を走るしかありませんでした」と説明。「日本の道路は、このような小型モビリティが安心して走れる状況にはない」といいます。

「法律の考えでは、その機体の最高性能に準じるとされており、仮にバッテリーを外していてもGFRは自転車ということにはなりませんでした。なんとか法的に、原付と自転車とで2つの区分を認めてもらえないかと働きかけました」(鳴海社長)

その状態を打開するのが、新開発のモビリティカテゴリーチェンジャー、略して「モビチェン」です。

簡単に言うと、ナンバープレートを隠す装置。本体電源オフの状態でのみ、プレートをカバーする機構をつくり、車両区分の切り替え正式に認められることとなりました。これにより、自転車モードであれば、たとえば駐輪場なども自転車用を使えるようになるといいます。

これから続々?「車両区分を変化させることができるモビリティ」

今回の措置はグラフィットのGFRシリーズのみで認められるものですが、警察庁の通達には、「これ以外に『車両区分を変化させることができるモビリティ』に該当すると考えられる製品を認知した場合には、警察庁において要件を満たすか否かについて判断する」とあります。

つまり、適用はGFRシリーズにとどまらない構えであり、これが現行法のなかで位置付けられたことは、今後、大きな影響を及ぼしそうです。

「車両区分を変化させることができるモビリティ」の通達について鳴海社長は、「(警察庁として)2種類以上の車両区分に跨るものが出てくると想定するようになった」ことだといいます。

「たとえば、クルマからロボットになったり、ドローンからバイクになったりするモビリティも、合法になります」(鳴海社長)

すでに他社でも、同様のモビリティを開発する動きがあるとのことです。

和歌山市長と内閣官房の担当者が語るモビリティの意義

今回グラフィットは、内閣官房が創設した「規制のサンドボックス制度」を利用し、和歌山市と共同で申請、実証実験なども市と協力して行い、認可に至っています。登壇した和歌山市の尾花正啓市長は、グラフィットからの提案に協力を即決したとのこと。「移動だけでない、様々な社会問題を解決するための大きなカギがモビリティです」と話しました。

規制のサンドボックス制度とは、複数省庁にまたがる規制により新しい事業がしにくい場合の窓口として、内閣官房が各省庁へ働きかけるというもの。3年間にわたりグラフィットの伴走者になったという内閣官房 成長戦略会議事務局 参事官補佐の萩原 成さんは、今回の規制の見直しを大きな変化だと評価しました。

グラフィットさんの取み組みは、脱炭素や免許返納、“所有からシェアへ”の動き、コロナ禍による行動変容といった社会情勢の変化にも大きく関わります。地方部でバスなどの公共交通が減っているなか、それを代替する小型モビリティに社会の期待も大きくなっています」(萩原さん)

では自転車と原付で、保険や事故の扱いはどうなるのでしょうか。

鳴海社長によると、GFRシリーズは道路運送車両法上は原付に分類されるため、原付の自賠責保険や任意保険に加入し、自転車モードでの事故においても、それが適用されるとのこと。一方、自転車モードで原付以上と事故した場合などは、道路交通法の観点に立つため、自転車として扱われるということでした。

ただ肝心のモビチェンの発売は、夏を予定していたものの、秋にずれ込む見込みだといいます。

ちなみに鳴海社長によると、GFRシリーズのもう一つのモードである電動アシストモードとバイクモードの車両区分の切り替えも、警察庁から認可を内諾されており、今後対応していくそうです。

※誤字を修正しました(7月2日20時50分)。

原付ナンバープレートを隠すモビチェンをつけたGFRシリーズ(中島洋平撮影)。