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◆菅内閣は、悠仁殿下と秋篠宮家、そして日本の歴史を守った

 政治の裏技だ。本当にやりたいことを隠せ!

 菅義偉首相は、印綬を帯びる前に「政権の至上命題は規制改革」だと宣言した。では、規制改革とは何か。押印の廃止、携帯電話の料金値下げ、NHKの受信料の値下げ、等々の条件が列挙された。では、それらすべてが実現したら、規制改革になるのか。これでは規制改革を何のために行わねばならないのか、よくわからない

 しかし、「規制改革」が菅首相の他に存在する真の目的を隠す、壮大なカムフラージュだったとしたら、稀代の策謀家として後世に名を残すだろう。そして、その真の目的が国体護持、すなわち日本国の象徴である皇室を守ることであれば、尊皇家の大宰相として語り継がれるだろう。

◆皇位継承者が途絶えてしまう危機感から生まれた「女系天皇

 本欄でこそ再三再四お伝えしているが、菅内閣で皇位継承に関する有識者会議が招集され、女系天皇に関して「賛成7vs.反対14」となっていることは、ほとんど知られていない。そもそも、女系天皇とは何なのかも、ほとんどの日本人はよくわかっていないだろう。

 昭和40(1965)年に秋篠宮殿下が誕生されてから、皇室には男子がお生まれにならなかった。現行の制度では、皇位継承者が絶えてしまう。そうした中、平成13(2001)年に愛子内親王殿下が誕生された。そして「愛子様が天皇になれない、愛子様のお子様が天皇になれないのでは、皇室が途絶えてしまう」との危機感が走った。

 そこで「愛子天皇」を可能とする「女帝」、「愛子天皇」の御子様の即位を可能とする「女系天皇」論が飛び出した。そうでもしなければ、皇室が途絶えてしまうとの切迫感からだった。

◆悠仁殿下がおわす今、もはや「女系天皇」など終わった話

 しかし、平成18(2006)年、悠仁親王殿下がご誕生された。日本国の歴史を受け継ぐ御方である。我が国は初代神武天皇の伝説以来、一度も途切れることのない伝統を受け継いできた。

 日本国は常に皇室を戴く国であったし、その皇室は神武天皇の男系子孫が受け継いできた。悠仁親王殿下がご無事に成長され、即位されれば、昨日と同じ今日を明日にも受け継いでいくことができる。日本が日本であり続けてほしいと願う人々がなすべきは、いかにして悠仁殿下をお守りするかである。

 悠仁殿下がおわす今、「女帝」だの「女系」だの、秋篠宮家に皇位を渡さないがための陰謀にすぎない。かつてならいざ知らず、もはや「女系天皇」など終わった話なのだ。

 今回、菅内閣が「女系天皇」論に、引導を渡した。今次有識者会議では「悠仁殿下がおわす以上、女系天皇など言うべきではない」との意見が多数を占め、「今の皇位継承順位を変えない」との結論になった。このまま事を進めれば、後世の日本人は褒めたたえるだろう。菅内閣は、悠仁殿下と秋篠宮家、そして日本の歴史を守った、と。

◆西村泰彦宮内庁長官、天皇陛下の心中を想像で語るとは何事か

 ところで、とんだ闖入者が出てきた。西村泰彦宮内庁長官だ。西村長官は6月24日記者会見で、陛下はオリンピックの開催で新型コロナが感染拡大しないか懸念していると拝察すると言い出した。天皇陛下の心中を想像で語るとは何事か。

 あまりの言葉に、その場にいた記者もこれはオフレコではなく、「仮に拝察でも長官の発言としてオンだから、報道されれば影響あると思うが、発信していいのか」と確認している(朝日新聞より)。これに対し西村長官は、堂々と「はい」と返答している。この御仁、上皇陛下や東宮殿下に対してもそうだったが、皇室に対する尊崇の念が無いらしい。

 立憲国家の君主は、神聖不可侵であらねばならない。その意味は、「君主は、現実政治に介入してはならない」だ。だから、国民世論が割れ、政治勢力が対立している段階で政治に嘴を挟むのを、歴代天皇は戒めてきた。それを宮内庁長官が、天皇に責任を帰し奉る言動を行った。馘首以外にあるまい。それにしても、何を考えていたのか。

◆都庁のタヌキや医師会のキツネに振り回されてばかりの政権に、悲劇が起きないことを願うしかない

 安倍晋三前首相は、株価と支持率に気を配ったと聞く。ならば、菅首相は、ワクチンの普及率と支持率か。今の菅首相を見ていると、「ワクチンが普及さえすればコロナ感染者は抑制され、オリンピックも成功し、支持率も回復、政権を維持できる」と考えているようにしか見えない。

 私などは「そんなことよりも、世界的に著名な外科医で、コロナ禍の当初から適切な提言をなされていた大木隆生慈恵医科大学教授をコロナ担当大臣にお迎えして局面の打開を図るべきだ」と言い続けたが、聞く耳は持たないようだ。

 実際、永田町にも、「ワクチンが普及すれば、コロナなど何とでもなる」との空気が流れている。そう上手くいけばいいが、そうならなければ悲劇だ。政権は都庁のタヌキや医師会のキツネに振り回されてばかりだが、「あの時、もっと早く大木先生にお願いしておけば」とならないように願うしかない。

◆菅首相が歴史に名を遺すとすれば、「皇室を守る」だ

 そんな菅内閣の守護神は、ワクチンよりも、弱すぎる野党だろう。野党第一党、立憲民主党の体たらくは、話題にするだけ時間の無駄だ。問題は小池百合子東京都知事だが、病気で入院した。東京都議選も、不戦敗の構えだ。これなら乗り切れるかもしれないと菅首相や周辺が考えるのも無理はないか……。

 菅首相は72歳、総理を最大限やっても、あと3年だろう。その間に何がやれるかが大事だ。

 菅首相が歴史に名を遺すとすれば、「皇室を守る」だ。具体的には、本来ならば皇族で生まれてくるべきだった方々への、親王宣下だ。法的には、旧皇族の男系男子孫の皇位継承資格取得を可能とする、皇室典範の改正だ。これを可能にするプログラムはどうか。

◆皇室、コロナ、政局、経済、すべてつながっている

 今年7月4日東京都議選は、既に自民党が勝つ見込みだ。その後、オリンピックパラリンピックをやり遂げると、9月5日。この時点で内閣支持率が高ければ、自民党総裁選は無投票で再選。その直後に行われる衆議院選挙になだれ込む。ここまで来れば、政権は引きずりおろされない。

 だが、’22年1月の通常国会に皇室典範の改正案を出すのは難しかろう。同年7月の参議院選挙が待ち構える。といって、最大2年以内に終わらせたいので、’23年1月の通常国会に典範改正案を出したい。

 そして3月は日銀総裁の任期切れだ。ここまで景気を維持して、さらに意中の人物を日銀に送り込みたい。

 皇室、コロナ、政局、経済、すべてつながっているのである。

【倉山 満】
’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、最新著書に『保守とネトウヨの近現代史』がある

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21日、日本郵政グループの新型コロナウイルスワクチン接種会場へ視察に訪れた菅義偉首相。果たしてワクチンさえ普及すれば、菅政権は現状をうまく乗り切れるのだろうか 写真/時事通信社