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ひと括りにはできない奥深さ

text:AUTOCAR UK編集部
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

「最高」のオフロードカーを決めるのは、ちょっとした愚行だ(でも、ご覧の通り、記者はその試みをやめていない)。ブレークオーバーアングル、サスペンションストローク量、渡河水深、コストなど、比較のための基本的なパラメータを突き止めたとしても、結局の問題は環境にあるからだ。

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こうした車両の中には、岩だらけの斜面を這い上がるように設計されたものがある。また、でこぼこ路面を猛烈なスピードで走り抜けることを想定したものや、滑りやすい路面を着実に進み続ける驚異的なトラクションを持つもの、そして砂漠サバイバルのスペシャリストもある。いずれもオフローダーと呼ばれるもので、それぞれに得意分野がある。

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道は彼らが通った後にできる。

いずれにしても、AUTOCARでは、どこにでも行ける代表的な4輪駆動車を、独自の基準で紹介する。

1. ランドローバー・ディフェンダー

10年以上にわたる前置きを経て、ランドローバーは2019年にようやく、待望のディフェンダーの後続モデルを披露し、2020年に発売した。

ラダーフレーム構造からモノコック構造に変更したことや、それ以外にも多くの理由から、この新型ディフェンダーは直接の後継というよりは代替モデルであり、その結果、泥道や岩場、水場、傾斜地など、先代と同じように走れないのではないかと危惧する声もあった。

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ランドローバー・ディフェンダー

しかし、新型ディフェンダーは、そのようなことをほとんどすべて行うことができる。アプローチアングルとデパーチャーアングルは約40度、ハイトアジャスタブル・エアサスペンションにより最大291mmのグランドクリアランスを確保しており、適切な要素をすべて備えている。

しかし、トランスミッションのモード選択、前進力の維持、轍の中でのラインの維持など、ドライバーの負担を軽減する数々のシステムが印象的だ。

パワートレインには、4気筒と6気筒のディーゼルエンジン、4気筒と6気筒のガソリンエンジンがあり、プラグインハイブリッドと高性能仕様のV8バージョンも間もなく発売される。

AUTOCARが選んだのはD250ディーゼルで、有用なトルクと適度な燃費、運転のしやすさ、洗練性を兼ね備えており、他モデルほどコストをかける必要もない。

このクルマの4WD性能は疑う余地もなく、オフロードでの身のこなしを見ると、オフロードが好きではない人のために作られたクルマのように思える。しかし、それに加えて舗装路での乗り心地やハンドリングの良さが加わって、ライバルを圧倒している。「最高の4WD」は、全く新しい命を与えられたのだ。

2. ジープ・ラングラー

ジープラングラーを根本から変化させることはあまりないが、最新モデルでは舗装路での使いやすさだけでなく、オフロードでの性能も向上している。

第二次世界大戦中に配備されたウィリスMBジープの丸型ヘッドライト、スロットグリル、箱型のボディなど、愛されてきたデザインをジープが大切に守っているのは、魅力の一部に過ぎない。

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ジープラングラー

インテリアはより広々とし、決して安っぽくない仕上がりになっている。これは、小型化されたエンジンの効率が向上し、環境性能が改善されたことと同様だ(すべては相対的なものだが)。

特に3ドアのルビコンモデルでは、ラダーフレーム、ロック式ディファレンシャル、ノブ付きタイヤ、専用のアーティキュレーティングアクスル、アンダーボディ・ブレース、優れたアプローチアングルとデパーチャーアングルなど、人里離れた場所でも目を見張るものがある。しかし、ランドローバーのディフェンダーのように毎日一緒に暮らすにはちょっと物足りないので、第2位となった。

しかし、大自然の中での探検では、ジープの右に出るものはほとんどいない。

3. トヨタ・ランドクルーザー

ラングラーと並ぶ、もう1つのアイコンであるランドクルーザーは、オーストラリアアウトバック(砂漠地帯)では歴史的に働き者として使われてきた。ボディ・オン・フレーム構造の昔ながらのオフローダーで、どこにもスキがない。

ランドクルーザーは、人を寄せ付けないような場所での牽引や渡河、低回転での走りに非常に適しており、スチールホイール(鉄チン)が目印のユーティリティーバージョンは、非常に手頃な価格となっている。

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トヨタ・ランドクルーザー

しかし、エアサスペンションやレザーシートを装備した2.8Lのターボディーゼルを選ぶことはできても、アウディメルセデス・ベンツのモノコックSUVのような乗り心地やハンドリングは期待できない。

ハイウェイでは洗練されていないが、実際にこのようなクルマを必要とする場所では別次元の存在であり、機械的な信頼性の高さは競合他社の誰もが羨むほどだ。

4. メルセデス・ベンツGクラス

最高のオフローダーは、長く愛される傾向にある。ラングラーもランドクルーザーも何十年も前から存在し、Gワーゲンも同じだ。

メルセデスの中で唯一「生産終了日」が設定されていないこのモデルは、40年の歴史の中で一度だけ、本格的なモデルチェンジを行った。フロントサスペンションは完全に独立しており、そのセットアップはすべてAMGによって開発されたが、シャシーはラダーフレームのままだ。

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メルセデス・ベンツGクラス

その結果、ロック式ディファレンシャル、グランドクリアランスの改善、そしてこれまでと同様のオフロード性能だけでなく、扱いやすいハンドリング、さらには走る楽しさをも実現している。最も大きな違いは、ステアリングのラック・アンド・ピニオン式への移行だ。

G350dにはクリーミーな直6ディーゼルが搭載されているが、600ps近いツインターボのガソリンV8を搭載したAMG G 63を選ぶことも可能だ。

5. フォード・レンジャー・ラプター

レンジャー・ラプターは、バジャにインスパイアされたピックアップトラックで、単純に人を喜ばせることを目的としている。フロントにはリーフスプリング、リアには従来のワットリンクに代わって、大幅に再設計されたアクスルやスプリングフォックス・モータースポーツ・ダンパーが採用されている。

このセットアップは、低速・低負荷時で最も効果を発揮するようにチューニングされており、グランドクリアランスも30%アップしている。AUTOCARは以前、このクルマを「ラフ・トラック・スポーツカー」と表現した。

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フォードレンジャー・ラプター

ウィークポイントとしては、英国では2.0L 4気筒ターボディーゼルしか設定されておらず、価格も5万ポンド(約770万円)弱とかなり高価なことだ。

商用車としての実用性は限られているが、荒れた土地を猛スピードで走破する手段としては、他の追随を許さないだろう。

6. ランドローバー・ディスカバリー

第5世代のランドローバーディスカバリーは、上記のクルマの性能を考えても、なぜこのリストの上位に来ないのかと思うかもしれない。大局的に見て、このクルマはオフロードでの能力が非常に高く、それに加えて素晴らしい快適性を備えており、他のクルマが太刀打ちできないほどのオールラウンダーとなっている。

しかし、本当に厳しい状況に直面したときに、扱いやすさ、グリップ、粘り強さ、根性があるわけではない。2021年モデルのフェイスリフトでは、ガソリン車とディーゼル車の両方に新しい6気筒エンジンが搭載され、サスペンションやインテリアも一新され、多目的に使えるクルマとして高い評価を維持している。

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ランドローバーディスカバリー

7. ボウラー・ブルドッグ

週末の泥遊びにどれほど真剣に取り組んでいるかを世界に知らしめたいなら、世界で最も象徴的なオフローダーに似た外観を持ちながら、中身は高度にカスタマイズされたラリー・レイドカーを購入すること以上の方法はないだろう。

ウラー・ブルドッグは、英ダービーシャー州に本拠を置くボウラー社最新の「クロスセクター」プラットフォームを使用したオフローダーである。少し前にランドローバーが同社を買収したほどの、優れた技術力が注ぎ込まれている。

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ウラー・ブルドッグ

カスタムメイドのモノコックシャシーに、ディスカバリーやレンジローバー・スポーツに採用されているロングトラベル・サスペンションを搭載し、ヘビーデューティスプリングダンパーを採用することで、過酷な環境下での走行を可能にしている。

パワートレインは、スーパーチャージャー付きガソリンエンジンとディーゼルが用意されており、後者の場合、巨大な燃料タンクにより、多くのラリー・レイド愛好家が必要とする砂漠横断を可能にしている。

その代わりにガソリンエンジンを選択すると、最高出力575psの5.0L V8エンジンが搭載されているが、燃費と航続距離は「かなり」低下する。とはいえ、荷台にはジェリ缶を置くスペースが十分にあるから問題はないだろう。

ブルドッグのパフォーマンスは、選ぶエンジンに応じてホットハッチからスポーツカーまでスタイルが幅広い。その乗り心地とハンドリングは、舗装路では驚くほど正確だが、轍、砂利、泥、砂の上では不屈の堅牢さと面白さがある。

8. スズキ・ジムニー

スズキジムニーを、世界で唯一の軽量で本格的なオフローダーとして販売している。車重は1100kg強だが、ラダーフレームのシャシーにリジッドアクスルのサスペンションとローレシオのトランスミッションを採用している。

AUTOCARはランドクルーザーとのツインテストを実施したことがあるが、ジムニーオフロードでも威力を発揮することが証明された。実際、オーバーハングは小さく、アプローチアングルブレークオーバーアングル、デパーチャーアングルのすべてがラングラーのそれを上回っている。これはかなりのものだ。

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スズキ・ジムニー

自然吸気の1.5Lガソリンエンジンは経済的ではなく、トランクは狭く、快適性も高いわけではない。しかし、この小柄なボディとなんとも愛嬌のあるルックスには、どうしようもなく心が惹かれてしまう。

スズキの英国法人は、ジムニーを2020年に販売中止にした。これは排出ガス規制の強化に対応できなかったためだが、最近、2人乗りの商用車仕様として再導入が決定した。

9. いすゞDマックスAT35

「AT」とはアークティック・トラックの略で、アイスランドに拠点を置く高性能オフローダー開発のスペシャリストであるアークティック・トラック社のことを指す。同社は、さまざまなオフローダーを北極・南極をはじめとする地球上のほとんどの場所に行けるように改造する。

いすゞDマックスは元来、ピックアップトラックの中でも特に頑丈で高性能なモデルだが、アークティック・トラックのオフロード専用タイヤ、125mmの車高アップ、サスペンションのアップグレード(ストローク量の増加)により、その真価が発揮される。

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いすゞDマックスAT35

しかし、これは非常に特殊なオフローダーであることを忘れてはならない。走らせるのは安くても、買うのは決して安くはなく、その驚異的な能力の代償として乗り心地が犠牲になっているのだ。

なお、アークティック・トラック社は、日産ナバラやトヨタ・ハイラックスの「AT」モデルも手掛けている

10. アリエル・ノマド

世界ラリー選手権仕様の車高調を、1トンあたり355psのパワーウェイトレシオを誇るミドシップ車に搭載。サマセット州に本拠地を置くアリエルが破壊的な速さとレスポンスの良さを誇るアトムに次ぐセカンドカーとして開発したのが、このノマドである。

ノブ付きタイヤ、アトムよりも強化されたダブルウィッシュボーン・サスペンション、そしてオーリンズ製の素晴らしいダンパー(残念ながら追加料金が必要だが、その価値は十分にある)を採用している。

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アリエル・ノマド

ダンパーにはデュアルレートのスプリングが使用されており、走行シーンに応じた柔軟なコントロール性を発揮する。一方で、ステアリングはアシストなしで、ブレーキバイアスも変更できる。つまり、ノマドは荒れた土地を超音速で走破するが、その核心は素晴らしいドライバーズカーであることに変わりはないのだ。

もちろん、恐ろしく非実用的で、空想の産物とも言える。後輪駆動のみで、熱心なオフロード愛好家が住む世界ではあまり実用的ではないため、このリストでは最下位に甘んじている。しかし、AUTOCARはノマドが存在すること自体に敬意を表したい。ちなみに、ウィンチ付きのモデルもあるのだ。


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