日本のTikTok普及において、女性クリエイターが果たしてきた功績は少なくない。活動初期からさまざまなメディアへ出演してきた「ねお」や、現在そのジャンルでトップクリエイターとしてTVなどでも活躍する「景井ひな」、恋愛リアリティーショーへの出演でまた一つ人気タレントへの階段を昇っている「なえなの」などがその代表格として挙げられる。

 しかし現在、これらの牙城を切り崩し、女性としては日本で2位、全体でも10位へと上り詰めた「ゆーり🍎🐥(20)」というクリエイターがいる。彼女は特徴的な声やキュートなキャラクターを武器に、日本のみならず世界でも多くのフォロワーを獲得し、現在の登録者は500万人を目前に迫る(7月2日現在)、いま最も勢いがあると言っても差し支えないTikTokクリエイターだ。

 そこで今回リアルサウンドテックでは、彼女のこれまでとこれからについて、あらゆる角度から迫るためのインタビューを実施。そこで見えてきたのは、キュートなキャラクターの裏側に潜む、戦略家としてのクールな一面だった。(中村拓海)

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・「クリエイターって、一回伸びても落ちていくもの」だと思っている

――まずはゆーりさんがTikTokと出会う前にどんな人生を送っていたのか教えてください。

ゆーり🍎🐥(20)(以下、ゆーり):元々はピアノを習っていて、舞台に立つことも多かったんですが、身体や手の大きさがまわりより小さいこともあり、将来的にピアノを職にするのは厳しいかもしれないというのを12歳の時に感じて。もともと、家族でミュージカルをよく見に行っていたこともあり、舞台やお芝居に興味をもったので、そっちのほうで成功したいと思うようになったんです。そこから福岡の芸能事務所に入って、舞台やCMなどでお芝居をすることをメインに活動していました。ただ、あまり世間に名前を認知される機会がなかったので、多くの人に名前を知ってもらうためにTikTokをはじめようと思ったんです。でも、当時のTikTokはYouTubeでたくさん広告が流れていたり、自分の周りでは小学生が使っているアプリという印象があって。

ーー最初はあまり良いイメージではなかったんですね。

ゆーり:当時、ツイキャスなどで色んな方の配信を見るのが好きだったんですが、その時に見ていたタロー社長が「TikTok始めようかな」と話して、実際に配信中にアプリをインストールして一本目の動画を撮ったんです。それを見て、「こんな風に簡単に撮れるんだ。面白そう」と思い、自分でもダウンロードしてみました。

――動画投稿をはじめてしばらくの間は試行錯誤も多かったと思います。当時どういうことを思って撮っていたか覚えていますか?

ゆーり:最初はタロー社長が撮ってた動画を参考にしていたんですが、そのうち「こう撮ると映像になったときにこう映るのか」というのがだんだんわかるようになってきて。そこからも音楽に合わせて踊ったり口パクをしたりしていました。

ーーゆーりさんの特徴はその“キャッチーな声”にあると思っているのですが、ある時期からそれを打ち出した動画が増えた印象です。

ゆーり:1月くらいに投稿した動画のコメントで、声についてのポジティブな反応が多かったんです。それを見て「継続的に“声”のイメージが定着したら、もっとフォロワーさんが増えるかも」と思って、そこから意識的に声を前面に打ち出した投稿を増やすようになりました。

――そのワンチャンがあれよあれよと大成功したわけですね。そのあたりから、クリエイターとしての自信も付いてきましたか?

ゆーり:その時もいまも、自信は全然ないんです。

――あら、そうなんですか。

ゆーり:一番バズった動画は700万近くいいねを付けていただいてるんですが、それってたまたま反応がよかっただけなんです。動画によってはそこまで見られないものもあるし、自分の中では「クリエイターって、一回伸びても落ちていくもの」だと思っているので。だからこそ調子に乗らず、常に危機感を持って毎日頑張らなければという気持ちで過ごしています。

――その言葉をゆーり🍎🐥(20)さんほどのクリエイターから聞くとは思いませんでした。元々そういう慎重な性格なんですか?

ゆーり:小学校のころから、周りの人に「めっちゃ先のこと考えてるね」「意外と色々考えてるんだね」みたいなことは結構言われていました(笑)。日常生活でも、12歳のころから芸能界にいたこともあり、事務所は恋愛を禁止していたわけではないんですが、自分が将来女優になったとき、そういう写真が流出するのが嫌で、中学~高校時代は恋愛に関して、かなり慎重な態度を取ってきました。

――かなりストイックな人なんですね。「先のことを考えている」と小さいころから言われてきたようですが、現在それだけ慎重なのも、将来の色んなことを考えて活動しているからなのでしょうか。

ゆーり:そうですね。今のことだけを考えていてもすぐ落ちていってしまうので。

――では、1~2年後にどうなっていたくて、長期的にはどういう人でいたいと思っているのかを聞かせてください。

ゆーり:女性の動画クリエイターって、正直、若さを取柄として見られることが多いと思うんです。でも、私はあと数か月で21歳になるわけで、若さを売りにできるのはせいぜいあと2~3年だと思うと、動画クリエイターとしての活動だけに固執せず、別の方向に事業を展開したりとか、マネタイズできる部分の軸を、ここ数年で何個か持っておきたいと思っています。

――そこは難しい問題で、ステレオタイプな見られ方の限界でしかないと思うんですよね。いまはYouTuberの方々も順調に年齢を重ねながら、華々しく活躍されている方もいるわけですから。

ゆーり:そうですね。ただ、芸能界の“瞬間的なピーク”みたいなものって、ほとんどの方は10~20代になってしまっていると思うんです。だからこそ、いまのうちに行けるところまで行きたい。TikTokクリエイターだと、誰が見てもわかるくらいじゅんやさんがレベチなわけですが、そこを超えていくくらいの気持ちでなければいけないなと。

――インフルエンサーの事業展開というと、アパレルやコスメのプロデュースがある種の王道ですが、ゆーりさんはどういうことをやりたいと考えていますか。

ゆーり:前までは自分のブランドを持ちたいと思っていたんですが、企業の方と話しているうちに現実的な視点になって、「もうちょっと色々とやり方を変えないとな」と思いはじめています。なので何をやるかは断言できないのですが、なにかしらははじめたいと考えています。

――ゆーりさんの登録者数は、ここ1年の間で急増しています。自分が見ている限り、日本だけではなく海外のフォロワーさんも多く獲得されているようです。ノンバーバルなコンテンツも増えてきているように感じるのですが、それは意識的に色々とシフトしていったのでしょうか。

ゆーり:2020年2月中旬くらいから動画の伸びがいまいちになってきたので、何が自分の強みかを分析するために、過去の動画を見返したり、自分のプロフィール資料を作っていたなかで、以前に英語を話した動画が若干伸びていることを知って。それなら少し強化してみようと、試しにやってみたら反応も良かったので、そちらにシフトした動画を多く作るようになっていきました。

ーー自分の中で整理をしてシフトチェンジしたことで、さらに登録者が伸びることとなった。お話を伺えば伺うほど、ゆーりさんの戦略家としての一面に驚かされます。良いところも悪いところも俯瞰で見れているので、あまり大きな挫折などもないように思えるのですが、そのあたりはいかがでしょう?

ゆーり:たしかに、芸能人としては何度も挫折しましたが、クリエイターとしての挫折はないですね。元々自分はクリエイターになりたくてなったわけではないし、女優への延長線上として撮っていた動画だったので、数字の良し悪しで落ち込んだりはしませんでした。ピアノを辞めざるを得なくなったことだったり、小さいころに色んな挫折を経験しているからこそ、タフでいられるんだと思います。

――活動の主軸がクリエイターになったいま、逆に女優の仕事をしたいとは思わないんですか?

ゆーり:お話をいただけるなら喜んで前向きに取り組みたいです。ただ、自分としては“女優”にこだわる人生ではなくなりました。以前は「ネットよりテレビの方がすごい」という変なプライドがあったんですが、いまは「出れたら出る」くらいの温度感になっています。

・“同じ熱量を持ってできる人”って限られてる

――昨年からはTikTok LIVEの活用も多いゆーりさんですが、この機能をどのように活用していますか?

ゆーり:TikTok LIVEを始めてからも個人的にはあまり大きな変化はなくて、フォロワーさんが増えたという印象でしかないです。あと、海外からのコメントはめちゃくちゃ増えました。最近なくなってしまったんですが、FF外の海外ユーザーと話せる機能は配信していてすごく面白かったです。

――炊き立てご飯(しょーき)さんも同じことを言っていたのを覚えています。

ゆーり:私もしょーきさんの動画を見ていて、すごく面白いなと思ったんです!

ーーそんな炊き立てご飯(しょーき)さんもゆーりさんも出演する『TikTok CREATOR’S LAB. -CROSSOVER LIVE FESTIVAL-』についても聞かせてください。このイベント自体がいろんなクリエイターが集まる、ある意味横のつながりを象徴した催しでもあるわけですが、ゆーりさんが頻繁に交流しているクリエイターさんと、その方とのエピソードについても教えてください。

ゆーり:一番話しているのはほのぴすちゃんですね。ただ、このご時世なので、プライベートでお仕事の話をすることはあっても、動画や写真を撮ろうという風にはならなくて。お仕事を通じてであれば、しょーきさんや伊吹とよへさんなど、色んな方とご一緒させていただいているんですが、そこがなくなっているのは悲しいですね。それまではコラボをきっかけに遊んでご飯にいって、というのが多かったですから。

――ほのぴすさんとは、TikTokについての話や「クリエイターとしてどうなっていくか」のような話題も少なくないのでしょうか。

ゆーり:基本的にそういう仕事や将来の話しかしてません(笑)。

――横の繋がりのなかで、フォロワーさんが多いゆーりさんだからこそ、世代を引っ張っていく人として見られることもこれから多くなるのではと思います。ご自身のなかでは色んな人と一丸となってなにかを成す、ということに興味はあるのでしょうか。

ゆーり:難しい質問ですね……。これはあくまで個人的な意見なんですが、クリエイターさんにはコンビや複数人の方も多いじゃないですか。自分としてはそういう活動形態に挑戦しようと思ったこともあるんですが、“同じ熱量を持ってできる人”って限られてるんだなと感じてしまって。結果的に1人の方が楽という考えに至りました。複数人で活動することで、応援してくれるファンの方が多くなりやすいというメリットはあるんですが、そこから個人としてのファンの方を作っていくのが難しいと思っています。

――なるほど。最後に、プラットフォームの使い分けについても聞かせてください。これまでも現在も様々なプラットフォームを使っているゆーりさんですが、現在はどういう使い分け方を心がけているのでしょうか。

ゆーり:TikTokは色んな方に見つかりやすく、注目を集めやすいプラットフォームなので、今後もフルで活用していきます。そこからInstagramやTwitter、YouTubeも見てもらえればと思っています。ただ、マネタイズのことも考えなければということで、インスタや他では出せない長めの動画を出すためのYouTubeがある、という感じでしょうか。

――あと、Twitterが一番ラフに使っているイメージを受けます。

ゆーり:フォロワーがほかのSNSより少ないというのもありますし、Twitterまで飛んできてくれるのは、それだけコアなファンの方であるということだと思っているので、それを前提としてラフに発信しています。

――ここまでのお話を聞いていて、動画で見せるキュートな印象から一転、戦略家としての一面を見られて嬉しかったです。さまざまなSNSでどこかクールな部分を感じることがあったのですが、その核にはフラットに色んな物事を見ることのできる人であることが大きく寄与しているのだなと思いました。

ゆーり:ありがとうございます。そういう人間になりたいと心がけている、というのもあるんですけどね(笑)。

(取材・文=中村拓海)

■イベント概要
「TikTok CREATOR’S LAB. -CROSSOVER LIVE FESTIVAL-」
配信日:2021年7月10日(土)19時~22時
視聴方法:下記3つの公式アカウント及び出演者のアカウントから無料で視聴できる
Fusion Stage:TikTok Japan公式アカウント
Music Stage:TikTok Musicトレンド公式アカウント
Creator Stage:TikTok CREATOR’S LAB.公式アカウント

ゆーり🍎🐥(20)