英ロンドンを流れるテムズ川に住むパーチという魚が、水に微量の抗不安薬が混入しているせいで、捕まえやすくなっているという研究結果が報告された。
これは人間が使用している「オキサゼパム」と呼ばれる、不安や睡眠障害の治療に用いるベンゾジアゼピン系の抗不安薬が河川に流れ、溶けだしているからだ。
これらの薬剤は、魚の食欲を旺盛にし、リスクをかえりみない大胆不敵な一匹狼タイプにしてしまい、群れから離れた魚は他の捕食者に捕獲されやすくなり、河川の生態系を乱す恐れがあると、研究者らは懸念している。
スウェーデン、ウメオ大学の薬物研究者、トーマス・ブロディン博士率いる研究チームは、下水を経由して川に流れ込んだ、オクサゼパムと呼ばれる抗不安剤にさらされたパーチの行動を研究した。
パーチは警戒心が強く、群れで狩をする魚であるが、オクサゼパムの影響に晒されたパーチは、かなり貪欲で大胆になり、獲物を追い求めるあまり、安全な群れから離れるようになったという。
群れから離れたパーチは逆に捕食者に捕まりやすくなる。また、通常よりも大食いになったそうだ。
"パーチの餌の摂取量の増加は、生態系において予期せぬ結果を招く可能性がある"とブロディン博士は語る。
例えばこんな生物均衡の変化が考えられる。パーチが、藻類を餌にしている小さな魚を大量に摂取することで、小さな魚の餌となる藻類が異常発生させてしまう危険性がある
研究者らはまた、スウェーデンの人口密集地の川を調査した。テムズ川同様、多くの似通った薬剤が下水処理場を通じて、魚たちの住む河川に混入していたそうだ。
環境科学者であるジェーカー・フィック博士は、"この問題の解決方法は、環境に有害な薬剤を流さないように食い止めるような汚水処理場を開発することである。病気の人々への薬物治療を中止せよという意味ではない"と述べている。
この研究は、サイエンス”誌で公表、米ボストンで開催されたアメリカ科学振興協会の定例会で発表された。
References:http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2278801/Fish-easier-catch-traces-anti-depressants-getting-water-supply-making-relaxed.html / written by R / edit by parumo
海や川に住む魚たちが巨大化しているというニュースをよく耳にするが、もしかしたらその一因として、人間の使用した薬剤が溶けて流れ出ているという影響も考えられるのかもしれないね。
wikipeida:ベンゾジアゼピンとは?
ベンゾジアゼピン受容作用を利用した薬をベンゾジアゼピン系と総称し、主に睡眠薬や抗不安薬(マイナートランキライザー)に利用されている。またベンゾジアゼピンが作用する部位によって中枢神経への影響も微妙に異なっており、抑鬱状態の改善や痙攣発作の軽減を行う物質もあるため、抗うつ薬や抗てんかん薬として使われるケースもある。
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