7月2日(金)公開された6月の米雇用統計については、強弱入り混じった結果となり、為替の動きも総じて緩慢、株式市場も落ち着きを取り戻している状況である。

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 これは、6月に行われた新型コロナウイルス危機に関する米下院特別小委員会の公聴会において、パウエルFRB議長の証言が、インフレリスクを「一時的なもの」とした上、性急な利上げは行わないというきわめて緩和的な内容であったことが大きいだろう。

 市場のインフレリスクに対応するためには、金融引き締めのために利上げを行う。利上げは株式市場にとってはネガティブな要因であるため、市場と対話をしながら、ショックを引き起こさない程度に緩やかに行うのが理想的だ。

 今のところ、テーパリング(金融緩和の縮小)の議論があるという認識を、特段の混乱が無いまま市場に持たせることには成功しているが、今後も、インフレリスクを横目に発言を変えながら、市場との対話を続けていくことは間違いない。そのため、7月14日、15日に行われる定例(年2回・通例は2月と7月)のパウエルFRB議長による議会証言は特に重要だ。

 議会証言に先立ち、米議会に対しては金融政策報告書(ハンフリー・ホーキンス報告書)が提出されるのが通例であり、9日に内容がすでに公表されている。その内容は市場の予想どおりで、「ワクチン接種の進展」もあり「金融緩和と財政政策を支えに経済が力強く成長している」が、「完全に回復するまで経済を協力に支援し続ける」というものだ。

 懸念されるインフレリスクは、すでにFRBが目標としている2%を上回っているものの、あくまでも「一時的」であり、問題は無いという認識も示した。そして、労働市場については人種などによる格差など、回復がいまだ不十分という内容でもあり、これまでのテーパリングに対する慎重な姿勢を維持している。先日の雇用統計の内容ではまだ十分ではないという見解だ。

 もちろん、議会証言においても公表した内容から大きく外れること無く、無事に通過していくと思われるが、質疑の内容によっては市場に混乱をもたらす可能性も十分にあり得ることには注意が必要だ。なかでも、一番懸念すべきは足元で上昇し続ける原油価格についてであろう。(続く)

原油高懸念を払しょくできるか? FRB議長による議会証言 前編