
電動キックボードのシェア事業者が東京都内などで行っている、「ヘルメット着用任意・最高速度15km/h・道交法上は小型特殊扱い」という実証実験が、新たに福島で始まりました。キックボードの販売事業者が行う初の事例です。
経産省の制度を活用 キックボード販売事業者による初の実証
公道を走る際には「原付」に分類される電動キックボード、その特例的な走行を可能にする実証実験が、新たに福島県南相馬市で2021年7月から開始されました。
これは、電動キックボードの販売事業者であるSWALLOW合同会社(神奈川県川崎市)が、経済産業省の「産業競争力強化法に基づく新事業特例制度」を利用して行う「電動キックボード運転時のヘルメット任意着用等」の実証実験です。南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」に入居する事業者数社が、日常的な移動に関してSWALLOW提供の電動キックボードを活用するというもの。
前出の通り、電動キックボードは通常「原付」に分類され、ヘルメットを着用し車道を走行する必要があります。これに対し、実証実験に参加する事業者の車両は、特定のエリア内において「最高速度を車両側で15km/hまでに制限」させたうえで、「道路交通法上は小型特殊自動車扱い」となり、「ヘルメット着用任意」での走行が認められます。
同様の実証実験は、電動キックボードのシェア事業者4社が2021年4月から東京都内などで行っています。シェア事業者にとってヘルメット着用義務は一番の大きな障壁でした。この特例により東京の渋谷区や世田谷区などでは現在、実証実験に参加する「LUUP」の電動キックボードを、利用者がヘルメットを着用せずに走る様子が見られます。
対して今回は初めて、電動キックボードの販売事業者が、このルールに則った実証実験を行います。SWALLOW合同会社では、30km/h制限のない原付2種に分類される電動キックボードも販売しており、代表の金 洋国さんはむしろ、「最高40km/hくらい出ないと、クルマに交じって車道を走るのは怖い」とも話します。
そうした事業者がなぜ、シェア事業者向けともいえる特例に則った実証実験を行うのでしょうか。
シェア事業者だけのルールじゃない
シェア事業者の車両も含めて、前出したヘルメット着用任意の特例は、あくまで国の制度を活用した実証実験の参加事業者の車両に限って適用されます。
しかし実際に法改正が行われれば、そのルールはシェア事業者に限らず一般の電動キックボードにも適用されるため、「販売事業者から提言を行っていくためにも実証実験に参加する必要性を感じています」(SWALLOW合同会社)とのこと。現に、一般の電動キックボード利用者が、ヘルメットを着用せずに乗れると勘違いして、警察に摘発される事例も起こっているそうです。
シェア事業者の場合、その舞台となるのは都市圏です。対して今回は、ロボットテストフィールドの入居事業者が、1.7kmほど離れたコンビニエンスストアや、南相馬市産業創造センターなどへの日常的な行き来に使用します。走行エリアには幹線道路の国道6号の一部もあるものの、それ以外は「ほぼ田舎道」だそう。地方と都市圏とで同じルールであるべきなのか、といった提言も、実証実験での知見をもとに行っていきたいといいます。
「義足の人や、喘息の人、あるいは痛風で足が痛くて自転車に乗れないという人もいます。ハンディキャップを抱えた人でも簡単に乗れるのが電動キックボードです」(SWALLOW合同会社 金さん)
そうしたなか、電動キックボードのスピードや「怖さ」は、人により感じ方が異なるといいます。「原付くらいのスピードを出してそれなりの距離を移動したいという人もいれば、速いスピードでは怖い、クルマと並んで走るような道は通らない、という人もいるでしょう」とのこと。都市の道路事情を中心に全国の意見はすくいきれないと話します。
警察庁は有識者会議で、小型モビリティを「速度」と「大きさ」で分類し、最高速度15km/h以下ならば免許不要でヘルメット着用任意、歩道走行可能にし、それ以上のスピードならば原付に分類するという案を、2021年4月に中間とりまとめとして打ち出しています。しかし、この速度についても「15km/hは遅すぎる」といった意見があり、今後、大きな議論が予想されます。

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