浅香航大が、7月15日(木)にスタートする小出恵介主演のABEMAドラマ「酒癖50」(毎週(木)夜10:00、ABEMA SPECIALチャンネル)の第1話の主人公を演じる。このドラマは脚本・鈴木おさむ、監督・小林勇貴によるダークストーリーだ。主演の小出演じる酒野聖(さけの・せい)が、酒により偽りの力を得る者、酒を飲んだ途端に気持ちが大きくなる者など、酒で人生を失敗しそうな者たちに忠告していくが進言された者たちはおしなべて酒に手を出し、転落していく。

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浅香が演じるのは、接待の席でバブル期を彷彿とさせる一気飲みで気合を見せ、契約を結ぼうとする営業部のエース・青田。しかし、後輩たちにも無理矢理一気させていたことから酒癖の悪い社員50人に選定され、酒野が担当する講習に出席することになる。

浅香は、2018年のABEMAオリジナルドラマ「会社は学校じゃねぇんだよ」でも鈴木おさむ脚本作に出演。鈴木おさむ作品は「ドラマチックエッジの作品が多く、このセリフはどうやったら違和感なく言えるか」と、毎回チャレンジ精神で挑んでいるそうだ。

■現場入り前はプレッシャーも。問題に深く切り込んだ新ドラマ「酒癖50」

――最初に作品のテーマを聞いた時は、どんな感想を持たれましたか?

すごいなって(笑)。時代に逆行している内容で、ABEMAだからこそ描けるというところもあると思います。一気飲みはコンプライアンス的にできないと思いますから。脚本を読んだ段階では、個人的にも一気飲みの強要をする青田に嫌悪感を抱く内容ではありました。

――鈴木おさむさんの脚本の印象はいかがでしたか?

おさむさんの脚本はドラマチックエッジの効いた作品が多いという印象で、セリフや言い回しなど、演じるのが難しいんです。毎回チャレンジングで、このセリフをどうやったら違和感なく言えるのかというのが課題。どうテンションを持っていくとこのセリフが言えるかという追究が求められるんです。今回もやるならとことん振り切ってやるべきだなと思いました。

――青田はどのような人物だと捉えていますか?

彼はそんなに強い人物ではなく、一生懸命で、自分なりの正義がある人間ではないかと思います。無理を他人に強要するだけじゃなくて自分もやっていますから。おそらく未熟だった自分を育ててくれた先輩がそういう人物だったために、そのやり方しか知らないんだと思います。

――だから、「俺にできて、お前にできないことはない」という決めゼリフが出てくるんでしょうね。

そうですね。青田は時代が生み出した怪物だと思います。ちょっと古い人物像に思えますが、今もギリギリいそうな気もします。

――後輩に一気飲みを強要する接待シーンは、演じていても苦しかったですか?

撮影が始まってしまえば、アドレナリンが出まくっているので、周りが見えなくなりました。後輩の春日や接待の相手も全員飲み込んでやるぐらいの勢いで、回った歯車が止まらないような状態でしたので。でも、正直、現場入りするまではむちゃくちゃ億劫でした。現場入りするまで「あー、撮影くるなー」というプレッシャーがありました(笑)。

■青田という人は「時代が生み出した怪物」。でもそれだけじゃない

――今作は事前の本読みもきっちりされたそうですが、小林勇貴監督とはいろいろお話しされたのですか?

小林監督とは今回初めてだったのですが、全てがすごく丁寧でした。おさむさんが書かれた準備稿に沿って描かれた絵コンテを見せてもらったり、作品への熱量と思いが溢れている方だったので、監督の人柄が現場で相乗効果を生み出していた気がします。リハーサルでは互いにディスカッションをしながら、いろいろ決めていき、僕からも提案したりしました。監督は絵作りにもこだわる方だったので、この位置で止まってほしいと言われたこともありました。お芝居に関しては、いくだけいっちゃってくださいと結構フリースタイルでいいという方だったので、特別な要求はなかったように思います。

――浅香さんからはどんなことを提案されたのですか?

青田を筋の通った人にしたいということです。彼は仕事ができて、部下も付いてくる。つまり尊敬される部分ももちろんあると思うので、そういった部分を踏まえて、ただの怪物じゃない人物にしたいなと思いました。あとは“酒癖”の部分のみで成敗されることです。そうじゃないところで成敗されると、ドラマとして筋が通らなくなってしまうと思ったので。

そういう細かい部分について事前に監督と話していたんですけど、気にするまでもなかったです。現場に入ってみたら、青田はちゃんと一生懸命で、若干応援したくなる一面も見えてきて、可哀想なやつだなと同情の気持ちも芽生えてきたので。おそらく、現場で人物像の余白が生まれていったのではないかと思います。

――物語終盤にある酒野による講習シーンは、青田の一連の撮影が終えてから行われたので浅香さんがヘトヘトになっていたと伺いました。

そうなんですよ。撮影の最終日だったので、飲み会のシーンのせいで声も出ないし、ヘトヘトでした。でも、小出さんとの絡みは講習のシーンとラストシーンだけだったので、ヘトヘトでしたが、ご一緒できて楽しかったです。

――小出さんとのお芝居はいかがでしたか?

小林監督の撮影はワンカットが多かったので、「もう少し撮ってほしかったね」なんて話してました。監督は基本、長尺のワンカットで、テイクも重ねないんですよ。でも、だからこそ、この1回を逃したらやり直せないという思いが生じてアドレナリンが出ました。そして、いきなりトップギアまで上げる必要があったので、毎日ヘトヘトでした(笑)。特別、もっとこうしてなどと言葉で求められるわけではないのですが、無言の期待を感じるんですよ(笑)。言葉で言うでもなく、目で言うでもなく、本当に不思議な監督でした。

カメレオン的な演技力…でも「自分自身はすごく単調な人間だと思っています」

――不思議というと浅香さん自身もそうだと思います。作品ごとに印象が本当に違って、素が見えない。カメレオン俳優と称されることもありますが、そう言われるのはご自分ではいかがですか?

うーん、どうですかね?それを意識してやっているわけではないですからね。個人的には、突出した個性を持っている方にあこがれます。強烈な個性があれば、“何やっても一緒だね”と言われてもいいかな?って。でも、そういうお芝居はやろうと思ってもやれるものではないですからね。

―― 一つ一つの違う顔を見せるためにはかなり緻密な役作りが必要なのではないかと思いますが、普段、役作りはどのように行われているんですか?

誰に教わったわけでもなく、現場でやっていくうちに身についてきたものだと思いますが、特別こうしなきゃいけないと決めていることはありません。

――俳優さんによっては、脚本に書かれていない部分の年表を作ったりする方もいるそうですが?

そういうことをすることもありますが、作品によって違います。役の背景が大事な時は年表みたいなものを作るし、この役はキャラクターものだなという時は現場のリアクションから作っていくし、がっつりヒューマンドラマの時は周囲との関係性や役の本質を考えたり、ものによって変わりますね。

――役との向き合い方もフレキシブルだからこそ、役の振り幅も広いのかもしれないですね。

そうかもしれないですね。

――浅香さんは現場でよく昼寝をされるそうですねが、ほかにも必ずすることはありますか?

朝から夜までの撮影では、昼寝をします!昼寝をしないと無理なので。ほかには特に決まり事はないですね。僕は「常に刺激がほしい」とずっと言っているんですが、自分自身はすごく単調な人間だと思っています。こういう仕事をしているからそういう人間になったのかもしれないですが、仕事で喜怒哀楽を表現して、日常に戻ってくるということがルーティンになっていて、特別なことをしているという感覚はないっちゃないんですよ(笑)。

――そうなんですね。浅香さんは本当にいろんな役を演じていらっしゃいますが、今後やってみたい作品はありますか?

今はアクションとSFですね。今、自分のなかのお芝居への熱量がすごく高いんです。「酒癖50」も高いレベルのところでいろんな相乗効果が生まれて、すごくやりがいを感じましたし、少し前に撮影していた「コントが始まる」(日本テレビ系)の現場でもまた別の意味での相乗効果を感じました。

だから、今、完成度の高いものを作りたいという気持ちがすごく強くて。完成度が高ければ高いほど、見る方の没入感も増すと思いますし。例えば、ハリウッドのSF映画はストーリーに関係なく、あのクオリティで作られると思わず没入してしまいますよね。それから、今回の「酒癖50」のようなストーリーでも、映像も音も総合的に完成度が高いとそれだけ伝わるものも繊細で深くなる。今後もそういう作品と出会って、今回のように深く役と向き合いたいなと思います。

――最後に、今回の「酒癖50」は酒の場の問題が詰め込まれた問題作だと思いますが、どんな人に見てほしいですか?

そうですね。飲みの誘いを断れない先輩というのは業種を問わずいると思いますが、自分は違うと思っている、その当人に見てほしい作品だなと思います(笑)。

作品ごとに全く違った顔を見せる実力派俳優、浅香航大/  撮影=阿部岳人