じっとり汗ばむ暑い季節がやってきた。せっかくかいた汗をシャワーで流してしまうのではもったいない。どうにか有効活用できないものだろうか?
それができるのである。アメリカ、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループが開発した絆創膏型のウェアラブルデバイスは、指先にペタッと貼り付ければ、汗を吸収してじっと座っているときも、夜に眠っているときですらも発電してくれるのだ。
この絆創膏のようなデバイスには炭素発泡体が組み込まれている。これが汗を吸収し、酵素の力を借りて、汗に含まれた乳酸塩と酸素分子を化学反応させることで発電する。
だがなぜサラッとした指先に貼り付けようなどと思ったのか? 汗で発電するのなら、もっとじっとりしたところ、たとえばワキの下とかおでこ、首筋の方が良かったのではないだろうか?
じつは指先は、ほかの部位に比べて100倍から1000倍も汗をかくところなのだ。このウェアラブルデバイスの面積だけでも、1000もの汗腺をおおうことができる。
それでもサラッとしているのは、空気によく触れる場所だから。通気がいいお陰で汗がよく蒸発してくれる。そして、この点もデバイスを貼る場所として都合がいい理由だ。
Fingertip-powered wearable
指先の圧力も利用
指先が選ばれた理由はもう1つある。圧力を利用するためだ。 デバイスには圧電性物質も組み込まれており、たとえばスマホをタップしたり、ピアノを弾いたりと、指先に圧力がくわわったときにも発電することができる。
一晩で電子時計24時間分の発電
実験では、指の1本に汗発電デバイスを貼り付け、10時間ほど眠ってみたところ、400ミリジュールの電気を発電できたとのこと。スマートウォッチなどの電子時計を24時間動かせるだけの電力であるそうだ。また1時間ほど軽くキーボードやマウスを使った場合は、30ミリジュールが発電されたという。
こうして発生した電気を利用すれば、体のビタミンCを検出できるウェアラブルセンサーといったものも作動させることができる。
寝てるだけ、指を動かすだけ。運動要らずで実用的
じつは汗で発電するウェアラブルデバイスはこれまでにもあった。たとえば、つい最近も着ているだけで発電してくれるシャツを紹介した。こちらのスマートシャツは、汗だけでなく、運動による摩擦エネルギーも活用して電気を生み出す。
だが、そもそも体を動かすという行為がエネルギーを消費する。それだけのエネルギーを投じてほんの数ミリジュールを発生させたところで、差し引きすればそれほど効率のいい発電ではないかもしれない。
一方、今回のデバイスは、眠っているだけでもきっちり発電してくれる。運動要らずのシステムにしたことで、「より実用的で便利な、誰にでも利用できるウェアラブルデバイスへ向けて一歩前進」したと、研究グループのル・イン氏は話す。
研究グループは今、実用的なものを完成させるために、汗発電ウェアラブルデバイスの効率性や耐久性の改善に取り組んでいるとのことだ。
References:Device harvests power from your sweaty fingers even while you sleep / Band-Aid-like strip worn on fingertips generates energy during sleep / written by hiroching / edited by parumo
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