(花園 祐:上海在住ジャーナリスト)

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 7月21日オリンピック開催を控え、日本では新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種が急ピッチで進められていることと思います。ただ報道を見る限り、当初の想定ほどには進んでおらず、65歳未満の一般接種についても目途が立っていない模様です。

 一方、中国では今年(2021年)3月から外国人を含む一般接種が開始され、7月5日時点で接種回数は13億回を超えています。筆者自身も6月に2回目の接種を終えており、周囲を見渡してもワクチン未接種者の方がもはや少ない状況となっています。

 そこで今回は、中国のワクチン接種スケジュールや予約方法を説明しながら筆者の接種体験記をお送りします。

介護や医療、運送関係者から優先的に接種開始

 中国のワクチン接種スケジュールは管轄する省や市によって異なりますが、筆者の住む上海市のスケジュールは下の表の通りとなっています。

 中国でのワクチン接種は2020年10月より、介護や医療従事者、港湾で貨物を取り扱う運送業従事者のほか、バスや電車といった交通業、消防警察などの重点職位グループを対象に始まりました。その後、翌2021年2月より、仕事などで海外に移動しなければならない人や留学生を対象に接種予約の受付が始まり、3月中旬より一般接種がスタートしました。

 一般接種は当初は中国本土に戸籍を持つ居住者に限られていましたが、3月下旬には外国人の受付も始まりました。実は筆者は、ワクチン接種をそれほど希望していませんでした。しかし、中国のことだから、接種しておかないと今後中国国内の移動でもいろいろ制限をかけてくるだろうと踏み、副作用などあまり気にしないまま接種を受けることにしました。

専用アプリを使って予約

 ワクチン接種の予約は、接種を行っている診療所へ電話して予約するか、専用アプリを使って行います。一般的なのは専用アプリを使う方法です。

 上海市で予約に使用するのは「健康雲」というアプリです。このアプリは、登録者の感染状態や濃厚接触者であるかを確認するのにも用いられます。

 予約時は、アプリ内のワクチン接種予約プログラムを選択し、所属する企業・団体コードとともに個人情報や接種予約日を入力します。その後、予約が完了したというショートメッセージが登録した電話番号宛てに送られ、このショートメッセージが予約票のような役割を持つこととなります。

 外国人のワクチン接種は、当初、専用サイトだけで予約を受け付けていました。専用サイトではありますが、入力情報などは基本的に「健康雲」を使った予約と大差はありません。

 なお予約方法は省や市によって異なりますが、筆者が把握する限り、どこも「健康雲」や「微信(WeChat)」、またはそれに類するアプリを使った予約方法が採用されているようです。

外国人専用の診療所で接種

 以上のような手続きを踏み、筆者も無事にワクチン接種を予約することができました。ただ外国人接種の受付開始直後は予約が集中し、筆者も予約した日から実際の接種まで約1カ月も待たなくてはなりませんでした。

 そうして迎えた接種当日。予約した診療所は外国人接種に指定されているだけあって、職員らは来訪者に英語で対応するなど比較的手際よく対応していました。

 会場でのワクチン接種までの流れは以下のとおりです。

 まず、前述した予約受付のショートメッセージや身分証などで受付確認を行います。その際、ワクチン接種代として100元(約1700円)を会計に支払います。なお、中国の国民社会保険の加入者であればワクチン接種代はタダです。

 会計を済ませると医師の前に案内され、何回目の接種かを確認されました。そして、脇にある専用の読み取り機に「健康雲」の接種用コードを読み取らせるよう指示されました。接種者、接種日、接種場所、接種したワクチン種類の情報などをアプリに記録させているようです。

左腕が一時熱を帯びる

 健康コードの読み取りを終えると、すぐにワクチンを注射されました。あとで確認したところ、筆者が接種したのは中国医薬集団(シノファーム)系の北京生物製品研究所有限公司ワクチンでした。

 注射後は、注射痕に何か小さな木の棒みたいなものを押し当てられ、処置室から出る際に30分に設定されたタイマーを持たされました。診療所の職員からは、副作用がないか確認するのでそのままタイマーが鳴るまで30分間を待合室で待つように言われました。

 待合室内の椅子に腰を落ち着けて、腕に押し付けられている小さな棒は何なのかと改めてよく見てみたら、なんと綿棒でした。こういう注射痕にはガーゼを当てるのが普通だと思っていましたが、なぜ綿棒なのか。まあ、先の方は脱脂綿だからこれでいいのか、などと思いつつ、釈然としない気持ちにさせられました。なお2回目の接種時もやっぱり綿棒を押し当てられました。

 綿棒を眺めながら待っていると、ワクチンを打った左上腕部がまるで遠赤外線ヒーターでも当てているかのように、熱を帯びてくるのを感じました。これがいわゆる副作用かと思いつつ、「くっ、静まれ!俺の左腕・・・」などと中二病めいたラノベのセリフが一瞬頭をよぎったものの、この熱は2分程度であっさり引きました。

 なおこの患部の発熱は1回目の接種時のみで、2回目には起こりませんでした。

 こうして1回目の接種を終え、その3週間後には2回目の接種も無事に終えました。今のところ副作用と感じる症状は一切ありません。

 2回目の接種の流れは1回目と基本的に同じですが、最後に診療所から紙の接種証明書がもらえます。また帰宅直後にアプリの「健康雲」を確認したところ、「接種記録」内の情報が早くも更新済みでした。

バスを使って街頭で接種会も

 中国では、上記のような診療所での接種のほか、5月後半から6月にかけて、市内各所で大型バスを使った特設会場での街頭接種も実施されました。

 これら特設会場では 当日であっても空きがあればその場で接種してもらうことができます。おそらくアプリを使った予約ができない高齢者のための措置だと思われます。

 なお、街頭接種会が開かれている最中、筆者と同じアパートに住むおじさんが通路で会うなり、「お前、もうワクチン打ったか? 打ってないなら近くで打ってもらえるから早く行け」と変に世話焼きな中国人らしく勧めてくれました。

 また一般接種が始まった頃、筆者の中国人の友人も「いつ感染するかわからないから、君も早くワクチンを打っておいた方がいい」と顔を合わせるたびに盛んに勧めてきました。

 ただその友人の好意については、ある日ふと気になり、「そういう君はワクチンをもう打ったのか?」と尋ねたところ、「打ってない。中国製ワクチンが安全かどうかを確かめるため、君には早く打って試してもらいたかった」という本音を白状したのでした。

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