―[負け犬遠吠え]―


ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は57回目を迎えました。

 今回は裁判所で怒られたお話です。


ホテルは追い出されない……

 福祉の範囲でホテルに住んでいる人たちがオリンピックのために追い出される、という記事が泡沫のネットサイトでアップされたらしく、方々から

「もうホテル暮らしできないな、ざまあみやがれ」

「泊まるとこ無いならウチ来る?」

 といったメッセージをたくさんもらうのだが、僕は一応健康的に働きながらホテル代を自腹で払っているので追い出される心配はない。

 正直なところ、コロナ禍での仕事の探し方に順応さえしてしまえばいろんなものが安くなっているので、以前より住みやすいのではないかとさえ思えてくる。

 贅沢をしない以上、外食産業に対する締め付けも貧困の身の上には関係がなく、ホテルテレビで見るニュースネット上に蔓延する怒りや悲しみを見ても、自分の身の回り以外は対岸の火事に見えてしまう。

 明日にしがみつくために両手が塞がっているせいで、同じ方向に挙げる手が足りない。こうしてどんどん社会からはみ出していくのだろう。精神性から真に孤独になる原因は犯罪よりも貧困なのかもしれない。

◆7月にやったことは2つ

 貧乏なのにホテルニュースを見るほど暇なのか、と思った人もいるだろう。

 これが不思議なことに、暇だ。

 6月で全ての仕事が途切れてしまった。

 工事現場はいつか完成するし、事務職も繁忙期を過ぎた。フリーターの辛いところである。人が必要なときには作業員として何の責任も負わずに働けるが、必要がなくなれば契約は終了する。一回ぽっきりでお互いに依存しない、東京らしいさっぱりした関係だ。

 やることが見つからなくても月末には金がもらえたサラリーマン時代を思い出す。当時は出社そのものが億劫で、「金をもらうために仕方なく毎朝早起きしている」と不貞腐れていたものだが、今思うと玉のような時間だった。人は過ちを繰り返す生き物だから、これも失ってから気づいた。

 7月にやったことは大きく二つ。「仕事探し」「借金の裁判の後処理」だ。

 仕事を探すのには、本来莫大なエネルギーが必要となる。まだ借金がなかった頃は1日を生きるコストが低く、大学生の友達と一緒に土日の派遣アルバイトを探してダラダラパチスロを打っていたが、今の僕は最低限の「衣食住借」の確保のために毎月15万以上を用意しなければならない。各カード会社との裁判を終え、「2か月以上未払いが続いたら利息が復活するし、もっとたくさん請求する」という内容の判決を出されているので、立ち止まっても1か月が限界だ。

7月7日パチンコを打つ

 7月に入り、最初の一週間は何もせずに過ごした。仕事が太陽と僕を引き離した分、散歩をし、安い立ち飲み屋に行ったり、コンビニで買ったおにぎりを食べ歩いたりした。卒業や退職、試験など、物事の終わりには快感が伴うことが多い。

 全ての仕事が途切れることは将来への不安を煽るが、それを上回る達成感と開放感があった。至福の時だ。代わりがいくらでもいる仕事をしていただけなのに大きな使命を果たした気分になる。

 7月8日から仕事探しと裁判の後処理を始めた。理由は7月7日に打つ気のなかったパチンコで1万円負けたからだ。7のつく日に外に出るべきではなかったな。あと1と3と5と6のつく日も外出は控えよう。

 呆けて座ってダラダラと1万円が溶けただけで、ギャンブルとすら言えないようなくだらない時間を過ごしたが、焦燥感は時にやる気に変わる。30歳も目前になってくると人生のガソリンが、

「なりたい自分に向かって頑張りたい! 時間は有限!」

から

「この歳にもなって俺は一体何をやってるんだ、とりあえず明日食う飯を考えよう」

 になってくる。

 7月7日の縁起のよさに釣られてホイホイパチンコ屋に入って1万円が消えたとき、心の底から負のエネルギーが湧き上がってくる。いつか済ませておかなければならない用事を一気に片付けるのだ。人は成長につれて宿題から解放され、サラリーマンから解放され、それでも何かしらのタスクに追われている。

裁判所で撮影をして怒られる

 まず裁判所に連絡をした。7月中に簡易裁判所で行われた裁判の正本を取りに行かなければならない。レイクとの長い戦いもようやく決着を迎える。なんとかして分割払いにしたい僕と一括でなければ許さないレイクとの和解案は「月々8500円の支払い」だった。電話で結果を聞いてはいるのだが、書面で受け取らなければ成立はしないらしい。

 普段行かない霞ヶ関に行き、東京簡易裁判所へと向かう。

 裁判所の入り口では空港で行われるようなガチガチの荷物検査をしていて、なおかつ写真、動画撮影は禁止だった。僕は貧乏な身の上を金にしていたので、Youtubeの撮影用にと途中までヘラヘラと動画を撮っていたが、途中で警備員にそれを指摘され、静かな建物の中で大の大人に粛々と怒られてしまった。

 通常、特別送達で住所に送られるはずの正本だが、住所を持たないホームレスの僕は裁判所まで行って受け取らなければならない。当然そんな例は極々少ないので窓口のような場所もなく、ただ日常業務を送っている事務所に入って

すみません、裁判の結果を受け取りに来ました」

 と誰にともなく声をかけた。公務員イレギュラーな業務があまり好きではないらしく、一番入り口に近い所員がめんどくさそうに立ち上がり、かなりぶっきらぼうに正本を手渡された。

 これで残るカード会社はアコムだけだ。去年は電話に一切出ずに支払いから逃げ続けていたが、今年は一転攻勢、支払いの意志を押し付けつつ全ての借金を分割払いにする作戦に出た。

 8月からの仕事は住み込みのアルバイトになった。ホームレスにはちょうどいい仕事だ。以前働いていた職場の繋がりで紹介をしてもらった。まだギリギリ20代ということで「結構動ける若者」として仕事を紹介してもらっているが、これもいつまで続くかはわからない。

 僕もいつかは可愛がられる方から可愛がる方へと変わっていくだろう。その時期もそう遠くはない。

 誰からも可愛いと思われなくなった時、自分で擦ったゴマが誰にも売れなくなった時、あまりにも遅すぎる「就活」を始めるのだろうか。

文/犬

【犬】
フィリピンカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitternoteカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。
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