カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にて撮影された、横たわる子グマのそばに佇む母グマ。この子グマはスピード超過した車に轢かれて絶命してしまったという。人間のスピード違反によりこうしてクマが死んでしまうことは多いそうで、同園のスタッフは「もはや日常になりつつある」と苦しい胸のうちをFacebookで明かした。『People.com』などが伝えている。

ヨセミテ国立公園は今月17日、公式Facebookにて「スピード違反がクマを殺しています」という書き出しで投稿した。

自然豊かな同園には野生動物が多く生息しており、車を運転する来園者たちはそうした動物たちに注意を払い、スピードを緩めて運転することが望まれている。しかし野生動物に道路という概念は無いので事故をゼロにすることは難しく、同園の管理スタッフのもとには「クマが車に轢かれて死んでいる」という通報があまりにも多く、日常化しつつあるという。

通常は通報を受けると現場へ車で向かい、クマの死体を他の動物が食べるときに同じ事故が発生しないように道路から除ける。そして報告書の記入や調査用のサンプル収集を行い、今年の車に轢かれたクマの数に記録を加える。

あまりにも数が多いので淡々と作業をこなしているというスタッフたちだが、今回の事故現場を見たスタッフは衝撃を受けたという。

推定生後半年も満たない小さなメスの子グマが、松の木の下で丸くなって死んでいたのだ。発見したスタッフはあまりのショックで、動かなくなった子グマをただ見つめるしかなかったそうだ。

「この子グマにはどんな未来が待っていたのだろうか」とやりきれない思いを抱いたまま、スタッフは体重25ポンド(約1.5キロ)も無い小さな子グマを、森の中の丸太に守られるように囲まれた草の上に安置すると、近くに腰を下ろして必要な記録をとり始めた。

しばらくすると、大きなクマが近くに現れた。枝で音を立てて冷静に追い払って記録を続けたスタッフは、「偶然通りかかったクマだろう」と思っていたという。ところが何度も振り返ってこちらを確認していたというそのクマが、深くソフトな音色でうなり声をあげた。スタッフは、この声は母グマが子グマを呼ぶものだとすぐに察したという。

車に轢かれたのは正午頃とされており、スタッフが母グマと遭遇したのは午後6時のことだった。母グマは動かなくなった我が子のそばを、6時間経っても離れなかったのだ。

子を呼ぶために何度も苦しそうにうなり声をあげる母グマと、その呼びかけに反応することのない子グマとの間で、スタッフは何もできずに立ち尽くした。

辛い光景を目の当たりにしたスタッフは急いで荷物をまとめると、道路にリモートカメラを設置したという。

「毎年、車に轢かれたクマの数が報道されていますが、数字だけではイメージが湧かないのです。私が目にしたように、こうした数字の裏にある悲しい現実を見てほしいのです。」

「どうか覚えておいてください。ヨセミテ国立公園に訪れることは、数えきれないほど多くの動物たちの家の訪問者になるということを。ルールを守り、動物たちを守ることは私たちに委ねられているのです。」

「制限速度を守って注意して運転し、野生動物たちに気をつけましょう。ヨセミテ国立公園のブラックベアーを守ることは、私たちにできることなのです。」

この投稿に添えられた写真には、静かに横たわる子グマの横で母グマが悲痛な表情でカメラに視線を送る姿があった。

このたびの投稿は多くの人の心に触れ、今月24日の時点で8.3万件を超える「いいね!」が寄せられており、コメント欄には以下のような声が届いている。

「本当に胸が痛む話だ。人間は動物たちにも感情があり、愛や悲しみを感じるということを忘れているよ(もしくは認めたくないのかな)」
「なぜ公園内で急ぐ必要があるのか理解できない。私はゆっくりと景色を楽しみたい」
「野生動物たちのテリトリーに入っているのだから、リスペクトしないと」
「こんな悲しい出来事がたくさん起きているなんて、辛すぎる」

画像は『Yosemite National Park 2021年7月17日付Facebook「Speeding Kills Bear」』『Sydney Goosen 2021年7月17日付Facebook「Thank you for your story and giving this cub’s shortened life a purpose.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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