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多くが原付自転車 免許とヘルメット必要

text:Kenji Momota(桃田健史
editor:Taro Ueno(上野太朗)

コロナ禍になる少し前、日曜日にお昼過ぎ。東京銀座の歩行者天国で、電動キックボードの前に子どもを乗せて、ノーヘルで走っていく外国人親子がいた。

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こんな光景をみると「あれ? これっていつからOKなの?」と疑問に思う人も多いはずだ。

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ヘルメット不着用での走行もみられる電動キックボード    グラフィット

また、コロナ禍となった千葉県浦安のディズニーランド周辺の広い歩道を、若い外国人が2人でそれぞれ電動キックボードをノーヘルで走らせていた。

こうした行為はどれも、日本では道路交通法に違反している。

彼らは日本在住なのか、それとも旅行者なのかは不明だが、日本の法規をしっかり理解していない。

最近、家電量販店やカー用品店などでも発売されるようになった電動キックボード

定格出力の大きさに応じて、その多くが原動機付自転車に区分される。

いわゆる、原付(げんつき)であるため、運転免許証が所持が求められる。また、ヘルメットの着用や自賠責保険の加入も義務付けされている。

電動キックボードといえば、欧米各地の市街地でシェアリングサービスが人気となっていることを、テレビやネットのニュースでご存じの方も多いだろう。

日本でも本格的な普及を目指す動きはあるが、個人所有しているケースはまだまだ少なく、シェアリングについては全国各地で実証試験がおこなわれている。

そこで聞こえてくる声とは……。

シェアリング業者からは緩和を求める声も

電動キックボードのシェアリング事業者から「ヘルメットの着用を任意にしてほしい」という声があった。

自転車感覚で借りる場合が多く、ヘルメット着用に抵抗がある人が多い。夏場は暑いし、女性はヘアスタイルが乱れることが気になる。

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周囲の交通への影響や歩行者の安全性の観点から、有識者からは規制緩和を認めるような意見はでていない。    シャッターストック

これに対し、警察庁の有識者会議のメンバーからは、事故時の被害軽減のためヘルメット着用が必要との意見があった。

次に「免許を不要にしてほしい」という声だ。

これについては、こどもが勝手に乗り回す危険性が考えられるため、免許は必要であるとの見解だった。

そのほか「走行場所を拡大してほしい」という声もあった。

これについて「歩道の走行は反対。現状でも歩道を違法に走行する自転車歩行者に危険を与えるケースもあるため」と、規制緩和を認めるような意見は有識者から出ていない。

この検討会で議論された電動キックボードは、最高速度が20km/h未満としている。

人が普通に歩く場合の速度は3-4km/h程度であるため、電動キックボードの走行を許すことが難しい。

ただし、有識者からは徐行の場合のみ、歩道可能としてはどうかという意見もあった。

さらに、将来的には各種の電動小型車を自転車のように専用走行レーンを設ける可能性についても議論された。

では、海外の当局は電動キックボードにどう対応しているのか?

免許不要? 海外の電動キックボード事情

警察庁が各国の電動キックボードの法制度について調べた。

それによると、ヘルメットの着用義務については、英国、フランス(都市部)、ドイツは推奨はするが義務化せず。

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フランス都市部の電動キックボード    シャッターストック

また、韓国は着用は義務化し、イタリアは18歳以下のみ義務化。

次に、運転免許については、フランスドイツイタリアが不要で、英国と韓国が必要。

また、免許不要の場合、年齢制限はフランスが12歳、ドイツイタリアが14歳とした。

最高走行速度は、英国が25km/h以下、フランスが6km/h以上25km/h未満、ドイツが20km/h以下、イタリアが25km/h以下で、歩行者区域を走行時には6km/hに制御、そして韓国が25km/h以下である。

さらに、走行場所については、英国とフランスが車道と自転車レーン、ドイツは車道と自転車のほかに自転車専用通行帯や路側帯など、そしてイタリアが車道と自転車レーン(市街地)に加えて自転車が通行可能な歩行車専用エリアとなっている。

このように、電動キックボードに対する法解釈は各国の道路状況や社会通念によってかなりの違いがあるのが実情だ。

さて、電動キックボード以外の乗り物で、日本が新たに規制緩和された乗り物用の装置にいま、注目が集まっている。

それが「モビチェン」である。

合法? 車両区分を変える「モビチェン」

「モビチェン(モビリティ・カテゴリーチェンジャー)」とは、原動機付自転車から自転車への切り替えを認めるための装置だ。

警察庁が2021年6月28日付けで「車両区分を変化させることができるモビリティ」に対する通達を発出したことで、モビチェンは公的に認められた。

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原動機付自転車から自転車への切り替えのための装置    グラフィット

こうした事例は日本で初めてである。

ベンチャー企業のグラフィット(本社:和歌山県和歌山市)が開発した。

どういう装置かといえば、車体後部にあるナンバープレートの上に、自転車の図柄を入った折り畳み式のプレートが覆い被さる仕組みだ。

法対応と安全性確保のため、電動バイクとしての電気スイッチをオフにした状態でないとモビチェンが作動しないなど、さまざまな工夫がなされている。

では、モビチェンのどこが画期的なのか?

それは、走行区分を変えることができる点だ。

これまで、ペダル付き電動機付自転車でペダルのみで走っていても、自転車専用道、または歩道の一部を自転車が通行できるエリアを走行できなかった。

利用者の立場からすれば、警察に対して臨機応変な対応を求めたいところだが、法的には車両区分を変えるという大きなハードルがあった。

グラフィットでは今後、モビチェンを自社製品に採用するのはもちろんだが、他メーカー含めて社会全体での普及を目指すという。


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