静岡を拠点とする航空会社、FDAが展開した夢のような企画「飛行機乗り放題プラン」。実はこの行き先の決め方は、いわゆる大手のようにはいきません。こういった便設定の背景には、高い独自性を持つ同社の路線ネットワークならではの狙いがありました。

拠点は静岡、そして「旧名古屋空港」

静岡県を拠点する航空会社、FDAフジドリームエアラインズ)では、旅行好き、航空ファンにとって夢のような企画を2021年の春、そして夏(7月20日まで挙行)と実施しました。――ズバリ、飛行機乗り放題プランです。

このプランは、1泊2日、2泊3日から構成されます。価格は1人で申し込みの場合、2日間プランで3万8000円、3日間で4万6800円。制約として、1日あたり最大8区間で、最後に同一空港に帰ることなどがあるものの、非常に広い範囲をめぐることができます。なおFDAによると、8区間の制限は「便設定上の理由で、これ以上乗ることができないため」としています。

勝負は「乗る前」から始まっています。FDAの路線の特徴は、なんといってもそのネットワークの独自性。拠点は静岡空港、そして、中部空港開港前、中日本地域における空の玄関だった小牧空港(県営名古屋飛行場)です。この空港は2021年現在、FDAのみが発着しています。

拠点以外の就航地を見てゆくと、いわゆる基幹空港で同社が就航しているのは、新千歳、福岡のみです。逆に言えば、札幌丘珠(他社便はHACの北海道内と三沢線のみ)、長野県の松本(他社便はJAL伊丹線のみ)など、東京発着ではなかなか行くことができない地方都市や空港を結んでいます。

ただレア空港にも乗り入れているゆえ、便数はそこまで多いわけではありません。また、便自体も、小牧や福岡発着の一部路線を除き、18時前に出発してしまうことがほとんどなのも、同社の便設定の特徴です。

こうした条件下で行きたい空港や都市を逆算しながら、「ここは行けるけど、ここは間に合わない。さあどうしようか……」と、パズルのピースを当てはめるように便を設定します。ちなみにFDAの定期便では、最北が丘珠、最南が鹿児島となっており、組み方によっては3日で日本をほとんど一周することも十分可能です。

独自性はこれだけじゃない! 背景にあるFDAの狙い

ただ、ここでもFDAのネットワークにおける異色っぷりが発揮されます。たとえば東急エージェンシー公表の『2020年全国空港乗降者数一覧』によると、鹿児島空港は全国9位、年間約258万人が利用している大きな空港ですが、FDA便は静岡~鹿児島線の、わずか1往復のみしかありません。それに対し同データ14位、利用者が約130万人の熊本空港からは、FDA便で静岡、小牧に就航しているほか、経由便で東北地方に行くことができます。

つまり多くの航空会社で当てはまるであろう「大空港だから便が多く出ている」法則が、同社では必ずしも当てはまらないのです。これも、FDAの「乗り放題」の便設定の醍醐味で、かつ同社のネットワークの独自性を、ハッキリと体感できる機会にもなっていたのです。

FDAの広報部は、このネットワークの独自性について次のように説明します。

FDAでは、都心一極型ではなく、地域ごとの特色を出し、文化や人々の交流をつくっていくということに重点をおいています。必ずしも利便性の高い路線を……というわけではなく、地方同士の路線を結ぶことで、その地域の方々が出張しやすくなり、ビジネスが生まれることもあるのです。またこのことで、地方空港の有効活用ができる、という意味でも意義があると思います。大手さんが飛べないのであれば、FDAがそこを紡ぐ!という考え方は、ずっと一貫してやっています」

なおFDAの「乗り放題プラン」について、今後“復活”するかは未定とのことですが、「今後も楽しんでいただける企画にどんどんチャレンジしていきたいです」と担当者は話します。

山形空港のFDA機(2021年7月、乗りものニュース編集部撮影)。