かっこいい大人というのは、無理せず上手にお酒を飲めるもの。逆もまた然りで、酒癖が悪いと周囲の評価を大きく下げることになるでしょう。

ビール
画像はイメージです(以下同じ)
 一昨年まで都内のバーに勤務していた中里優さん(仮名・25歳)は、当時「バーが賑わっている状況だからこそ」抱えていた悩みがあったと打ち明けます。

「女性がいないと入店しない」やっかいな客

 中里さんの悩みの種は、たまにバーに来る男性客のD氏でした。40代後半ぐらいで、酔うと女性客にデリカシーもなくプライベートなことを聞いたり、しつこく連絡先を聞いて後日飲みに誘ったりと、迷惑行為を繰り返していました。

 働いているバーはドアがガラス張りになっていて、外から店内が見えるようになっています。D氏はそのガラス越しのドアから店内をチラチラ覗き込んで入店することが多かったと言います。

「初見の人ならバーに入る前、店内の様子をうかがうのはよくある光景ですが、何度か通うようになってからも必ず店内を覗き込んでから入店していたんです。(店内を覗き込んで)入店しないときもありますし、好みの女性が店内にいるかどうか物色しているのだとすぐに悟りました

 実際、D氏が来店する時は、必ず何人か女性客がいて、店内が空いている時や男性客しかいないと姿を現しませんでした。当初は1杯奢る気遣いも見せていたので、ただの下心のある客なのだなと中里さんは思っていました。

迷惑行為に頭を悩ませる

バー 男性

 しかし、D氏の女性客への絡みは日に日にエスカレートしていきます。来店回数が増えて店内の空気に慣れたのか、かなり酔いが回っている状態での来店も多かったそうです。大声で下ネタを言ったり、女性客同士の会話に入り込むなど、場の空気を乱す行為が頻繁に見られました

「過度に絡んでいるのを見ては注意を繰り返しましたが、泥酔していてあまり覚えていないのか、反省した様子は見られませんでした。常連の女性客のなかには、D氏が来店すると帰る人もいて、頭を悩ませていましたね

 常連のお客さんでほぼ満席だったある日のこと。それぞれ単独で来店した客同士が盛り上がり、店内は和やかなムードでした。そんな状態のなか、D氏が来店します。

他の常連と話していた女性に絡み始め…

「1杯目を頼んですぐさま、隣にいた若い女性客B子さんに話しかけ始め、『この店にはよく来るのか』『だいたい何曜日に飲んでいるのか』『彼氏はいるのか』といった質問を繰り返していました。

 B子さんはそれまで、隣に座っていた常連の男性客A氏と話していました。D氏は空気が読めないのか、気づいていないのか、2人の会話を断ち切るような形で一方的に話しかけていたんです

 B子さんは困惑しながらもD氏に質問に答えていた一方で会話を中断されたA氏は、これまでD氏とバーで何度か居合わせており、酔うと女性客へ執拗に絡むことを知っていたようです。

 彼の諦めて飲み始めた様子に、中里さんは申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

「A氏はうんざりした様子で、僕にアイコンタクトを送ってきました。今日こそは『D氏の暴走を止めないと』と思いました」

D氏の言動をたしなめようとするも…

バー

 そこで中里さんは、A氏とB子さんが再び会話できるよう共通の話題をふったり、D氏の言動をたしなめて会話の流れを止めようとしました。

 しかし、D氏は聞く耳をもつどころか、B子さんを別のバーに連れて行こうとし始めます。やんわり断るも、懲りずに「別にいいじゃん、じゃあ連絡先とかどう?」とねちっこく絡み続けます。

「自分の力不足を痛感しつつ、D氏に強く注意しようと決めました。多少店内の空気がピリついても、叱って強引にお会計も出してしまおうと思いました。そのとき、思いもよらぬ方向から救いの手を差し伸べられたんです」

常連の一言で無事撃退に成功

お酒 バー

すみません、自分のツレなんですよね。今日は2人で飲んでるんで」とそれまで沈黙を貫いていたA氏が発言。B子さんを救うため、もともと自分たちが一緒に来ていたという嘘をついたのです。

「ばつが悪そうに絡むのをやめ、それから数分後気まずそうに会計をしてそそくさと店を後にしました。それ以降、D氏は姿を見せなくなりました思い出すたびに痛快な気分になりますし、A氏には今でも頭が上がりません」

 厚かましい人には、下手に怒るよりも、自分がやっていることの恥ずかしさを自覚させるほうが効果があるのかもしれません。面倒なシチュエーションに巻き込まれたときには、この手法を使ってみることをおすすめします。

TEXT/佐藤隼秀 イラストパウロタスク(@paultaskart)>

特集[令和のスカッとした話]

【佐藤隼秀】

1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。平日はライター、週末はゴールデン街での店番バイトで生計を立てる。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬