中央線快速電車では、E233系電車が使用されていますが、2020年に久々に1編成だけ増備が行われました。この増備車は「T71編成」と呼ばれていますが、それまでのE233系と比べて番号の付け方が不自然だと一部のファンのあいだで話題になりました。

中央線快速電車のE233系 番号の付け方

中央線快速電車に使われているE233系電車(0番台)は、それまで使われていた201系電車を置き替えるため2006(平成18)年に登場。青梅線五日市線用を含めて2008(平成20)年まで製造されました(2009〈平成21〉年に新造した踏切事故車代替車を除く)。その後しばらく増備はありませんでしたが、2020年になって1編成だけ増備が行われました。それが「T71編成」です。

中央線快速電車E233系では、東京方の先頭車がクハE233形、反対側の高尾・大月方面の先頭車がクハE232形と命名され、編成の中間に連結されている中間車のうち、モーターが付いている車両はモハE233形(パンタグラフ付)とモハE232形(パンタグラフなし)、モーターのないサハE233形の各形式で構成されています。

さらに、クハE233-1というように、「-」(ハイフン)に続いて番号を振ることで車号(車両番号)が割り振られています。E233系では番号の下2桁が揃うように番号が付けられていて、「T42編成」を例にすると、各車両の車号の下2桁は「42」で揃っているのです。

ところが、今回登場した「T71編成」では、1号車から5号車までは下2桁が「71」で揃っているものの、6号車から9号車までの下2桁は「43」、10号車にいたっては下2桁が「68」と、不揃いになっています。いったいなぜなのでしょうか?

答えは「今までの番号の続き」

先に答えを書いてしまうと、「T71編成」の車号が不揃いになっているのは、今まで造られたE233系の続きで車号が付けられたためです。ここでは、その理由を追ってみます。

中央線快速電車E233系は10両貫通編成と分割編成、次いで青梅線五日市線E233系の順で車号が割り振られています。中央線快速電車では、富士急行線直通の河口湖行きや八高線直通の高麗川行きが走っていますが、途中で切り離しを行っています。ホームの長さの都合があって、10両編成の長い列車が走ることできません。

このため、6両編成と4両編成に分割できる編成が必要となるのですが、河口湖行きや高麗川行きとなる列車は少なく、すべての編成を分割できるように作ってしまうと無駄が出てしまいます。この結果、10両貫通編成と分割編成が存在しているのです。また、青梅線奥多摩方面や五日市線も最長で6両編成、奥多摩方面の普通列車では4両編成の列車しか走ることができないため、こちらも4両編成と6両編成が使用されています。

分割編成では、先頭車が加わるのと、4両編成の中間車の設備が異なるために、10号車を除いて番号を振り直しています。一方、6両編成の1号車から5号車までは10両編成の1号車から5号車までと同等の設備となっているために、10両貫通編成の番号が引き継がれています。この結果、番号がずれているのです。また、6両編成の数よりも4両編成の数が少ないため、最後の編成の番号が異なっています。6両編成は28本製造されましたが、4両編成は25本に留まっているのです。

10両貫通編成の番号を付けてから6両編成と4両編成の番号を付けたものの、「T71編成」では10両貫通編成に戻ってしまったため、車号が不揃いになってしまったのです。

なお、下2桁が「70」の編成は2017年に青梅線五日市線から南武線に転属しています。この際、元の番号に「8500」または「8000」を足して南武線用に改められました。南武線E233系は8000番台に番号が割り振られていますが、8500以降の番号とすることで、既存のE233系8000番台と番号が重複しないように配慮されています。

「T71編成」の番号の意味

まとめると、「T71編成」の1号車から5号車までは、10両貫通編成と6両編成の合計数70本の次となるため、「71」となります。6号車と7号車のサハE233形は10両貫通編成のみに連結されている車両ですので、43本目となる10両貫通編成の「T71編成」では、下2桁が「43」となります。10号車は4両編成の最後の車号の「67」に続く形で、「68」となるのです。

「今までの番号の続き」というシンプルな正解ですが、いざ番号をつけようとすると複雑になるのが不思議なものです。

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現在の中央線快速電車では、トイレの設置が進んでいます。この関連で番号を改めた車両や、連結の順序の入れ換えが発生しています。ここでは簡単な説明とするため、トイレ設置前の編成で話を進めました。

中央線快速電車に投入されたE233系T71編成(画像:写真AC)。