(羽田真代:在韓ビジネスライター)

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 韓国の漫画家、尹瑞寅(ユン・ソイン)氏が、東京五輪の選手村に反日横断幕を掲出した韓国選手団を批判するコメントを自身のフェイスブック上に掲載した。

 韓国選手団は選手村入りしてすぐ、自国の国旗と文禄・慶長の役において朝鮮水軍を率いて日本軍と戦い活躍した李舜臣イ・スンシン)の「尚有十二舜臣不死」をもじった「臣にはまだ五千万の国民の応援と支持が残っている」という横断幕を掲出し、物議を醸した。

 余談だが、韓国では李舜臣が亀甲船を使って日本船を撃破、豊臣秀吉を打ち負かしたという教育がなされているため、李舜臣は韓国を守った英雄だと信じられている。しかし、実際には秀吉が死去したことによる日本船の撤退であり、李舜臣によって秀吉が負かされたわけではない。

 こちらの横断幕に関しては、国際オリンピック委員会IOC)から五輪憲章(政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じた五輪憲章50条)違反の指摘を受け直ちに撤去する事態となった。しかし、選手団は「虎が降りてくる」という横断幕を掲出し、それは今も撤去されずに掲げられている。

 尹瑞寅氏が韓国選手団の一連の行動に対して物申すまで、韓国世論には「日本がまた難癖をつけてきた」「自分たちは旭日旗を掲げているくせに」と日本を批判する声ばかりが目立った。取り分け、韓国選手団の行動に対する著名人の批判は皆無で、尹瑞寅氏が韓国側に対し異論を唱えたことが極めて異例である。

 尹瑞寅氏は漫画家として活躍する傍ら、イラストレーターやユーチューバーとしても活躍している人物である。彼は、慰安婦被害者といわれるおばあさんセウォル号の遺族など、様々な被害者を不適切な比喩の対象にしたり暴言を吐いたりすることがしばしばあり、韓国内では反社会的行為で悪名が高い人物として扱われている。

 また、“日本植民地(統治)時代の親日売国奴の代名詞のような人物”だともいわれている。

 韓国人の一般認識と異なった考え方をしているだけで“親日”だ“極右”だと分類されることに本人は異論を唱えているが、自らを“親日世代の極右漫画家”と称しており、日本贔屓な面がある。本人も日本に生活基盤を移そうと不動産や事業に投資したこともあるようだ。

尹瑞寅氏を擁護する声も

 尹瑞寅氏のフェイスブックアイコンには真っ赤な背景に彼が描いた白の全身タイツのようなものを着用したキャラクターが使用されている。そのため、赤と白で日本国旗をイメージしているのではないかともいわれている。

 今回、選手村入りした韓国選手団の愚行に対して、彼は自身のフェイスブックに、「何も掲げなければいいじゃないか。何も掲げないことがそんなに難しいのか」「(虎の横断幕について)これならば日本は何も言えないだろうという卑怯な気持ちで無意味な象徴物を掲げる心は貧しい」「ボイコットすると大口を叩いていたにも関わらず密かに行くなんて恥ずかしい」と言及した。

 彼の投稿については韓国のメディアでも引用報道されている。読者から「あなたは紳士のように生きたら良い!でも、我々の先祖が日本にやられたことを忘れないで。だから選手が日本にいる間は選手のしたいようにさせてやって」と韓国選手団を援護するコメントや、日本は悪だということを前提に「おじいさんおばあさんが受けた傷を自信満々に世界に拡散させるなんて」と、五輪の場を政治利用する韓国選手団に苦言するコメントも見受けられた。

 もちろん、尹瑞寅氏を擁護するコメントもある。

「日本がやってきて西大門刑務所を作って犯罪者らを収容し、汽車を作って荷物を短時間で運べるようにし、中国語の代わりに韓国語を勉強させてくれて、医療恩恵を受け、工場設立により賃金をもらえたのに、我々は日本に何をされたというのか?」

「日本は謝罪した。北朝鮮の金一家は我々に謝罪していない」

「韓国の太極選士らが日本選手らと戦うために行ったのか。世界各国の人々と力と技を競うスポーツの祭典なのに。たとえ、北朝鮮で五輪が開かれても白善燁(ペク・ソンヨプ)将軍の写真を持って行ってはならない」

 ちなみに、白善燁将軍とは朝鮮戦争の激戦地の第一線で指揮をとった人物である。

 尹瑞寅氏が言及するまでは連日日本への批判ばかりだったが、著名人が韓国選手団の愚行に物申したことで、これまで黙っていた国民が姿を現したようだ。

閉会式に文在寅大統領が来る?

 それもそのはずだ。オーストラリア選手団は「THANK YOU」「心より感謝いたします」と感謝の念を横断幕にして掲出しているにもかかわらず、自国選手らは反日横断幕を掲出しているのだから。韓国側の異常な行動を恥ずべきだと感じている国民は少なからず存在する。

 韓国選手団は反日横断幕を掲出し、放射能フリー弁当を作るといって給食センターの運営を始めるなど五輪開幕前から好き勝手し放題だ。開会式の出席及び日韓首脳会談開催を切望していた文在寅大統領は訪日を断念したが、韓国メディアにおいては閉会式に合わせた訪日が囁かれ始めている。

 ご都合主義と場をわきまえない行為、そしてサッカーニュージーランド戦での握手拒否のようなスポーツマンシップに反した韓国の振る舞いが、東京五輪によって世界により広まりつつある。史上最悪といわれた日韓関係は東京五輪によってさらに溝が深まったようだが、世界の日韓関係に対する認識も良い意味で深まりそうだ。

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選手村に掲出された反日横断幕(写真:YONHAP NEWS/アフロ)