日本の航空会社で30年以上、主力機として君臨する旅客機といえば「ボーイング767」です。ただこの機には双子ともいえる「757」というモデルがありました。どのような機体で、なぜ日本で導入がなかったのでしょうか。

「767」「757」ともに1000機以上製造

2021年現在も、JAL日本航空)やANA全日空)の主力機として君臨し、“いぶし銀”の活躍をしている旅客機が、ボーイング767です。たとえばJALでは1985(昭和60)年に初期タイプである767-200を導入し、その翌年から767-300を使用。-300は35年以上たった現在も使用されており、その重用ぶりがうかがえます。

実はこの767には、“双子”といえるモデルがあります。それがボーイング757です。ただ767は日本国内で頻繁に見かけるのに対し、757は国内エアラインで採用がなく、日本に乗り入れてくるのは東南アジアのエアラインか、外国の貨物便といった程度。国内においては、レア機の範囲に入ります。

ただこの757は、世界的にみると1000機以上も製造されており、傑作機といえるでしょう。しかもこの機数、実は767と大差ないのです。ボーイング社のお膝元であるアメリカなどでは、757を用いた国内線を頻繁に見ることができました。このように日本と海外とで遭遇率にギャップのある旅客機757とは、どういったものなのでしょうか。

767と757の2モデルは、とある共通したコンセプトのもと、同時期に開発がすすめられました。これらは、ボーイング社初のいわゆる「デジタル旅客機」ともいえるものです。

ボーイング社初のジェット旅客機「707」がデビューして以来、同社はさまざまなコンセプトジェット旅客機を開発してきました。短距離国内線をおもなターゲットとした「727」や「737」、長距離向けの707の後継としつつ、キャパシティの倍増を図った「ジャンボジェット」こと「747」などです。

2機種が双子なのはなぜ?

747の開発が完了したボーイング社ではその後、「7N7」、「7X7」という中小型機に革新的なデジタル技術を採り入れた機体の開発に着手します。もちろん、それまでも旅客機の技術は年を追うごとに進化していましたが、当時のスタンダードアナログの計器がならぶコクピットでした。ここに液晶画面がならぶ現代的な「グラス・コクピット」が、ボーイング社の旅客機として初めて導入されることになります。

デジタル旅客機としては、まず社内で「7X7」と呼ばれた機の開発が始まりました。ただ当時、比較的短距離の路線で主力機として投入されていた3発ジェット727の後継機も必要との判断により、7X7よりひと回り小さく、727の代替機を目指した「7N7」の開発も始まります。

こちらは707、727と同じように機内に通路が1本のみの単通路機である一方で、727の外観の特徴であるT字型の尾翼配置ではなく、現代ではスタンダードな胴体尾部を水平尾翼が貫くようなレイアウトとし安定性を高めているほか、エンジンの配置も主翼下に2基備えることとしました。

こうして完成した2機種は、7N7が757,7X7が767として販売されるわけですが、両者の見た目は、それほど似ていません。ただ冒頭で“双子”と述べたとおりこの2機種は、深い関係があります。

それまでの旅客機では、機種ごとに別々に操縦資格が必要でしたが、767と757はコックピットが共通のため、一定の訓練を積めば同じ資格で乗務できるとされました。運用するエアラインにとっては非常に効率的である一方で、パイロットから見れば「コックピットの景色はほとんど一緒」であり、ここが双子”たるゆえんです。

さらに767、そして757は、エアライン側としては歓迎すべき旅客機でした。727では、機長、副操縦士、航空機関士の3名乗務となっていましたが、757、767では機長と副操縦士の2名(ツーメン・クルー)で運航できることとなったのです。

なぜ「757」は日本で導入されなかったのか

先述のとおり767はANAJALでも採用され、国内線国際線の両方で長年使用されてきた一方で、757は1機も採用されませんでした。これは、767の部品の多くが日本国内のメーカーで製造されていたことから導入が進みやすかったこと、国内線の利用者数が伸びており757ではキャパシティが小さすぎる一方で、ローカル線で使用されていた737はまだまだ健在で、新品を購入する必要性があまりなかったことなどが挙げられるでしょうか。

また、757は日本のエアラインが採用していないだけでなく、本来は「国内専用」の機体です。このため海外から日本への飛来実績も少ないのですが、2000年代になってノースウエスト航空(現・デルタ航空)の東南アジア方面への乗り継ぎ機材として、成田空港に数機が常駐していました。ちなみに、757の初来日は1982(昭和57)年。デモ機が羽田空港に飛来しましたが、これはイースタン航空の塗装をベースとして、垂直尾翼に757と描かれていました。

世界的には好調なセールスを記録した757シリーズは、全長約47mの初期タイプ「757-200」が生産機数の大部分を占めています。実はその後、胴体を約7m延長した757-300というタイプが販売されましたが、こちらは55機のみと売れ行きは不調でした。

757-300の売れ行きが芳しくなかったのは、ライバルであるヨーロッパエアバス社から、コンピューターによる運航を可能なベストセラー機A320シリーズの胴体延長タイプ「A321」といった派生型がデビューしたほか、自社内でも737に胴体延長型の発展型が開発され、そちらに需要が乗り移ってしまったことがおもな理由でしょう。

ボーイング757は一見、「空の貴婦人」とも呼ばれた往年の名機ダグラスDC-8にも見間違えるほど、胴体が細くて長い印象を受けます。日本でこそ見かけませんが、この機がジェット旅客機の運航におけるコンピューター化、いわゆるハイテク化に果たした役割は大きかったと言えると思います。

ボーイング757型機を多く使うアメリカのデルタ航空。日本でも、海外の航空会社が運航する757型機を見ることができる(画像:boarding1now/123RF)。