地方に影響の大きそうな話です。

増大する維持管理費 負担の在り方を見直し

国土交通省が2021年7月26日(月)、第51回目となる有識者会議「国土幹線道路部会」を開催。今後の高速道路料金施策についての中間答申の案が国交省側から発表され、意見が交わされました。

国は昨今の社会情勢の変化、ならびにインフラの老朽化や将来の維持費の増大に対応すべく、高速道路料金全体の抜本的な見直しを検討しています。休日割引や深夜割引といった割引施策の在り方や、混雑を緩和する変動料金など、その見直し範囲は広範です。

なかでも、地方に大きな影響を及ぼしそうな議題のひとつに、いわゆる「無料高速」の負担の在り方が挙げられます。

主に地方で見られる無料の高速道路は、国土を縦貫する高速道路や都市部の高速道路など、高い交通需要が見込まれる路線が有料道路事業を基本として整備されてきたのに対し、国の税金で建設されてきました。なかには、有料区間と無料区間が混在する路線もあります。

その有料化検討の目的は、「これからの維持管理費をどうするか」に尽きます。

中間答申の案では、「平成26年度より始まった5年に1度の構造物の定期点検の結果、メンテナンス費用の確保の重要性が高まったこと、加えて、近年の激甚化・頻発化する自然災害に対応するための強靱化の取り組みを速やかに進める必要があることから、維持管理等の費用については、高速道路の利用者による負担を求めることを基本とすべき」などとされています。

この無料高速の整備には様々な事業スキームがありますが、これまで委員からは「法整備した当時は維持費をどうするかという観点がなかった」といった指摘がなされています。しかし2010年代以降、維持管理の重要性やインフラの老朽化問題が顕在化するなかで「従前の考え方はリセットせざるを得ない」との議論が出ているのです。

料金徴収期間もさらに伸びるか

高速道路会社は現在、路線の新設や維持管理とともに、老朽化した道路の「更新」事業を進めています。既存路線の「造り替え」も伴う大規模な建設事業であり、これを受け2014(平成26)年には、高速道路の料金徴収の年限も2050年から2065年まで延長されました。

なお、NEXCO3社や首都高速阪神高速本四高速が2021年4月時点で計画している更新事業の費用だけでも、その総額は約5兆2652億円に上ります。このため答申案では、「路線の建設にかかった債務の完済を前提とすれば、サービス水準を維持するために料金水準の引き上げや、料金徴収期間のさらなる延長について検討する必要がある」とされています。

また、たとえば10年ごとに更新や道路の進化に関する事業計画を策定し、計画的に事業を進めることなども盛り込まれています。無料高速の有料化も、このような維持管理費の負担の在り方のひとつとして議論されているのです。

秋田道の大館北IC付近。秋田道は有料区間と無料区間が混在する(乗りものニュース編集部撮影)。