何かを達成したときや、楽しいことをしているとき、あるいは美味しいものを食べているときなど、気分が良いと感じる時、脳内では「ドーパミン」という神経伝達物質が出ている。
脳内麻薬とも言われるドーパミンは、麻薬やお酒などの依存症とも関係する強力な物質なのだがマウス実験によると、これを自分の意思で放出させることができるのだという。
日頃から学校や資格の勉強に励んだりと、何かの目標に向けて地道な努力を続けられるのは、このドーパミンという神経伝達物質のおかげだ。
周りから見ると大変そうに思えることであっても、やっている本人は案外楽しんでいたりする。それはドーパミンがきちんと機能して、その行為に快感を感じさせているゆえのことだ。
その機能を探った研究は多数あるが、『Current Biology』(7月23日付)に掲載された研究では、少し違った視点からドーパミンについて調べている。
マウス実験で、自分の意志でドーパミンが出せることが明らかに
カリフォルニア大学サンディエゴ校の大学院生コンラッド・フー氏らは、マウスの脳を分子・光学的な撮像技術で観察していた。すると、その新皮質に毎秒0.01回の頻度で予測できないドーパミンのパルスが生じていることに気がついたのだという。
はたしてマウスはこれを自覚しているのか? これを調べるために、フー氏らはマウスを訓練して、ドーパミンを出せたらご褒美がもらえることを教えてみた。
するとマウスがそれを自覚しているだけでなく、自分の意思で出せることまで明らかになったのだ。
「報酬を受け取る前であっても、マウスが確実に(ドーパミン)パルスを出す方法を学習したことは決定的」と論文では述べられている。
ドーパミンを自由に出すことで絶望を希望にかえることができる
自由にドーパミンが出せるようになるということは、好きな時に自分の気分を良くすることができるということだ。なぜマウスはそれができるのだろう?今回の研究では、ご褒美が取り上げられてもドーパミンを出せることや、自発的に出したドーパミンでマウスが活発になるらしいことなども確認されている。
フー氏らの考えでは、こうした自発的なドーパミン放出は、これからどのような行動を取るのか決めるうえで大切な役割を担っている可能性があるという。
たとえばエサが見つかる手がかりすらない状況で、食べ物を探さなければならない状況があったとする。そんなとき、マウスは意識的にドーパミンを放出することで、やる気を出しているかもしれない。
もし人間も同じようにドーパミンが自らの意志で放出可能なら、絶望的状態でも前向きに行動し、希望を持ち続けることができるだろう。
研究グループは今後、こうした自発的ドーパミンがエサ探しや交尾のパートナー探し、あるいは見知らぬ場所に引っ越すといった社会的行動にはたす役割を調べていく予定であるそうだ。
References:‘Feel Good’ Brain Messenger Can Be Willfully Controlled, New Study Reveals / written by hiroching / edited by parumo
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