洞性徐脈とはどんな病気?

60歳の男性です。先日、健康診断を受けたのですが、心電図検査の結果で「洞性徐脈」という指摘がありました。
普段からお酒とタバコをやっていますが、これまで大きな病気はしたことが無く、ジョギングやゴルフなどで体もよく動かしており、健康そのものと思っておりました。
健康診断の結果も、心臓の異常以外には、γ―GTPの値が少し悪い程度で、他は何もありませんでした。
この洞性徐脈というのはどのような病気なのでしょうか。自覚症状は全く無いのですが、不整脈のようなものでしょうか。

脈が遅くなる不整脈の一種
めまい・息切れ等注意必要

今回は心電図の検査で洞性徐脈という診断を受けた方からのご相談です。

徐脈というのは脈が遅くなる不整脈の一種です。以前このコーナーで脈が速くなる頻脈のご相談を受けたことがありますが、同じ不整脈でも頻脈のように速くなるのではなく、徐脈といって脈が遅くなるタイプの不整脈もあるのです。

同じ徐脈でも、この洞性徐脈とはどんなものか。それをお話する前に、まず心臓の脈の作られ方からご説明します。心臓は刺激伝導系という電気の通り道に信号を流すことにより筋肉を収縮させて動いています。この伝導系の最初の部分に洞房結節という電気的刺激をつくる場所があり、そこで作り出された電気刺激が伝導系を伝わって心臓の末端の筋肉まで行き渡り、心臓の筋肉を収縮運動させます。つまり、この洞房結節が刺激を作り出す頻度が脈拍数を決めているのです。

この洞性徐脈を病気として捉えることは少なく、健康診断でも経過観察や軽度異常という判定をされることがほとんどです。若い方などはもともと脈がゆっくりとしていることが多く、またスポーツ選手、とくに長距離ランナーの方などは徐脈の方が多いです。長距離ランナーは走っている最中の脈の速度が基準になるように体が調整されているので、走るのを止め、安静にしている時などは通常よりゆっくりとした脈になるのです。

通常の方の脈拍数は1分間に60~80回くらいですが、この洞房結節からの電気刺激の頻度が落ちてくることが原因で脈拍数が50回を切るような場合、洞性徐脈と診断がつけられます。

一方で、脈があまりにも遅くなり過ぎることが稀にありまして、たとえば脈拍数が40を切って30台になったりすることもありますが、このような場合には洞不全症候群という病気である可能性が高くなります。特に除脈に伴う症状として、めまいや息切れ、さらに失神してしまうような場合には注意が必要です。このような洞不全症候群の原因としては、多くが加齢に伴う洞結節の機能低下があります。また、狭心症などの心臓疾患や、ある種の薬の副作用として洞機能が低下する事もあるため、きちんと原因を調べることも大切です。

徐脈がどの程度のものなのかを詳しく調べるためには、ホルター心電図を用いた24時間の検査や、入院をしてカテーテルを用いた電気生理学的検査というものを実施しますが、最終的にはペースメーカーを入れる必要も出てくる場合もあります。

もし除脈を指摘指された方で、めまい、息切れ、失神などの症状がある場合には、必ず循環器内科で二次検査を行い、洞不全症候群がないかどうかを調べていただくと良いと思います。

健康には自信があったのに「洞性徐脈」と診断され…