代替テキスト

「希望する人には10、11月までにーー」と政府が進めるコロナワクチンの接種。これから接種を予定している人は、会場での深刻な熱中症リスクへの十分な警戒が必要だーー。

「炎天下を駅から10分ほど歩いて、汗ダラダラのまま代々木公園内の接種会場に着きましたが、そこには長蛇の列ができていて、2時間30分待ちの案内が……。木陰があり、大型扇風機も回ってはいましたが、長時間立ちっぱなしで、ヘトヘトになってしまいました」(50代男性)

全国各地で進められている新型コロナウイルスワクチン接種。7月21日時点で約4,500万人が1回目の接種を終えている。

この炎天下に急ピッチで進められているが、接種会場のなかにはテントやプレハブで作られた急ごしらえの場所も少なくない。冒頭の声は、東京・代々木公園のワクチン接種センターから出てきた人の感想だ。

希望者へのワクチン接種が順調に進むことが望まれるいっぽう、気がかりなのが連日の体温並みの酷暑が原因の熱中症による救急搬送。全国医師ユニオンの植山直人医師は次のように語る。

ワクチン接種会場ではエアコンを強くしたり、水分補給を呼びかけるなど熱中症の対策にも力を入れています。ところが会場によっては、代々木公園のように駅からも相当歩いていかなければならない場所であったり、温度調整が不十分で熱のこもった会場もあるのが実情です。そのような環境に長時間いることは体に大きな負担をかけることになります。これから暑さがますます本格化するなか、全国のワクチン接種会場やそこまでの往復で、熱中症になる患者が続出する危険性があるのです」

大量に発汗し、体内の水分や塩分が失われ、めまいや頭痛、体温の上昇やけいれんなどを引き起こす熱中症。軽い症状で済む場合もあるが、重篤になるケースもけっして少なくない。’18年から毎年1,000人以上が熱中症で命を落としているのだ。

とくに、「熱中症は高齢者がなるもの」と思っている人は要注意。今年はこれまで以上に熱中症のリスクが“最悪”といえるほど高いのだという。

ワクチン接種会場での熱中症対策7選

「コロナ禍でマスク習慣が当たり前になりましたが、マスク着用時は呼吸による熱の放出が少なくなります。同時に湿度があるため、のどの渇きに気づきにくくなることも熱中症のリスクを高めます。外出控えによる運動不足や感染を恐れる不安・ストレス、さらに酷暑により免疫力や抵抗力など、体そのものの機能が低下している人も少なくありません。どんな世代にも熱中症のリスクはあるのです」(植山先生・以下同)

ワクチン接種を控えている人は、植山先生が挙げてくれた次の対策を心がけよう。

【1】接種前夜はエアコンをつけて体調を整える
【2】出かけるときは日傘や帽子を着用する
【3】通気性&吸湿性のよい衣服を選ぶ
【4】保冷剤、氷、冷たいタオルを必ず持参する
【5】こまめな水分補給を欠かさない
【6】炎天下を極力避け日陰を歩く
【7】3密を避け、マスクをときどき外す

「自分が行くワクチン接種会場がどんな場所かを事前に調べておきましょう。そのうえで、熱中症予防を徹底して出かけるようにしてください。ワクチンを打たなくてはと焦りを感じて、体調が悪いのに外出するのは禁物です。会場の問診で熱中症の症状があれば、ワクチン接種を受けることはできません。仮に打てても、重い副反応が出るリスクが伴います」

命を救うはずの場所で起こりうる、命をも奪う熱中症。くれぐれも用心したい。