日本でもっとも標高が高く、そして山に囲まれた立地による設備上の理由から「日本一着陸が難しい」とされる長野県の松本空港。この空港への着陸の様子はどういったものなのでしょうか。実際に乗ったところ、「神々しい」絶景があり、パイロットたちのプロの仕事がいかんなく発揮されていました。

標高は657.5m、FDA便が主に就航

日本の空港は、比較的平野部や海岸近くに建設されることが一般的です。この国でもっとも標高の高い空港が、長野県にある松本空港です。その標高は657.5m。2位の福島空港(標高372m)空港を大きく引き離し、いってしまえばダントツの高さにあります。この特殊な立地ゆえに、「着陸が日本一難しい」とされる空港でもあります。

この空港に乗り入れている航空会社は、静岡を拠点とするFDAフジドリームエアラインズ)が新千歳、札幌丘珠、神戸、福岡の4路線を設けているほか、JAL日本航空)グループの伊丹線もあります。

松本空港への着陸は、その景色が特徴的です。同空港はその標高自体が高いことはもちろんのこと、四方をさらに3000m級の山に囲まれています。記者がFDA便に乗った際は、空港付近を北上するかたちでいったん通過したのち、山にそって180度旋回し、空港の北側から滑走路へ向かうルートをとりました。

FDA便のパイロットからは「最終の着陸体制に入った」という案内ののち、左手に乗鞍岳、槍ヶ岳などが、右手に木曽駒ケ岳、富士山などが見えるといったアナウンスがなされました。

実は激変「日本一着陸が難しい空港」 景色の感想は?

その後は高度を下げつつ旋回しますが、最終旋回に入るまで、常に山が見える状態が続きます。やがて田んぼや民家などが見えてくるものの、着陸直前になっても、明らかに雲の位置が低い状態で、その標高の高さがうかがえるなか、松本空港に難なく着陸しました。

このときの乗客たちは「神々しい」「まるで遊覧飛行のようだった」と、その感想を話します。

この絶景が続く松本空港への着陸が難しいとされる理由、それは「ILS」という装置が設けられていないことです。

ILSは電波を用いて「滑走路の幅(中心線)」「航空機の進入角」「滑走路までの距離」を飛行機の計器に表示し、霧などで見通しが悪くとも、着陸ができるようにするための支援装置で、国内のほとんどの空港で標準装備されています。ただ、松本空港は立地上、電波を山が遮ってしまうため、設置されておらず、これまですべてパイロットによる目視での着陸が行われていました。そのような条件下で、パイロットは乗客を楽しませるために「景色の案内」をしていたのです。

しかし2020年7月20日から、同空港にはGPSを用いた新たな着陸進入方式「RNP- AR」が設定されました。長野県によると、「地上施設の配置に左右されない経路を飛行することが可能になるとともに、滑走路中心線延長上に誘導されることから、飛行時間の短縮とパイロットの負担軽減が図られるほか、進入方式に比べて、着陸を判断する最低高度がより低くなるため、就航率の向上が期待できる」としています。


※一部修正しました(7月30日10時37分)。

松本空港のFDA機(2021年7月、乗りものニュース編集部撮影)。