10年前に救ってくれた一家のもとを訪問し続ける野生のリスなど、大人になって自立してもお世話になった人を恋しく思う野性動物は意外と多いかもしれない。
カナダ在住の動物学者ニッキーさんと母親のリンダさんは自然と動物が大好き。そんな母子の元を、ふらりと訪れてくる野生動物がいる。
その気まぐれな動物は、4年前の赤ちゃん時代、道に捨てられていたところを保護し、大きくなるまで面倒をみていた孤児のアライグマだ。
大人になり、野生に戻っていったのだが、当時育ててもらったことを忘れていないようで、時たま実家を訪ねては懐かしそうに甘えてきちゃうんだそうだ。
【道路で赤ちゃんアライグマを発見。受け入れ先なく自宅で保護】
カナダで暮らす、動物学者で野性動物写真家でもあるニッキー・ロビンソンさんと母親のリンダさん親子がそのアライグマに出会ったのは2017年のこと。当時まだ赤ちゃんだった彼が無造作に道に捨てられてるのをニッキーさんが発見したのだ。
ニッキーさんはとても小さく今にも死にそうなアライグマを道から救出し、すぐに専門施設や獣医に連絡した。
だが、カナダではアライグマが多数生息しており害獣扱いとなっている。どこにも行き場がなく「当施設は空きがありません」「獣医のところで安楽死させては?」「そのまま拾った道に出しておいては?」というアドバイスしか得られなかった。
その対応に失望したニッキーさんは、かつて孤児のアライグマを保護し、野生にかえしたことがある母親のリンダさんと協力し、自分の力で野生で暮らせるようになるまで一時飼育することを決めた。
成長とともに少しずつ外へ。家族とも仲良くしてたリトルハンド
ニッキーさんは、フルタイムの仕事をしている。なので仕事中、家にいない間は、母親のリンダさんが育児を担当した。 育ての親となったリンダさんは、まるで我が子、我が孫のようにリトルハンドに愛情をたっぷり注ぎ、育児期間が終わったあとは、いつでも野生にかえれるよう行動を束縛せずに接した。
そのため彼は成長につれ外出するようになったが、まだ小さかった頃は戻るべき家を自覚しており、かならず帰ってきていたそうだ。
またロビンソン家には当初からいろいろな動物の家族がいた。
しかしリトルハンドは全員ともめることなく良い関係を築き、とりわけ赤ちゃんの頃からこの家に迎えられた元保護犬とは兄弟のように仲良しになった。
まだ小さなアライグマはとてもかわいい。だが小さくてもアライグマ。犬や猫とは違う習性がある。
ニッキーさんがSNSに投稿する写真を見て幼いリトルハンドをぜひペットにしたいと申し込んでくる家族もいたそうだ。
だがその一家はアライグマの習性を知らず、家のあちこちに身を隠すリトルハンドに驚いて飼うのをやめたそうだ。
あの時の恩を忘れない?野生に帰った後もふらっと実家にやってくる
そうしてリトルハンドは元気に成長していった。元々野生に帰れるよう、外と家を自由に行き来させていたのだが、大きくなるにつれ外に出る時間が長くなり、生活の拠点は自然の中へと移っていった。完全に野生に戻れたようで、4年後となった今は、家に戻ることはほとんどなくなったが、それでも彼は、突然ふらりと玄関に姿を現すことがあるという。
「ぼくのこと忘れてない?あの時助けてもらったアライグマだよ」とでもいうかのように、挨拶ついでに育ての母のリンダさんの膝に乗って抱っこを楽しんだり、しばらく家族と過ごしたりする。
自分が助けてもらったこと、たっぷりと愛情を注いでもらったことを理解しているかのようで、元気な姿をたまに見せにくるリトルハンド。
あるいは、ニッキーさんとリンダさんが元気に暮らしているか、その様子を見に来ているのかもしれない。
かつては毛皮動物として狩りの対象になったり、ペットとしてもてはやされたり、今では繁殖しすぎて農作物に多数の被害を出すことから害獣とみなされているアライグマは、人間と野性動物との関わりを再考させるエピソードとしてネットに広がっている。
アライグマはその見た目はとてもかわいいが、気性が荒く攻撃的なところがあり、ペットとして飼育するにはきちんとした知識や忍耐、根気、愛情が必要だ。
日本では過去にペットとして持ち込まれたアライグマが飼いきれずどんどん捨てられ、野生化した個体が繁殖した結果、農作物への被害や既存の野生動物への影響を及ぼしている。
2005年より「特定外来生物」に指定されており、個人による飼育は原則として禁じられており、発見時は触らずに通報・駆除対処が求められている。
References:brightside / instagramなど /written by D/ edited by parumo
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