「ちび子がお腹を見せるので手を伸ばすと、必ずパンチされるんです」 佐々木蔵之介の実家・佐々木酒造の酒蔵生まれの3匹が‟従業員ネコ”になるまで から続く

 豊臣秀吉の邸宅だった「聚楽第(じゅらくだい)」跡地のそばにある、創業1893年の佐々木酒造。俳優・佐々木蔵之介さんの実家としても知られる京都の造り酒屋です。前編では、Twitterの公式アカウントにたびたび登場し話題となった、社員ネコの、あーちゃん(オス)、ちーちゃん(オス)、ちび子ちゃん(メス)の様子を紹介しました。後編では、「当初は家業を継ぐ予定ではなかった」という、3兄弟の末っ子、4代目・晃社長のお話をうかがいます。(全2回の2回目/前編を読む)

今は家業を続けていくためにいいお酒を作り続けるだけ

――従業員に「ネコ含む」としたのは、どんな理由があったのでしょうか。

「先ほどお話ししたように出稼ぎの方がいたので、冬と夏とでは従業員の人数が随分違っていたんです。冬にしかいない人たちももちろん我々の仲間なので人数として入れたいんですけれど、夏に人数を盛っていることになってしまう。そこで、猫たちにクッションとなってもらったと言いますか。ホームページ全体を親しみを持ってもらえるような内容にしているので、その延長上として半分ユーモアのつもりでそうしたんですが、まさかこんなに話題になるとは思ってなかったです」

――3匹の猫ちゃんたちがイラストになったグッズパッケージとなったお酒も販売されていますね。

「しようと思ってしたわけではなく、いつもお願いしているイラストレーターさんがアメリカンショートヘアを飼っている関係で、うちの猫をノリノリで描いてくれはったんです。そこからパッケージにしてみようということになりました。猫たちはありがたい存在ですよ。写真を使おうが、イラストにしようが、ちゅ~るをあげておいたら喜んでくれるんですからね。猫たちが(酒造の敷地内に)いた頃は、会いに来てくださるお客さんもたくさんいました。そういったお客さんから会えないのが残念だとよく言っていただくので、テレワーク中と書いてキャットタワーにいる3匹をライブ映像で映そうかなとか思っています。ほかにも、イラストレーターさんに新しい猫のイラストを描いてもらったりと、これからも3匹には協力してもらうつもりです」

2番目の兄(佐々木蔵之介)は得意先を紹介してくれる

――ホームページのごあいさつに、「まさか酒屋を継ぐことになるとは思っておりませんでした」と書かれています。

「前職は機械屋の営業担当でした。私は酒造という家業をピンチヒッターとしてやっていると思っていますので、自分の担当する期間を全うすることだけを考えて日々やっているだけです。昔はお酒を売ることができるのは酒屋さんだけでした。その頃は酒屋さんと酒屋さんまで何メートル空いていないといけないという距離基準や、このエリアにはこの軒数でしか酒を販売してはいけないという人口基準という規則があったんです。そこから、要件さえ満たせば販売の許可が降りるように変更され、コンビニスーパードラッグストアにまでお酒の販売が許されている状況になった。我々のような酒をメインとした販売店は、難しい局面に立たされています」

――周囲にあった酒造の多くは移転したり、辞められたりしているそうですね。

「造り酒屋はたくさんありましたが、今では土地を貸して違う地で別の商売をしたり、土地をマンションや駐車場にして別の場所で酒屋をやってはります。うちは(家業を維持するために)先祖から受け継いできた土地を売ったりしながら、家業を残した。早くにこの地を離れて受け継いだ資産を守ることを決めた人、うちのように事業を残した人……どちらがいいのかはわかりませんが、事業を残すという選択をした以上、私は次の世代へ渡すために全うするだけ。誰が跡を継ぐかは決まっていませんが、今は家業を続けていくために、多くの人にお酒を楽しんでいただくためにいいお酒を造り続けるしかないなと思いながらやっています」

――家業を繋いでいくために、2人のお兄さんに相談することもあるのでしょうか。

「もちろん協力してくれていますよ。会社に入っているのはたまたま私だけですけど、2人の兄にとっても家業ですからね。2番目の兄(佐々木蔵之介)は得意先を紹介してくれますし、1番目の兄はコンサルタントをやっているので困ったことがあると、本人がわからなくても知り合いの専門家に聞いてくれてアドバイスをくれるので心強い存在です。とはいえ、うち程度の家業なんて、そんなに大したものではないですよ」

創業128年、京都ではまだまだベンチャー

――たしかに、京都は代々続く家業が多いですが、128年続いているのはすごいことですよね。

いえいえ、知り合いには何十代も続く家業を継いでいる方がたくさんいますから。例えば、池坊美佳さんは学生時代の同級生で、池坊さんは創業から560年くらい続いていますよね。友人の扇子屋さん・白竹堂さんはこの前300年記念をやってはりましたし、八ツ橋屋さんのように300年くらい続いているところもあります。我々なんてベンチャー。老舗や言うてたら笑われてしまいます」

――創業128年でベンチャー企業とは、京都は恐ろしいところですね。先ほど、いいお酒を造り続けるしかないとお話しされていましたが、新しく開発されたお酒やおすすめのお酒を教えていただけますか。

「昨年、新たに発売した『古都のリキュール 檸檬』と『古都のリキュール 柚子』は香料、着色料、合成保存料無添加。酒屋さんの出すリキュール日本酒ベースのものが多いのですが、日本酒は『柚子』に少し入っているだけ。『檸檬』には使っておらず、素材を生かしたリキュールに仕上げています。お酒が飲めない方におすすめしたいのは、ノンアルコールの『白い銀明水』。梅の入ったさっぱりと甘酸っぱい甘酒の飲み物で、まさに夏にぴったりです。定番の日本酒としては、『聚楽第 純米大吟醸』をおすすめします。京都の契約農家さんの山田錦というお米を使っていて、香りがよくすっきりと飲みやすいので、食前にも食中にも楽しんでいただけます。聚楽第シリーズはいろいろとあるんですが、限定品は香りに特化した繊細な味わいが多いんです。今回ご紹介した『純米大吟醸』はお米の旨味がふわっと口に広がるバランスの取れた味わいなので、お酒が得意ではない人にも試していただきたいです」

――現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、飲食店でお酒の提供ができない地域があるなど、酒造業は厳しい局面に立たされています。

ワクチンが行き渡るのが半年後になるのか、1年後になるかはわからないですけれど、お酒は人と人によるコミュニケーションツールのひとつですから、元の生活に戻れたときにはお酒を楽しんでいただきたいなと思いますね」

(撮影:深野未希/文藝春秋

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佐々木酒造株式会社

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(高本 亜紀)

佐々木蔵之介さんの実家でもある佐々木酒造