東京五輪の選手村のベッドでジャンプする――。五輪に参加しているイスラエル代表の野球選手が、動画共有アプリ「TikTok」に投稿したとみられる動画が波紋を呼んだ。すでに元の動画は削除されている。

イスラエル公共放送7月28日、ツイッターに掲載した動画には、まず1人の選手が1台のベッドの上でジャンプするところから始まる。1人ずつジャンプする人が増えて、9人が同時にジャンプしたあと、ダンボール製のベッドが壊れた様子が映っている。

報道によると、元の動画は26日に公開されたが、批判が相次いで、イスラエルの野球協会が問題視し、選手たちは謝罪したという。「ベッドの耐久性を試そうとしていた」というが、このような行為は法的に問題ないのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。

器物損壊罪に該当するが・・・

――犯罪に問われないのでしょうか?

選手村のベッドが誰のものなのか、正確なところはわかりませんが、選手からすれば「他人の物」に該当することは明らかです。

ベッドを破壊する行為が、財物の効用を害する行為であることも明らかですから、イスラエル代表の野球選手の行為は、器物損壊罪に該当します。

ただし、器物損壊罪親告罪なので、選手村のベッドの所有者にあたる人・団体が告訴しなければ、起訴されることはありません。

――選手たちは弁償しなくてよいのでしょうか?

イスラエル代表選手は、故意に他人の所有権という権利を侵害しているといえます。不法行為に基づく損害賠償責任を負うこととなります(民法709条)。したがって、法律上は、弁償しなければならないのは間違いないです。

報道によりますと、選手村のベッドを提供するエアウィーヴ社は7月20日、「木材やスチールなど、さまざまな素材で検証した結果、段ボールが最も頑丈であることがわかりました。耐久性テストの結果、200kgまでの荷重に対応できることが実証されています」とコメントを発表しています。

エアウィーヴ社にとってはいい宣伝になったかもしれませんが、今回の代表選手たちの行為は悪質といえます。

ただ、ベッドの所有者が損害賠償請求するかどうかは、少なくとも東京五輪パラリンピック開催期間中は考えにくいです。選手たちも後悔して、謝罪されていることのようですから、おそらく請求しない可能性が高いでしょう。

【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/

五輪選手村の「ベッド」を9人同時ジャンプで破壊、イスラエル選手の法的責任は?