(藤原 修平:在韓ジャーナリスト

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 東京オリンピックで、竹島が何かと騒がしい。

 五輪ホームページに掲載された聖火リレーの地図に竹島が書かれていると韓国側が騒ぎ立てていたと思ったら、今度は、韓国のテレビ局SBS」が開会式の中継で「独島」を記載した地図を表示したことが、日本で伝えられた。

 私は開会式を、そのSBSで見ていた。選手の入場が始まって間もなく、たしかイラクあたりだっただろう。薄紅で陸地を描いた世界地図が映し出されると、韓国の日本海側にズームイン。円を2つに割ったような薄青の模様が現れると、そのすぐ上に、やはり薄青で“Dok-do”(独島)と書かれているのだ。「あれ?」と思った瞬間、世界地図は入場している国に移動し、その国が字幕と写真で紹介された。

 この一件に関しては産経新聞などが報じているので、ご存知の読者もいらっしゃるだろう。

「独島」の表示はアジア諸国の紹介のときに限って行われ、すでに報じられているように、韓国はもちろん、日本の入場の際にも「独島」が表示された。

泥仕合に付き合う必要はない

 竹島の領有権問題が存在している以上、韓国メディアが地図上に「独島」を表示することは、そんなに突飛な話ではない。韓国側からすれば、「日本だって竹島を五輪ホームページに掲載しているのだから、自分たちもやってやる」と対抗するのは自然であろう。

 日本からは韓国のやり方が「姑息だ」という意見が見られる。だが、韓国との泥仕合に付き合う必要はない。

 なぜなら、国際オリンピック委員会IOC)は日本側の五輪ホームページの地図を、明確に「問題なし」としているのだ。

 韓国で開かれた平昌(ピョンチャン冬季オリンピック2018年)のときに出現した南北統一旗には、韓国の東海岸沿岸に竹島と思われる点がはっきりと見て取れ、IOCからオリンピック憲章に違反していると判断された。

 一方、今回の東京オリンピックのホームページに掲載された地図をご覧になればわかる通り、聖火リレーの地図を単に開いた状態では竹島と思われる点は確認できない。竹島のある場所を拡大していくと、5倍ぐらいにした時点でようやく、うっすらとした点が確認できる。

 これを見つけた韓国人も、たいしたものだ。わざわざ拡大しないと見つからない小さな点を見つけ出したのだ。

 私が暮らしている韓国では、「独島」は本来よりも大きく描かれるのが常である。そこに我らが独島があるのだと、主張したいのだろう。

 本来の竹島は、東島と西島の2つに分かれており、その間は300mほどしかない。両者を合わせた総面積はわずか0.2平方キロメートル程度だ。それを南北統一の国土と同じ縮尺で統一旗に描き込むこと自体に無理がある。

 参考のために、韓国人が最もよく用いる検索サイト「ネイバー」で地図検索したものをお見せしよう。このサイズであっても、肉眼で確認できるほどの点としても現れない。つまり、平昌オリンピックのときに物議を醸した統一旗の「独島」の姿は、韓国人のあまりにも膨らんだ政治的な空想、すなわち、歪曲の産物なのだ。

 それに対して、竹島が描かれた五輪ホームページの地図では、日本側に領有権主張の意図を見出すのは難しい。

 それどころか、その地図から竹島と思しき霞のようなシルエットを見出した韓国側の一連の行為は、「独島」領有権を主張する政治的意図に満ちていることを意味する。

 東京五輪ホームページの地図をめぐってIOCがどこまでを考慮したのかは不明だが、「問題なし」と判断したのは、韓国側の過剰な政治的アピールとの比較もあったと考えておくべきだろう。

 では、韓国は今回の日本を見習って、次回のオリンピックから地図のなかに「独島」を霞のように小さく描くようになるのだろうか。

 恐らくその可能性はかなり低い。そんなことをすれば、韓国が日本に屈したことを意味するからだ。なにしろ、反日愛国者として知られる誠信女子大の徐坰徳(ソギョンドク)教授は、これからはもっと派手にやると言っているのだ。

韓国メディアの「豊富な語彙力」

 今回のオリンピックで、他の国を侮辱するような韓国メディアの思慮に欠ける報道が世界を賑わせている。韓国内でも批判の声があがっているが、それは、日本以外の国に向けられたから批判されるわけで、日本に対してであれば称賛の声が上がる。

 韓国メディアの開会式の中継では、こんな場面があった。

 開会式の冒頭、女性がランニングマシンで黙々と走っている場面があったのをご記憶だろう。そのとき、SBSの男性アナウンサーは「まるでホームショッピングのようですね」と茶化していた。相方の女性アナウンサーは一瞬躊躇したものの、「あ、はい」と笑いを含みながら答えていた。

 その女性は、看護師として働きながらボクサーとしてオリンピックを目指していたアスリートである。オリンピック出場の夢は、コロナの影響で世界最終予選が中止になって絶たれてしまったが、彼女はそれでも黙々とトレーニングに励んでいる。医療現場とスポーツの世界で戦うアスリートの代表として彼女はあの舞台に登場したのだ。

 そんなアスリートを嘲笑したこのアナウンサーの豊富な語彙力は、他の場面でも発揮されているが、いちいち挙げ連ねる気にならない。それにしても、韓国メディアにはずいぶんと豊富な語彙を誇る人たちがいるものだと、感心するばかりだ。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  想定内だけどやはり辛辣、韓国メディアが五輪開会式を酷評・嘲笑

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東京オリンピック開会式の様子(2021年7月23日、写真:PA Images/アフロ)