北朝鮮は4月、体育省が運営するウェブサイトを通じ、「悪性ウイルス感染症新型コロナウイルス)による世界的な保健危機状況から選手たちを保護するため」として、東京五輪パラリンピックへの不参加を表明した。国際オリンピック委員会加盟国としては、唯一の不参加だ。

また、五輪開幕後の25日には対外宣伝メディアの「黎明」が、日本政府が東京五輪を「帝国主義の復活に利用している」と非難する談話を公開。多難な中でも各国の代表が久しぶりに集った祭典から、ひとり距離を置いている。

しかし国民はと言うと、決して関心がないわけではないようだ。実際、一部の人々は海外情報に触れたら厳罰を下すとする国家の禁を破り、五輪に熱い視線を注いでいる。

米政府系のラジオフリーアジアRFA) によると、北朝鮮から海外に派遣された労働者や貿易機関の駐在員たちの中には、五輪のテレビ中継に夢中になっている人々が少なくない。中国・瀋陽の事情通がRFAに語ったところでは、長く取引をしてきた北朝鮮の貿易関係者たちが、「毎朝出勤でもするように、私の会社を訪ねてくる。彼らは『今後のビジネスについて話し合おう』と言っているが、本当は五輪のテレビ中継を見たくて来ているようだ」という。

五輪に夢中になっているのは、貿易関係者だけではない。丹東に住む中国朝鮮族の事情通によれば、中国企業に雇われた北朝鮮の労働者たちも、スマートフォンなどで五輪のテレビ中継を視聴している。それも、特定の国や競技だけに関心があるのではなく、「可能な限り多くの競技を漏らさず見たがっている」とのことだ。

あまりに熱心に見ているので、雇い主が作業場にテレビを設置した例もあるほどだという。

彼らはどうして、そこまで熱心に五輪中継を視聴するのだろうか。

ひとつには、北朝鮮スポーツが盛んな国であり、ハイレベルな競技に惹かれる素地があるのではないか。日韓中露など周辺のスポーツ強国との比較では見劣りしても、世界的に見れば、北朝鮮も五輪で堂々たる実績を上げてきた。

もうひとつは、やはり海外にいることによる解放感のせいだと思われる。

北朝鮮国内では、海外情報の流入を取り締まる法制度が強化され、違反者には死刑や懲役などの重罰が下されている。「見たいものを見る自由」は、海外にいてこそ享受できる。

北朝鮮の海外駐在員や派遣労働者らは、期間限定のささやかな幸福を、五輪選手らの熱戦が提供する興奮の中で、噛み締めているのではないだろうか。

レスリング世界選手権で金メダルを獲得した北朝鮮女子フリースタイル53㎏級のパク・ヨンミ(2019年9月20日付朝鮮中央通信)