ここ数年、世界は記録的な熱波に見舞われている。今年6月以降、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州では50度近い記録的な猛暑が観測され、480人以上の人が突然死している。
だが暑いのは地上だけではなく水中も同様だ。この時期のコロンビア川には、産卵のためにサケが海から里帰りしてくるのだが、その体に異変が起きている。
非営利団体「コロンビア・リバーキーパー(Columbia Riverkeeper)」が公開した動画には、真っ赤な傷口や、菌類に感染して白くなった病変など、痛々しいサケたちの姿が映し出されている。
その原因は水温の上昇とそれによるストレスであるという。
体の異変が確認されたのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州およびアメリカ合衆国太平洋岸北西部を流れる、コロンビア川に里帰りしていた「ベニザケ」の仲間だ。
コロンビア・リバーキーパーの代表ブレット・ヴァンデンヒューベル氏によると、サケは予想外にもコロンビア川の支流であるリトル・ホワイト・サーモン川にコースを変更していたのだという。それもこれも暑さから逃れるためだ。
この日、水温はサケが長時間活動するには危険な21度にも達していた。人間でたとえるなら、38度の中でフルマラソンを走るようなものなのだという。
人間ならば、あえてそのような炎天下でマラソンをする必要などないが、卵を産まねばならないサケの場合、意地でもやるか、そのまま死ぬかの二択しかない。
Salmon Dying from Hot Water: July 16, 2021
病気とストレスで、産卵できずに命を落とすサケ
撮影されたサケは病気と熱のストレスでおそらく産卵はできず、死んでしまうだろうと予測されている。 実際、撮影から数日後にヴァンデンヒューベル氏が近隣を調べてみると、ほかの支流でも同じように苦しむサケが確認でき、下流で死んでいるものも見つかったそうだ。
熱により命を失ったコロンビア川のベニサケ / image credit: Conrad Gowell/Courtesy of Columbia Riverkeeper
熱波にダムの建設が加わり、水温上昇を加速させた可能性
今回のサケの異変は、熱波だけによって引き起こされたわけではないという。ヴァンデンヒューベル氏によると、ここ数十年で川にいくつものダムが建設されて水の量が減少したことで、水温の上昇に加速をかけたようだ。最終的にどのくらいのサケが犠牲になるのか、今の時点ではっきり予測することはできない。
しかし今後2か月にわたってさらに熱い日が続くだろうことを考えると、今以上の魚が死んだとしてもおかしくはないそうだ。
水温の上昇で体に異変をきたしたサケ / image credit:: Conrad Gowell/Courtesy of Columbia Riverkeeper
気候変動による海洋生物の危機
付近にはベニザケがほぼ絶滅してしまっている川もある。そうした川では、ほんの少しサケが死んだだけでも、甚大な影響をもたらすことになるという。なお、このサケは最近起きている大量死の1事例でしかないそうだ。太平洋北西部やカナダでは、熱波によって10億以上もの海洋生物が死んでいるとのことだ。
References:Video shows salmon injured by unlivable water temperatures after heatwave | Climate crisis in the American west | The Guardian / written by hiroching / edited by parumo
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