正直心配だったんです。
2月22・23日にさいたまスーパーアリーナで行われた『THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2014』
まもなく9年目に突入する『アイドルマスター』のライブとしては史上最大級。
大喜びしていいはずなのに不安だった。特殊なシチュエーションのライブだったから。
そして実際見に行って、安心し、喜び、理解しました。
このライブは『アイドルマスター』(以下アイマス)というコンテンツの門を、大きく開けるための、儀式だったんだ。

●不思議なコンテンツ、アイドルマスター
現在「アイドルマスター」の名を冠しているアイドル育成ゲームは細分化されており、大変複雑です。
主だった世界観を簡単にまとめます。
(アニメやマンガなどのメディアミックスを含めると、もっと細かく、たくさんあります)

アイドルマスター(以下、本家アイマス):アーケード版、360・PS3版PSP版の、765プロのヒロインたちを軸としたゲームで、それぞれのキャラクターをトップアイドルに育成していくのがメイン。登場キャラは同じだが、初代と2とPSP版のつながりは厳密にはない。アニメ版は『アイドルマスター2』準拠の設定。

アイドルマスターディアリースターズ(以下、アイマスDS):プラットホームはDS。アイマスASと似た世界線だが、時間軸はつながっていない。876プロという別のプロダクションで活躍する3人の物語を描いている。アニメ版でも登場。

アイドルマスターシンデレラガールズ(以下、シンデレラガールズ):モバゲー配信。150人以上のアイドルを各地でスカウトしていく。本家アイマスはその一人という設定で、765プロは「出身」という扱い。プロダクションは無数に存在している。PSP版『シャイニーフェスタ』で少しだけゲスト登場。

アイドルマスターミリオンライブ!(以下、ミリオンライブ):GREE配信。50人固定の「765シアター」を大きくするのが目的で、本家アイマスはそのシアターの一員という設定で、全員が同期。765プロは存在しない。アニメ劇場版に数人登場するが、ミリオンライブ本来の世界観とは別のゲスト参加。

本家アイマスと、シンデレラガールズと、ミリオンライブは、完全にパラレルワールド
たとえるならば、『ドラえもん』と『ドラベース』くらい違います。
メインヒロイン天海春香はそれぞれに登場はする。人格は変わらない。でもどこでアイドルやっているかなどが、一切繋がらない。
アメコミスターシステムや、手塚治虫マンガのヒゲオヤジみたいなものなのです。

この4つが一つのライブに出た。
8周年ライブやシークレットライブではゲスト的に一応絡んでいますが、完全に「同列」のキャラクターとして並んだのは初。
それって成立するのだろうか?

●壁を壊す儀式
アイマス本家を知っている人で、シンデレラガールズミリオンライブを知らない人はいるはず。
シンデレラガールズは知っていてもミリオンライブは知らない、またはその逆も多いはず。
それぞれが小さくガラパゴス化して独自の発展している上に、上記の通りそもそも世界観が噛み合っていない。
ただ集めてライブをやるだけでは、普通はうまくいかない。

これをぶち破りました。

演出としてうまかったのは、本家アイマスシンデレラガールズミリオンライブから代表がそれぞれチョイスされて、数人で一緒に歌う曲が非常に多かったこと。
しかも歌っているのは、10年近い本家アイマスの中で親しまれてきた有名な曲ばかり。
アニメ版でも使われた曲なので、ここはみんなの共通項です。

ぼくにとっては悲願だったんだよ。
アイマス本家も好きだし、シンデレラガールズも好きだし、ミリオンライブも好き。
でもそれぞれ交じり合わない話だから、それぞれのキャラの魅力や世界観を伝えづらい。腫れ物に触るように話題にしづらかった。
一部ゲームや映画でゲスト出演していますが、やっぱりそれが限界。ゲームやアニメだけではパラレルなものは、どこかひねらないと一緒にしようがない。

それが、現実世界のライブでならば、一つにできる。
アイドルマスター』というコンテンツが、バラバラになって狭い枠で閉じてしまうのはもったいない。
横に大きく広がり、新規の人に間口を開、さらに次のステップに進むためにどうすればいいのか。
それが、さいたまスーパーアリーナデイズ満席という大舞台で、境界線を目に見える形で壊すことだったのです。

もっとも印象的だったのが、本家アイマスシンデレラガールズミリオンライブが次から次へと入れ替わり、最後にもう一度、本家アイマス組の水瀬伊織を演じる釘宮理恵バトンを戻すシーン。
割れんばかりの声援が飛び交い続けていた会場が、水を打ったように静寂に包まれました。
次世代に引き渡したわけじゃあない。すべてが同列につながったことを示す演出でした。

二日目の23日には、アイマスDS日高愛役の戸松遥がサプライズ出演。
天海春香日高愛島村卯月春日未来。それぞれのメインヒロインを演じる声優が一列に並んだ瞬間、こみ上げてしまったファンはぼくだけじゃないはず。
また登場こそしませんでしたが、『アイマス2』に出てきた別の男性ユニット「JUPITER」の曲をアイマス声優が歌うシーンもありました。開演諸注意では派生作品『ぷちます!』のキャラクターも登場しました。
そうだよ、それぞれで好きとか嫌いとか、どれが優れてるとかじゃなくて、全部好きでいいんだよ。

ロールプレイの面白さ
アイドルマスター』のライブは、正式にはただのライブではありません。
成長お披露目会のロールプレイです。

まず、アイドルマスターキャラクターを演じる声優は、「成長したアイドルキャラクター」として登壇します。
次にファンは「アイドルのプロデューサー」として、その成長を見に来ます。
なので隣の席のファンは同僚ということになります。

今までのライブは基本、本家アイマスのプロデューサー同僚でした。
しかし今回は「シンデレラガールズ」「ミリオンライブ」のプロデューサーも多い。無論、兼任も。
そのプロデューサー同僚間の壁をやぶった儀式でもありました。

ぼくがアイマスを面白いなあと感じ続けているのは、ファンが一丸となってコンテンツを支えようとしている部分です。
そもそも、同じアイマスとはいえそれぞれのゲームを知らないと、曲がわからないもの。
ところが、シンデレラガールズのプロデューサー達はその曲をみんなと盛り上がれるよう応援する。ミリオンライブのプロデューサー達は同様に一体感を出すため頑張っている。
サイリウムの色、わからなくても一斉に揃う。歌知らなくても、みんなコール(合いの手)を入れる。
そのための有志によるコール解説が、WEBで作成されています。
声優たちのみならず、ファンがマナーを守りながら、周りの人と一体になろうとしている。
そここそが、今回のアイマスライブの一番の見どころでした。
帰り際に口々に、「お疲れ様でした!」っていうんだよ。まさに同僚。

ジュリアの「流星群」、双葉杏の「あんずのうた」など……全く違う作品だけど、演出とファンのパワーで一体になったあの感覚、ぼくは忘れないよ。


ぼくの不安は全部吹き飛びました。
これからPS3版の『アイドルマスター ワンフォーオール』も出ますし、PS4でも新作が投入されます。『SideM』という男性アイドルを育てるソーシャルゲームの新展開もあります。
細分化してどうなっていくのか見えなかった。しかし、今回のライブで、バトン並行世界で受け渡され、つながりました。
なにより、ファンが強くつながった。随所から「アニメしか見てなかったけどゲームやろう」「シンデレラガールズだけじゃなくてミリオンライブやってみるわー」という声が聞こえたのは嬉しかった。本当に嬉しかった。

興味はあるけど敷居が高くて……という人へ。
大丈夫です。
どこから入っても、これからは一つにつながれる土壌が、誕生しましたから。

それにしても、二日間とも5時間ぶっ通し、50曲以上のライブは、なかなかエクストリームでした。
腰がいたいので週休8日を希望します。

(たまごまご)

2月22・23日に、五時間ずつ行われた、さいたまスーパーアリーナの『アイドルマスター』のライブは、ちょっと特別。何が特別だったのか?