コナミデジタルエンタテインメント7月21日、『Winning Eleven』シリーズの最新作『eFootball』を、今秋にリリースすると発表した。

 この日で誕生から26周年を迎えた同シリーズ。ブランド名の一新は、プレイヤーにどのような体験をもたらすのだろうか。『Winning Eleven』シリーズのブランド名変更からは、最近話題を呼んだ3タイトル『Virtua Fighter esports』『Pokemon UNITE』『遊戯王マスターデュエル』との共通点が見えてきた。

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・定番サッカーゲームウイニングイレブン』が『eFootball』として再出発

 『Winning Eleven』(以下、『ウイニングイレブン』)は、コナミデジタルエンタテインメントが開発・発売するサッカーゲームシリーズだ。1995年に第1作『Jリーグ実況ウイニングイレブン』が登場して以降、さまざまなプラットフォームをまたいで多数の作品が発表されている。サッカーゲームとしては、米・Electronic Artsエレクトロニック・アーツ)の『FIFA』シリーズと人気を二分する。言わずと知れた定番のスポーツタイトルである。

 今回リリースが発表された『eFootball』は、シリーズの最新作と位置づけられた作品。タイトル名から「ウイニングイレブン」の表記を取り去り、新たなブランドとして再出発となる。ゲームカルチャーを巡っては、シリーズが26年の歳月を経るなかで、主流のプレイフィールドがローカルからオンラインに移り変わりつつある。そうした昨今の事情を踏まえた結果が、ブランド名の一新、eスポーツ特化への路線変更だったのだろう。

 PlayStation5PlayStation4Xbox Series X|SXbox OneWindows 10、Steam、モバイル(Android/iOS)が対応プラットフォームとなる予定で、基本プレイは無料。パッケージとして販売されることが多かった過去のシリーズ作品とは、この点でも異なった性質を持つ。「大きく進化した」とアナウンスされているゲームプレイの詳細については、8月下旬に詳しい情報が解禁となる予定だ。

・盛り上がるeスポーツ界隈。話題を呼ぶ“フリープレイ”タイトルたち

 ゲームの分野では近ごろ、パッケージやアーケードなどで有料展開されていたIPが無料コンテンツ化され、eスポーツ路線へと舵を切る例が増えている。数年前から少しずつ浸透を見せてきた「eスポーツ」の文化は、最近になってまた新しいステージを迎えつつあるようだ。この項では、直近に界隈の話題を呼んだ、もしくは近い将来、話題を呼ぶことになるであろう3タイトルをピックアップする。

eスポーツに特化し、基本プレイ無料で登場した『バーチャファイター』シリーズ最新作

 『Virtua Fighter esportsバーチャファイター イースポーツ)』は、2010年発表の前作『Virtua Fighter 5 Final Showdown』をリメイクし、eスポーツへと特化させた、『バーチャファイター』シリーズの最新作だ。昨年9月にプロジェクトの始動がアナウンスされ、今年6月1日より基本プレイ無料(※)のタイトルとしてサービス開始となった。

 シューティングアクションに代表される他のジャンルにおいては、『Fortnite』や『Apex Legends』など、家庭用プラットフォーム向けでも無料で展開されるコンテンツが増えてきている。しかし、対戦格闘のジャンルに限っては、90年代(パッケージ販売や、アーケードにおけるプレイごとの課金が当たり前だった)をルーツとする作品・シリーズが多い点も影響してか、前例がまだ少ない。現状、競技シーンを盛り上げているのは、基本プレイ無料のタイトルがほとんどだ。『Virtua Fighter esports』は、半ば慣例的に続いてきた同ジャンルのあり方に一石を投じた。

 去る7月18日には、開発・発売元であるセガ主催の公式大会『VIRTUA FIGHTER esports PRE SEASON MATCH』も開催に。イベント名に「プレシーズンマッチ」とあることからわかるとおり、今後この催しは『VIRTUA FIGHTER esports CHALLENGE CUP SEASON_0』へとつながっていく。同タイトルのフリープレイでのリリースは、対戦格闘がeスポーツ競技として浸透・台頭するにあたり、さまざまな意味を持っていくのかもしれない。

※今後は有料化を予定。無料提供期間は、PlayStation Plus加入者が2021年8月2日まで、PlayStation Now加入者が終了日未定となっている。

・『ポケモンユナイト』は、シリーズ無二の競技性の高さでeスポーツ化を見据える

 まさにいま話題沸騰中の『Pokemon UNITE』(以下、『ポケモンユナイト』)も、eスポーツシーンへの定着を見据え、基本プレイ無料で展開されているタイトルのひとつだ。もはや説明するまでもない人気IPとなった『ポケットモンスター』の最新スピンオフは、シリーズの世界観にMOBA(※)の特性を組み込んだ、競技性の高い仕様を特徴としている。

 これまで同シリーズからはさまざまな作品が誕生してきたが、「競技性」と「基本プレイ無料」を主軸として両立するタイトルは一部しかなく、あってもモバイル・ブラウザのみを対象としたものばかりだった。特に家庭用プラットフォームでは、「有料のパッケージ販売が前提」となっていた事実がある。

 この点において、『ポケモンユナイト』は、“異質”のシリーズタイトルと考えられる。日本発らしい課題(詳しくは過去に私が書いたコラムを参照)はあるが、ある程度のプレイ人口が維持できれば、同タイトルのeスポーツ大会が開催されていくのはまず間違いない。

 今後は9月にモバイル版のサービス開始を控えているほか、マルチプラットフォームでのローンチにともなうクロスプレイの実装もすでに告知(時期は未定)されている。熱狂はしばらく続きそうだ。

Multiplayer Online Battle Arenaマルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)の略。特定のステージを舞台に、複数のプレイヤーがチームとして協力し、おなじくプレイヤーで構成された相手チームと対戦するジャンル。多くの場合、ステージにいくつか存在する各チームの拠点をめぐり、攻防が繰り広げられていく。

・満を持して発表された公式発のデジタルTCG遊戯王マスターデュエル

 国産トレーディングカードゲームの王道『遊戯王』シリーズからは、『遊戯王OCGTCG』をデジタルで完全再現した『遊戯王マスターデュエル』が登場する。リリース時期はまだ未定だが、家庭用プラットフォームなど(PlayStation5PlayStation4Xbox Series X|SXbox OneNintendo Switch、PC(Steam)、Android/iOS)を対象に、基本プレイ無料で展開される予定だ。

 7月20日に解禁された最新情報によると、シリーズのデジタルゲームとしては初めて4K解像度に対応するほか、現行機のスペックを生かした演出も随所に盛り込まれるという。これまでリリースしてきた各派生タイトルは「キャラクターゲーム」として、『遊戯王マスターデュエル』はトレーディングカードゲームそのものを楽しむ「本格派」として差別化を図っていく構えだ。将来的には同タイトルの活用を軸に、新しいレギュレーションの大会を開催する計画があることもアナウンスされた。世界大会「Yu-Gi-Oh! World Championship」正式種目への採用も目指すという。

 『遊戯王OCGTCG』を巡ってはこれまで、デジタルで完全再現されている公式発のタイトルが存在せず、一部有志が開発した非公式のソフトが、フリークのあいだで定着していた背景があった。アナログとデジタルのあいだに致命的な乖離があったトレーディングカードゲームの王道は、『遊戯王マスターデュエル』を通じて、正式にeスポーツ化へと乗り出していくのだろう。

 このようにあらゆるジャンルで進む、基本プレイ無料・eスポーツ化の流れ。今後は、さらに多くのタイトル・ジャンルがこれらに追随していくものと予測される。2022年は真の意味での“eスポーツ元年”となるか。定着の夜明け前、その胎動は日に日に強まりつつある。(結木千尋)

『eFootball』公式HPより