こんにちは、ファイナンシャルプランナーの高橋成壽です。7月はボーナスが支給された人も多かったのではないでしょうか。職種によってはボーナスが激減した人もいるようです。公務員ボーナスも久しぶりに引き下げられたりと、世の中の景気を反映しているのがボーナス事情と言えます。

起業家 ビジネス
※画像はイメージです(以下同じ)
 さて、前回の「芸能人の不安定なお金事情」についての記事をきっかけにさっそく相談が届きました。今回は「bizSPA!フレッシュ」読者からの相談に答える形でお金の話をいたします!

Q:「独立したときのポイントは?」

20代・男性・会社員

会社員ですが、独立を考えています。独立した時に注意すべきお金のことや、税金のことを調べてもよくわからない。友人は『独立したら税金が高くてびっくりした』『老後の年金が減る』など言っていて心配です。ポイントを教えてもらえますか?」

高橋の回答:「大変なのは“1人で全部”やること」

若手会社員

 会社員の方が独立したいということですが、なぜ独立したいのか、理由が知りたいですね。独立がフリーランスになることなのか、起業するのかも詳しく聞きたいところです。

 独立時のお金のことや税金のことを「調べてもわからない」というのは、正直とても心配です。なぜなら、今やほとんどのことはネットを調べると出てきます。調べても理解できないということですと、この先わからないことだらけだと思うので、今のうちに本を買って読んだり、ネットで調べて理解する方法を身につけたり、準備が必要でしょう。独立してから「知らなかった」では済まないことがたくさんあります。

 会社員時代は会社のスタッフ部門である総務、人事、経理、法務などに社内業務を丸投げできます。つまり、営業部門や技術部門の人たちは主要業務以外を社内外注することができます。しかし、独立してからは1人で、事業計画、資金調達、営業先開拓、受発注管理、入金と出金の管理、決算、社会保険、人員配置など、あらゆることをこなす必要があります

「1人で全部やる」ということがとても大変です。できない場合は、「お金を払って解決する」ことになるのです。わかりやすいところでは、税理士、社会保険労務士への依頼です。会社をつくるなら、司法書士に依頼することになります。独立当初は資金繰りも厳しいとなると、ひと通り自分でやる、となるでしょう。

個人事業主は所得税をまとめて支払う

税金

 勤め人の時は給料から税金が天引きされる「源泉徴収制度」が適用されています。それが、個人事業になると、申告納税制度といって確定申告を通じて、1年分の所得税をまとめて後払いする制度に変わります。そのため、所得税や住民税を毎月分割で支払っているときよりも、税金が増えたように感じる可能性があります。

 また、所得税が天引きされない場合、手取りが増えたように錯覚することもあり得ます。確定申告をして初めて、税金の多さに驚いたり、住民税の支払いが届くことになり、税金が高いと感じるようになります。

 個人事業主の場合は、個人の税率が高いから法人にして節税する流れが一般的で、これを「法人成り(ほうじんなり)」といいます。ですから、通常は税金を減らすための工夫として独立したり、法人を作ったりするわけです。

 今回のご友人がどのような場面で税金が高いと思ったかわかりませんが、もしかすると納税の仕組みが給与所得から、事業所得に変わったことを知らなかった可能性があります。独立すると税金が少なくなるよう、経費を使っていくことが多いので、かなり利益が上がらないと税金が増えることにはつながらないのです。一度、税金が多いと感じると、税金を減らす方向に力を入れる人が多い印象です。

税に対してアンテナが立つようになった?

 税金が多いということが、消費税のことを指しているのだとすると、売上がそれなりに増えてからの悩みとなります。税金が増えるということは売上や利益も増えているということであり、歓迎すべきことと考えます。

 フリーランスになり、今までの仕事を外注価格で受けるようになると、会社員時代の給料より売上は上がるかもしれません。しかし、個人事業の場合は売上から経費と税金を払ったあとで給料に相当するお金が残ります会社員時代は気にもならなかった税金が高いと感じるようになったのは、税金に意識が向くようになったことの現れかもしれません。税に対してアンテナが立つようになったということでプラスに捉えるといいでしょう。

 余談ですが、独立すると税金を減らすために不要不急の経費を増やし、税金を減らす人が多いです。しかし、経費を過剰に計上すると実質的な収入である所得を減らすことに繋がります。所得が減ると住宅ローンが借りづらく、あるいは借りられなくなります。独立前に家を買うというのは、1つの戦略です。しかし、売上が立たなくてはせっかくのマイホームを売却することにつながりますので、独立後に売上が立つのか確認が必要でしょう。

 なお、個人事業主が所得税を減らす方法としては、青色申告の届出を済ませかつ経理書類を整えることで青色申告特別控除という節税枠を使うことができます。また、家族に仕事を手伝ってもらい給料を支払えば、青色事業専従者給与という経費枠が与えられ、節税効果があります。

独立すると年金が減る?

 フリーランスや自営業として独立すると、社会保険厚生年金保険から国民年金保険に変わります。すると、老後の年金額が減少します。

 個人事業主の場合は、小規模企業共済、国民年金基金、iDeCoなど税金を減らしながら老後の準備ができる仕組みが整っています。それぞれメリットが異なりますので、収入にゆとりができたら検討すると良いでしょう。

 個人事業主の公的年金は、仕送り方式の国民年金しかありません。他の仕組みは自分のための積み立てですので、会社員時代より納付意識は高まるでしょう。

独立前にやるべき「事業計画」の立て方

経営者

 まずは、売上がどの程度見込まれるか。事業計画を考えるべきでしょう。今までの仕事の延長線上での独立であれば、営業に苦労することは無いかもしれません。その場合は即独立するのもアリでしょう。個人事業なのか、法人として独立するのかも含めて検討が必要です。

 業種によっては、従業員として働いてもらうよりも、独立してフリーランスになって仕事を外注したほうが、社会保険料の負担や労災保険料の負担が減るため、歓迎する会社もあります。一方で、新規事業で独立を検討する場合は、副業からスタートすることを勧めます。理由は、仕事が獲得できるかどうかわからないからです。いい商材があるからといって売れるかどうかはわかりません。仕事の獲得を左右するのは経験であったり、今までの付き合いであったりします。

 経験ゼロから売上を作っていくのは、相当の労力が必要です。もし、広告費を使おうと考えているのであれば、会社員時代に売れるかどうか検証しておくべきでしょう。

 筆者も独立や法人成りの相談を受ける機会がそれなりにあります。安定しているのは、従来業務の延長で独立する場合です。相談者の方も、いきなり独立せず、まずはじっくり事業を検討してはいかがでしょう。

 最後に、独立すると会社員時代と異なり、いざというときの責任は自分でとる必要があります。仕事のミスで損害を与えてしまった場合など、守ってくれる会社がありません。自由と引き換えの責任を天秤にかけてみるのも、独立への準備と言えるでしょう。

=====

 独立すると税金が増えるは、正しい場合もあるし、正しくない場合もあります。まずは所得税制、法人税制を調べる必要がありそうです。年金は独立すると減るのは個人事業の場合です。法人化して会社から役員報酬を得る場合には勤め人時代と同じ社会保険となりますので、年金が減ることはありません。

TEXTファイナンシャルプランナー 高橋成壽>

【高橋成壽】

1978年生まれ、小学4年時に株式投資に興味をもち、大学在学中に株式投資を始める。慶應義塾大学を卒業後、金融系のキャリアを経てファイナンシャルプランナー事務所を設立。シングルマザーから上場企業の創業者まで幅広い顧客層が特徴。有料のFP相談の他、無料の専門家マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」他を運営。東海大学非常勤講師。連載:SankeiBiz、会社四季報オンラインYahoo!個人。著書『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』(廣済堂出版) Twitter:@fpooji