―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―


◆世界初の自動運転「レベル3」は、どこか窮屈で不自由だった!

 完全自動運転のクルマと言えば、中高年は「ナイト2000」を思い浮かべるかもしれません。若者のために解説すると’80年代にTV放送された『ナイトライダー』に登場するクルマで、最大の特徴は人工知能を搭載し、自分で考えて言葉を話し、自らの意思で走行できること。完全自動運転のクルマは、そんなドリームカーであってほしいのです!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆完全自動運転への道は果てしなく遠い……

 大手メディアは、「自動車産業は100年に一度の大変革期」と囃し立てる。その主眼は電動化と自動運転だが、ユーザーは、どっちもあんまり望んでいない。不便で値段の高いEVに乗りたい人はまだごく一部だし、自動運転への渇望もほとんどない。ユーザーが望まない進歩が待望されているという、かなり不思議な状況だ。

 自動運転への欲求の低さの第一因は「不安」にある。「本当にまかせて大丈夫なのか?」って。

 いまや、前車追従機能付きクルーズコントロールACC)の付いていない新車のほうが少ないくらいだけど、これはすでに自動運転のレベル1に当たる。でも、それを使いこなすのは、フツーに自分で運転するよりも難しい。なぜならドライバーには、キカイの限界を見極めて、ダメだと思ったらすぐに運転を引き継ぐ能力が求められるから! 一部をキカイに任せるのはかえって疲れるしコワイ。なら全部自分で運転したほうがラク。そういうことになる。

◆世界初の自動運転レベル3

 そんな感じでユーザー側は冷めているのだが、メーカー側の意欲はアツい。電動化同様、「自動運転を制する者は自動車業界を制する」と信じられているからだ。そしてこのたびホンダは、世界初の自動運転レベル3を実現する「ホンダセンシングエリート」を搭載したレジェンドを、100台限定でリース販売するに至った。なんであれ、世界初なのだから快挙に違いない。これぞ大勝利

 使い方は非常にカンタンだ。自動車専用道路を走行中に、ハンドル右側のメインスイッチをONにし、セットボタンを押すだけ。こうしてACCをONの状態で走行中、一定の条件をクリアすると、ハンズオフ(手放し)運転機能が勝手にONになり、さらにその状態で時速30㎞以下の渋滞に遭遇すると、勝手に自動運転レベル3がONになる。そうすると、アクセルブレーキハンドルの操作をすべてクルマまかせにして、DVDスマホを見たりすることができる(はず)。

 というわけで、渋滞を求めてレッツゴー! カモン渋滞!

◆渋滞でワクワクしながらACCをON!

 たまたまた近所の首都高4号線下りに渋滞をハッケンしたので、ワクワクしながらACCをONの状態で突入セリ! いつ入るんだ? 自動運転レベル3よ!

 あれ? 前段階のハンズオフにもなかなか入らないな……。首都高の都心部(C1)はカーブが多すぎるので使えないらしいが、4号線はほぼ直線だ。何が足りないの? なぜなんだー!と叫んでも、レジェンドは原因を教えてはくれない。

 そうこうするうちにクルマ首都高を出て、中央道に入ってしまった。まもなく渋滞も終わる。ああ、不発に終わるのかオレの自動運転体験よ。

 と思ったとき、突如「ハンズオフ」運転が勝手にONになり、間もなく「渋滞運転(つまり自動運転)」も勝手にONになった! やった~~! しかし、「やった!やった!」とついコーフンし、ガッツポーズやピースをしていたら、「ポン」と音が鳴って自動運転は解除された。

 その後何度か繰り返したが、どうやらはしゃぎすぎると解除されるらしい。ついでにマスクも苦手っぽい。



◆常にドライバーカメラで監視

 レジェンドは常にドライバーカメラで監視し、ちゃんと前を見ているか目線までしっかり確認して、ようやく自動運転をONにしてくれる。ONになればテレビスマホは見てもいいのだが、目をそらしすぎたり羽目を外すとダメだったのだ!

 確かにテスラ車では、ドライバーが運転席から隣に移動して、無人状態で事故ったりした前例もある。悪ふざけNGも当然だろう。でも窮屈だな……。ONになるのも厳しいテストにパスしないとイカンし、ONになっても品行方正が求められる。正直、ここまで監視されにゃアカン自動運転はかえって疲れる!

 今後自動運転がどのように進化するかはわからないが。ユーザーが望む自動運転はこういう不自由なものではなく、完全なクルマ丸投げだ。道はまだ果てしなく遠い。

◆【結論!】

 この「ホンダセンシングエリート」を搭載したレジェンド、お値段は1100万円と、通常のレジェンドより375万円高く、リースのみ。執筆時点では、まだちょっとだけ売れ残ってるとのことでした。欲しければ急げ!








【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―


実際に走らせてみると、レベル3の自動運転が発動するシーンにはなかなか遭遇せず。ボタンを押せば、すぐにレベル3の自動運転になるというわけではない。レベル3の発動は、パチンコで確変を引く感じでしょうか