―[貧困東大生・布施川天馬]―


 現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。

◆なぜ「夏は受験の天王山」と言われるのか?

 皆さんは「夏は受験の天王山」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 

 これは夏休みをうまく使った人は受験で絶対に成功するという意味の言葉です。学校の先生なども口を酸っぱくして「夏休みに気をつけろ」という方が非常に多いかと思います。

 夏休みといえば、現役受験生たちにとって最初の「学校に縛られないで勉強することができる長期休み」。だから、大きく差がついてしまうのですね。

 さて、そんな夏休みから秋、冬にかけて、絶対にやってはいけないことが一つだけあります。まず間違いなくその受験生は合格を逃してしまうだろうという落とし穴が存在するのです。

◆「志望校のレベルを下げよう」は絶対にNG

 しかも、これは親御さんから受験生本人に「よかれと思って」やっているケースが非常に多いように思います。保護者の方の気遣いが、逆に足を引っ張ってしまう場合があるのです!

 その落とし穴とは「志望校のレベルを下げよう」と受験生本人に伝えてしまうことです。

「我が子が受験に失敗しないように」という親としての気遣いが、逆に子どもの足を大きく引っ張ってしまう! そんな恐ろしいことはありませんよね。

 今日は「どうして志望校のレベルを下げてはいけないのか」ということについて2つの理由でご説明します。

◆理由1「モチベーションが下がる」

 まず、一番多くみられる理由は、「モチベーションの低下」です。お子さん自身の「そこに行きたい!」という気持ちが薄れてしまい、勉強が手につかなくなってしまいます。

 そもそも、第一志望校とは、子どもが「ここに行きたい!」と強く思ったからこそ、その大学(高校)を第一志望に据えるのです。「行けるかどうか」ではなく、「モチベーションがあるかどうか」というやる気重視で選びます。

 長い受験戦争を走り抜けるために一番大事なのは「やる気」です。これを絶やしてしまった人は、どれだけ優秀でもみんな残念な結果に終わっています。

◆現時点で「絶望的」でも諦める必要はない

 実際、僕の学校では「行けるかどうか」はまったく問題とせず、「行きたいかどうか」で選ぶように指導されました。ですから、僕は、その時点の学力では絶望的だったものの「東大に行きたい!」と強く思い、東大を第一志望としました。

 当時の僕の学力レベルで現役合格を狙ったならば、おそらく第一志望は早慶かMARCHに落ち着いたでしょう。

 しかし、早慶やMARCHよりも「東大に行きたい!」と強く思ったので、東大にしたのです。実際、このおかげで辛く長い受験勉強もやる気を絶やさずに走り抜けることができました。やる気が出たからこそ、受験で勝つことができたのです。

「今の実力では志望校に合格できないから、一夜漬けならぬ『一年漬け』で勉強を頑張る」というのが受験勉強の本当の姿だといえます。何もしないで合格できるなら、苦しい受験勉強なんて誰も1秒もしませんよね。

 だからこそ「今のレベルで狙える学校か」で第一志望を決めるのは、本当にまったく意味がないことなのです。

◆理由2「受験対策が大変になる」

 2つ目の理由は「志望校の対策が大変になる」ということです。これは特に夏以降、秋、冬と受験本番が近づけば近づくほどに深刻な問題になります。

 どんな学校でも、入試問題にはある程度のクセがあります。たとえば、東大の英語は試験開始45分経過時点で30分のリスニングテストが行われるなど、毎年必ずある程度決まった順番で、決まった形式の問題が出ます。

 一見すると、嫌になりそうですが、このおかげで受験生は対策を立てることができるようになります。

「過去10年間、ずっと出題されている問題ジャンルだから、来年もきっと出題されるだろう」というように、過去問から来年のテストの内容を予測して練習します。

 これが俗にいう「過去問演習」です。この過去問演習は受験勉強の中でも非常に重要で、どれだけ過去問を解いたかどうかが、そのまま合否に直結します。

 しかし、志望校を一度変えると、それまでやってきた過去問演習がすべて無駄になってしまいます。新しく志望校にした学校の出題傾向を確認して、対策を練って……とするのは非常に時間がかかります。

「1つ下のレベルに下げれば余裕だろう」と思うかもしれませんが、実は志望校変更で大きくタイムロスをする分、まったく有利になっていないのです。

◆志望校を下げた受験生を待ち受ける現実

 さらに一度志望校を下げた人は、その後また志望校を下げやすくなります。「学力に自信がないから」という理由で志望校のレベルを下げると、同じ理由でどんどん志望校の偏差値レベルが下がる負のスパイラルに陥ってしまうのです。

 志望校を下げると、その度に志望校の過去問対策をやり直すハメになります。結局、こうなってしまうと、過去問演習が間に合わなくて残念な結果に終わるか、過去問演習なんて必要ないほど簡単な大学に落ち着くかの二択となります。

 どちらにせよ、受験が始まる前に本人が望んでいた結果ではないことだけは確かでしょう。

◆親がかけるべき「魔法の言葉」

 では、頑張る我が子に対して、親はいったいどんな言葉をかければいいのでしょうか?

 それは「子どもの頑張りを全肯定する言葉」です。とにかく褒めることが重要です。

 どんなに悪い結果でも、見えないところで子どもは頑張り、成長しています。ですから「昔よりずいぶんよくなったね!」というだけでも、救われるものです。頑張りを認めてあげることが一番大事だと、僕は実体験から感じています。

 時にはテストの点や、模試の判定が悪くて、親として口出ししたくなることもあるでしょう。しかし、こういうときに一番気に病んでいるのはお子さん自身です。

 親御さんは過度に干渉せず、優しく包み込んであげると、結果的に受験の成功につながるでしょう。

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa

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