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フルモデルチェンジ話題の86

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

初のフルモデルチェンジで2代目に進化したトヨタ「86」が姿を現した。

【画像】派生モデルも楽しみ【幻の86(先代)コンセプトと新型を比較】 全96枚

ところで、86といえばこれまで、初代モデルをベースにした何台かの派生モデルがモーターショーなどで公開されている。

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トヨタFT-86オープン・コンセプト    トヨタ

今回はそんな「市販されなかった幻の86」を紹介しよう。

市販化予定だった?オープンモデル

FT-86オープン・コンセプト」として2013年のジュネーブモーターショーで世界初公開されたモデル。

ルーフを電動開閉式のソフトトップとした、4人乗りオープンカーだ。

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トヨタFT-86オープン・コンセプト    トヨタ

このモデルは1台だけ作られたワンオフではなく、初公開から半年後の2013年の東京モーターショーではベース車を左ハンドルから右ハンドルへと変更したうえで、ボディカラーをホワイトから赤にイメチェンして日本公開されている。

リアフェンダーやトランクリッドなどBピラー以降はもちろんのこと、オープン化にあわせてフロントウインドウ周辺は標準車と異なる専用設計。

トランクリッド上にはクーペモデルとは異なるハイマウントストップランプも追加されている。

ショーカーながら実際に幌の開閉も可能に作られていて、ルーフからトランクへ滑らかにつながる幌を畳んだスタイルもエレガント。市販車と言ってもおかしくないほどの完成度だった。

何を隠そうこのオープンモデル、当時86の開発責任者を任されてたトヨタ自動車の多田哲也氏によると「真剣に市販化を検討していた」のだという。

市販モデルの生産を担うパートナーとしてトヨタとプロジェクトを進めていたのは、オーストリアのマグナ・シュタイヤー社。

同社は初のトヨタブランドの市販モデルとして現行「スープラ」の生産を担当しているが、実はトヨタとの共同プロジェクトはスープラが最初ではなく、この86オープンだったという。

そんな経緯もあり、このオープンモデルはコンセプトカーも市販を前提とした作り込みが施されていた。

しかし、実際に発売されることはなかった86の派生モデルだ。

スタイリッシュなシューティングブレーク

2016年5月、オーストラリアで公開されたのが「86シューティングブレーク・コンセプト」だ。

シューティブレークとは、スポーツカーをベースに作られた3ドアのツーリングワゴンを示すジャンル。このクルマはいわば、86のスポーツワゴンである。

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トヨタ86シューティングブレーク・コンセプト

ルーフを伸ばした車体はBピラー以降だけの変更だけかと思いきや、よくみるとBピラー付近でも標準車とはルーフの高さが違うことがわかる。

積載性だけでなく後席居住性も高められており「後席頭上空間が約10cm増している」とトヨタは説明していた。

企画やデザインはトヨタオーストラリア現地法人が担当し、製作は日本でおこなわれた。

オーストラリアの公開後、日本のイベントでも実車を公開。

当初は完全なるショーカーとして展示だけを目的に製作される予定だったが、実際にはしっかりと走れるように車体剛性やハンドリングもしっかりと確認しながら作られた。

自動車メディアにサーキット試乗までさせていると聞けば、その完成度の高さが理解できるだろう。

市販を前提としておらずあくまで純粋なコンセプトモデルだが、トヨタ自身が制作しただけにクオリティは抜群で、実際に発売されてもおかしくない水準だった。

何かと話題のターボがあった?

オープンモデルに続きシューティングブレークの提案と、トヨタは初代86のさまざまな道を模索していたことが理解できる。

しかし、86といえばやはり「走り」だ。何を隠そうトヨタ自身も、86の高性能モデルを提案し、実車を公開している。

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トヨタGR 86

オープンやシューティングブレークがお披露目されるよりも前の話だ。

市販モデルに近い86のコンセプトモデルである「FT-86 IIコンセプト」はじめて公開されたのは2011年3月のジュネーブモーターショーだった。

しかしその1年以上前ともなる2010年1月、東京では86を示唆するモデルの高性能仕様が公開されている。それが「FT-86 Gスポーツ・コンセプト」だ。

発表の場は、日本国内において東京モーターショーの次に大きな自動車イベントであり、カスタマイズカーの祭典でもある「東京オートサロン」。現在の「GR」のルーツとなる「Gスポーツ」というスポーツブランドの立ち上げと同時に公開された車両である。

市販モデルの86が公開される前とあり、FT-86 Gスポーツ・コンセプトのスタイリングは市販の86と異なる部分も多い。

しかし、基本的なパッケージングやフォルムはのちに市販されるモデルと同じで、何より車名にも86が含まれている。

ベースとなっているのは前年(2009年)秋の東京モーターショーで公開された、市販モデルを予告するコンセプトカーの「FT-86」だった(FTは「フューチャー・トヨタ」の略で将来のトヨタ車を意味する)。

Gスポーツ・コンセプトは東京オートサロンという場にふさわしいカスタマイズの提案だ。

ボンネットや大型ウイングなどのカーボンパーツの採用、そして前年の東京モーターショーとは異なるレーシーなデザインのフロントバンパーの装着。

スタイリングからしていかにもチューニングカーといった佇まいだが、注目はエンジン。

なんとターボチャーが追加され、86の高出力モデルの登場を予感させたのだった。

ワイドフェンダーのGRMNスポーツ

FT-86 Gスポーツ・コンセプトの公開から3年後の2013年東京オートサロントヨタは再び86の過給機付き高性能バージョンを用意した。それが「GRMNスポーツFRコンセプト・プラチナム」である。

ワイドフェンダーの装着で95mmも全幅を広げ、ヘッドライトやテールランプすらノーマルと異なるスタイリングはまさにチューニングカーの風格。

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トヨタGR 86

一方でフォルムは明らかに86だが、車名には「86」と入っていないのは興味深いところだ。

GRは「20年前にスープラが持っていたスポーツカーの『憧れ』や『輝き』。その思いを現代に蘇らせたハイパフォーマンス・コンセプトカー」と説明している。

エンジンはなんと、ターボに加えてスーパーチャージャーも追加したツインチャージャー。目標値として330psという出力を掲げている。

ここで紹介した4台の86派生モデルはいずれも市販はされなかった。

しかし、実車デビュー前のFT-86 Gスポーツ・コンセプトを除く3台は実際に走行も可能。

86をどう活用するかいろんな提案がおこなわれたことが理解できる。果たして新型86ではどんな派生モデルが登場するのだろうか。


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