北朝鮮には現在、確認されたものだけで8つの管理所(政治犯収容所)が存在する。

平安南道(ピョンアンナムド)价川(ケチョン)の14号と17号管理所、収監者が核実験場関連の労働に従事させられていたと伝えられている咸鏡北道(ハムギョンブクト)化城(ファソン)の16号管理所に加え、最近新設されたと伝えられる黄海北道(ファンヘブクト)の平山(ピョンサン)管理所、首都・平壌郊外の勝湖里(スンホリ)管理所などがある。

2012年にスタートを切った金正恩体制の初期においては、秘密警察である国家安全保衛部(現国家保衛省)が運営する管理所には、約13万人が収監されていた。韓国デイリーNKの複数の内部情報筋が昨年8月までに伝えたところによると、管理所の収監者は昨年3月の時点で、約16万人にまで増えた。ところが別の情報筋によると、それ以降、現時点までに、さらに少なくとも2万人が増えて、約18万人、あるいはそれ以上となったと見られるという。

「新たな法の制定により収監者が増加している」と説明したこの情報筋は、新たに収監された人々の罪状は新型コロナウイルス防疫規定と、反動思想文化排撃法の違反者がほとんどだと証言した。他のどの国でも、せいぜい罰金刑で済まされる防疫規定違反や、全く罪にならない韓流を含めた外国文化への接触で、生存すら困難な劣悪な環境の収容所に送り込まれる人が万単位で存在するという恐るべき証言だ。

情報筋によると、収監者が急増したのは昨年12月からで、そのうち勝湖里管理所には2万1000人が収監されている。この管理所の新設が明らかになったのは、昨年12月の別の情報筋からの情報に基づく。

この地にはかつて、貨泉(ファチョン)26号管理所が存在したが、国際人権団体の批判を受け、1991年に閉鎖。教化所、あるいは労働鍛錬隊(いずれも刑務所)に格下げされていた。1991年以前からここには収監者を強制労働させる炭鉱が存在したが、その建物を利用して、コロナ防疫規定の違反者を収監する管理所を復活させたという。

昨年12月初頭には、入れられたばかりの収監者53人のうち、6人が暴力などにより亡くなったという。医療インフラが極めて貧弱な北朝鮮で、コロナの感染が広がると、体制を揺るがしかねない事態となる。そのため、コロナを防ぐためなら人を死なせてもいいという本末転倒の状況になるのだ。

上述の情報筋によると、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の耀徳(ヨドク)にある15号管理所は昨年12月から今に至るまで、収監者が1800人増加し、咸鏡北道の清津(チョンジン)にある25号管理所は新規収監者のほか、社会安全省(警察庁)傘下の17号18号管理所から移動させられた200人ずつを含めると1000人以上増加した。

これは、素行に問題があると見なされた収監者を、社会安全省の管理所から、より厳しい国家保衛省(秘密警察)の管理所に送るという懲罰的な措置だ。これにより17号には1万9000人、18号には2万4000人が収監されていることになる。

全国の管理所収監者の数は、デイリーNK取材班が情報筋からの情報を総合した結果、現在は23万2400人に達する。総人口の約1%が政治犯収容所にいるという、極めて異常な状態だ。

コロナ規則違反、韓流以外にも脱北、密輸、違法な携帯電話の使用、物資の横流し、国家に対する批判などで、管理所送りになる者が急増しているとのことだ。

受刑者は公民権が剥奪されるため、ただでさえまともに保障されていない権利がすべて否定され、健康や栄養状態がいかなる状態にあろうとも一切配慮されることはない。情報筋も「管理所は健康をケアしてくれるところではない、『生きて出ろ』というのではなく、死んでも構わないというところ」だと述べている。

「昨年から現在に至るまで、国家保衛省傘下の管理所に連行された収監者10人のうち、3人は急な下痢や栄養失調にも薬すら与えられず死んだ。しかし、中央は死因の究明すら要求しない」(情報筋)

収監者が死んでも誰も責任を取らなくてもいいような仕組みになっており、そればかりか「楽に死なせてはならない」という考え方すらあるという。

2018年9月20日、韓国の文在寅大統領らと白頭山を訪れた金正恩氏(平壌写真共同取材団)