歳をとると認知機能が衰え、物忘れも多くなる。それが老化というものだ。だが高齢者の中には、いくつになっても記憶力バツグンな人たちがいる。
そうした高齢者のことを「スーパーエイジャー」と呼ぶのだそうだ。スーパーエイジャーと一般的な高齢者には脳にどんな違いがあるのか?アメリカ、マサチューセッツ総合病院の研究グループは「スーパーエイジャー」の記憶力の秘密を探るべく研究に取り組んでいる。
そして明らかになったのは、彼らの神経細胞のネットワークの一部が20代の若者の脳に似ていることや、普通なら歳をとるにつれて縮んでしまう脳が、萎縮しないままであるということだ。
目で見たものを効率よく処理するために、「視覚野(大脳皮質における視覚に関する領域)」にある神経細胞はさまざまなカテゴリーにグループ分けされている。これを「神経分化」という。
たとえばある神経細胞グループは顔に特化しており、顔を見たときにだけ記憶をつくり出す。あるいは馬に特化したグループがあり、馬を見たときにだけ記憶をつくり出す。これは記憶を思い出すうえでとても便利なやり方だ。
ところが、歳をとると、せっかく特定のカテゴリーに特化していた神経細胞グループが、ほかのカテゴリーを目にしたときにも反応するようになってしまう。
歳をとると記憶力が衰える原因の1つは、こうした神経分化の低下であると推測されている。反応するカテゴリーがだんだんと曖昧になり、そのせいで記憶を思い出しにくくなるのだ。
スーパーエイジャーの脳機能の一部は20代の脳に匹敵
今回、『Cerebral Cortex』(6月30日付)に掲載された研究では、スーパーエイジャーが何かを記憶してそれを思い出そうとしているときの脳をfMRIで検査した。実験ではまず、スーパーエイジャー40名に単語とペアになった写真をいくつか見てもらった。10分後、今度は同じ写真に別の写真・単語ペアをくわえて提示し、それが前回見たものか、それとも初めて目にしたものか答えてもらう。
このときの脳活動をfMRIでスキャンし、同じことを行なっている若者の脳と比較してみたところ、スーパーエイジャーの脳は若者と同じような活動を示していることが明らかになったという。
特に注目されたのは「紡錘状回(側頭葉の脳回)」と「海馬傍回(海馬の周囲に存在する灰白質の大脳皮質領域)」で、これらの活動は25歳の脳に匹敵するものだったそうだ。
「スーパーエイジャーは若者と同レベルの神経分化、すなわち選択性を維持しています」と主執筆者の勝見裕太博士は語る。
「彼らの脳はカテゴリーの異なる視覚情報の表象を個別につくり出すことができ、そのために写真と単語のペアを正確に思い出すことができます」
スーパーエイジャーの脳を知ることで認知機能を維持するヒントに
スーパーエイジャーの脳を知ることは、普通の人が認知機能を維持するヒントにもなるという。今回の研究は、視覚野の処理メカニズムが訓練可能なものであるとも述べている。その方法を確立するべく、研究グループは現在、非侵襲的な電磁気刺激で高齢者の記憶力を改善できないか臨床試験を行なっているとのことだ。
すでに記憶力、認知能力がぶっ壊れている私だが、私が高齢になって頭の中の消しゴムがフル稼働する前に、この研究を実用化して欲しいと切に願うわけだ。さっきも台所に行った瞬間、何しに行ったのか思い出せずに、すごすごと帰ってきて、またこうして机の前に座っているわけなんだしさ。
そもそも認知機能がやばいことを自覚してるから、こうやってそれ系の記事探しまくってるわけだしさ。
References:Study reveals source of remarkable memory of “superagers” / written by hiroching / edited by parumo
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