複雑かつ緊密につながりあった世界では、どこかで歯車が噛み合わなくなってしまえば、全体が崩壊してしまう危険性がある。
万が一、本当に文明が崩壊してしまったとしたら、どこの国に行けば、生き残れる可能性が最も高いだろうか?
英アングリア・ラスキン大学の研究者によれば、それはニュージーランドであるようだ。
ここでいう「文明崩壊」とは、複雑化した社会システムの崩壊のことだ。
現代社会は国境を超えたサプライチェーン(供給網)や金融ネットワークなどによって複雑に結びつき、それらは条約のような国際的なルールによって運用されている。
しかしそれらは環境破壊、資源の枯渇、人口増加といった要因と気候変動(地球温暖化)による災害が相まることによって、いともたやすく解体されてしまうリスクを孕んでいる。
東南アジアに新型コロナが拡大したことで、そこに生産拠点をおく他国企業のサプライチェーンが機能不全を起こすという状況は、私たちが今目の当たりにしている現実だ。
崩壊した世界で国家が生き延びるために必要な3つのもの
『Sustainability』(7月21日付)に掲載された研究によれば、そんな崩壊した世界で国家が生き延びるために必要なものは3つある。1つは経済の自給力。自前のエネルギーインフラと生産インフラがあり、自力でやっていく力だ。
2つ目は人口扶養力。他国に頼ることなく、国内で食料を生産する力だ。
3つ目は隔離レベル。周辺に人口密集地域があると、有事の際は難民などがやってきて人口扶養力に悪影響を与えるために、そうした地域から離れていることも大切となる。
最も生き延びる可能性が高い国はニュージーランド
それら3つの観点から分析したところ、崩壊した世界を生き延びるうえでもっとも有利な条件を備えているのはニュージーランドという結果だったという。 同国は、社会的・技術的・組織的な複雑性が国内レベルでよく発達している。また人口が少ないため、1人あたりが利用できる農地が多い。さらにエネルギーは地熱発電と水力発電によって賄うことができる。
ニュージーランド以外に生き延びる可能性の高い国は?
ニュージーランドには一歩及ばないものの、アイスランド、タスマニア(オーストラリア)、アイルランド、イギリスも似たような条件に恵まれ、生き延びるには有利と評価されている。だが、イギリスの場合、人国密度が高く、1人あたりが利用できる農地面積が小さいことが若干不安であるようだ。
これら5つの国はいずれも島国なので、もちろん隔離レベルは高い。
また海洋性気候であることもポイントだ。現時点で気温が低く、年間を通じて降水量も変わる。そのために温暖化が進行したとしても、比較的安定した状態が保たれる可能性が濃厚であるという。
では同じ島国である日本はどうか?
研究では、再生可能エネルギーとして利用できるリソースが豊富で、生産能力も高いため、経済の自給力という点では高評価となっている。しかし人口が多く、1人あたりの農地が非常に狭い点がネックであるようだ。
今後数年から数十年で大きな変化が訪れる可能性
研究グループのアレッド・ジョーンズ教授は次のように述べている。大きな変化が今後数年か数十年でやってくる可能性はあります。旱魃や洪水の増加・大規模化、極端な気温、人口の移動など、温暖化の影響がそれをいっそう大きなものにするかもしれません備えあれば憂いなし。あるはずがないと高を括るのではなく、できるときに準備しておくのがいいだろう。いくつかの災害を経て、そうしたことを私たちは学んでいるはずだ。
References:New Zealand is best placed to survive collapse / written by hiroching / edited by parumo
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