今回も残念な予測から記さねばならなさそうです。日本は「第6波」の感染を避けることができない可能性があります。

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「第6? 第5波じゃないの?」

 いえ「第6波」の話をしています。現在2021年8月、蔓延しているのは「第5波」の感染ピークで、1日あたりの日本全国新規感染者数記録を更新し続けている最中、東京都は新規感染者2195人で月曜日過去最高、また校正した3日は3709人で火曜日過去最高。

 さらに全国の感染者数は2日が8393人でやはり月曜過去最高、3日に至っては比較的数字の伸びない火曜日なのに、歴代2位の1万2017人という感染者数に上っています。

 大まかにこれが8月10日前後まで伸び続け、8月末には一通りの収束を見ることを期待したいですが、過去最大規模の感染者が出ること、それに伴う医療の逼迫、疲弊や部分的な崩壊は、避けがたい状況が懸念されています。

 しかし、いま上で私が記したのは、2021年冬から22年にかけての「この冬の新型コロナウイルス感染症」で、残念なことですが、またピークがで出るのは、まず避けられないだろうという見通しです。

 それがどれほどの規模になるかは分かりません。

 ただ、それが「人災」の側面を持つことへの警鐘を最初に鳴らしておきます。この秋の日本の防疫を考えるうえで最大のリスクは「政局」であることを心配しています。

 現在の衆議院議員の任期は令和3年10月21日木曜日ですので、これを待たずして解散総選挙となるはずですが、具合の悪いことに、これが9~10月の時期に当たっている。

 この9~10月に、適切な防疫対策が打てるか否かが、2021年11月以降、秋冬のインフルエンザピークの山を抑えられるかを決定します。

 公式答弁としては「10月までには80%の接種完了」を言うわけですが、現実には、様々な要因で接種は進んでいません。

 ワクチン接種状況を簡単に振り返っておきます。

 5月の時点でも1回接種者が2%台にとどまった日本ですが、8月初めの段階で1回接種34.47%、2回接種24.59%(首相官邸公開データによる)という水準までは漕ぎ着けました。でもこの先のワクチン接種率上昇の推移が見通せません。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

 手元で簡単に予測計算してみると・・・

2020年8月までのワクチン接種率(1回:青、2回;赤)と8月以降の推移予測

 期間全体の線形予測と、最近2か月の上昇率を上下限に可能性の幅を大まかに見積もって観察してみましょう。

 10月末の時点で、1回接種75%にたどり着けば相当優秀、2回接種60%が達成できればかなり上首尾といえそうな見通しかと思います。

 ここであらかじめ記してしまいますが。10月末日時点での接種率が1回接種60%台以下、2回接種完了者50%以下といった値であるなら、2021年秋冬には、今回規模に比肩しうる感染拡大があっても不思議ではない。

 つまり国民の3~4割がワクチン未接種であれば、冬のインフルエンザ・シーズン、十分にパンデミックを心配しておく方が無難でしょう。備えあれば憂いなしです。

 いま、まだ夏の間から、なぜそんなことを言うのか・・・。

 いえ、夏の時点で、接種の順番が完全におかしくなってしまっているからにほかなりません。

中年より2倍感染する20代、30代

 いま、手元に「日本医学会連合」が2021年7月29日付取りまとめた「COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言」という文書(https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/07/20210730161541.pdf)があります。

 その内容は、この種の文書のなかでは抜きん出て網羅的で優れたものであると思いますので、ここにリンクしています。

 それでも完全とは言えない部分が目につきます。例えば、提言は「8」として「高齢者等の優先接種者への速やかな接種が望まれます」と記しています。

 その内容自体は、従来の経緯を踏まえ「本来の優先接種対象者」を大切に考えるものになっていますが、いまや市中感染ピークを毎日記録更新している、2021年8月の感染実態とは、やや乖離が見られるように思いました。

 7月末時点での、感染者の年代割合を見てみると

2021年7月末時点での日本国内の新規感染者、世代別割合

 いまや20代、30代だけで、全体の過半数を超える状況になっていることが分かります。なぜ20代、30代に流行るのか?

 少なくとも2つの異なる要素が指摘できます。

 第1は、ワクチン接種率が伸びていないから感染を避けられない。

 第2は、若い世代は罹患しないと誤解したまま、人流などを形成して互いに感染し合う。

 これらは日本医学会連合が考える、基礎的、病理的な原因と異なる2つの要因すなわち

A ウイルス病原体の突然変異によって、若年者にも感染するようになっている

B 20代、30代は夏場に人流を形成して、集団で高リスク層を自ら作り出している

(「アーティファクト」)

 が大きく作用しています。

 みなさん、考えても見てください。日本は少子高齢化の真っ最中です。そもそも若者の人口は少ないのです。

 そうであるのに、コロナ感染者数では、全体の過半数を若者が占めている。これはどういうことか?

 人口分布から考えてみましょう。

 図は厚生労働省の資料から作ったもので、実は少しデータが古いのですが、仮にこの図で議論すると「20代、30代」は、人口の約4分の1にあたっています。

 また「40代、50代」も4分の1程度、「60代、70代」も4分の1程度、さらに「10代以下と80代以上」を合わせて約4分の1。10代以下だけだと6分の1位に減っている。まさに少子高齢化です。

 実際、厚労省の世代別人口統計と比較してみると、人口割合では少ない20代が、感染者の中では著しく多くの割合を占めているのが目につきます。

 20代、30代は人口比でいえば25%ほどなのに、感染者比では5割を超えている。

 ざっくり言えば、若者は中高年よりも2倍以上感染している「高リスク層」の中核をなしているのが明らかです。

今からでも遅くないワクチン接種最適化

 こうした傾向は先行する海外事例から十分予測され、東京都新宿区のように20代、30代を優先接種という方針を出した自治体もあります。

 しかし、日本全国で見れば今もって「接種は高齢者から」という段階的な行政の敷いたレールが変わっておらず、かつそのスピードが、人為的なワクチン分配の不順によって遅れる傾向が見えている。

 8月から10月にかけての時期、20代、30代への打ち漏らしがどの程度残るかによって、今年の冬の第6波、また2022年度以降にも日本のCOVID-19や後継伝染病が、どのように残存するか、見通しを立てることができてしまうように思われます。

 いまからでも決して遅くはない。ワクチン接種の最適化を国を挙げて再検討すべきタイミングだと思います。

 また政局の空転などが悪く影響して、ウイルス対策や防疫施策が時宜を逸するなどは、言語道断です。

 科学的な根拠に基づく、有効な施策をもっぱら推進していかなければ、いつまで経ってもこの堂々巡りから抜け足すことは困難でしょう。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  見かけ上の感染者数

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