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〈輸入品は需要盛り上がらないが、コスト高受け相場上昇〉
7月の鶏肉需給は、前半が梅雨による天候不順、中旬以降は急激に暑さが厳しくなり、モモ需要が週を追うごとに弱まった。一方でムネは安定した加工筋需要、夏場の量販店需要に支えられ高値を維持した。モモは需要が弱いながらも2020年同時期を上回る相場を形成してきたが、7月はついに2020年並みにまで下落を見せた。ただし2020年7月はコロナ禍で内食需要に支えられていた時期であり、2019年比では依然高値水準といえる。ムネはコロナ禍では高値安定が続く。今夏はササミ手羽先需要も顕著で、一時期は品薄も懸念されたが、供給を維持しているようだ。

輸入品は6月末に緊急事態宣言が一度解除され、東京五輪開幕・4連休に向け一定程度の需要回復が期待されたが、コロナ感染拡大となり期待したほどの回復には至らず苦戦が続く。国内需要はコロナ前から減少しているが、現地でのコスト高、生産量確保が進まないため仲間相場は上昇傾向にある。

7月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが600円(前年597円)、ムネは301円(前年262円)と正肉合計901円となり前月比25円安となった。それでも900円超えを維持し昨対比では42円高となっている。モモは前月比30円安、ムネは5円高となった。

[供給見通し]
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、8月の生体処理羽数は前年同月比2.0%増、処理重量は前年同月比3.2%増と増加基調を維持すると予測している。

地区別では主要産地の北海道・東北地区では処理羽数は2.8%増、処理重量は3.5%増、南九州地区では羽数1.1%増、重量2.7%増を見込む。9月も羽数・重量ともに増加基調を見込むが、今夏の台風や暑さの影響で増体不良などが見られれば、秋口の供給は昨年同時期を若干下回る可能性もある。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、8月の国産生産量は13.4万tと前年同月比4.5%増を見込む。6〜8月の3カ月平均でも13.7万tと1.8%増を予測している。

輸入品は、7月はタイからの輸入量が前年同月から増加するものの、ブラジルや米国からの輸入量が減少すると見込まれ、12.9%減の4.5万tと予想。8月は前年同月に在庫水準が高まり、輸入量が少なかった反動もあり12.9%増の4.5万tを予測している。前年同月比では増減があるものの、4.5万t前後の輸入量で安定している。3カ月予測でも5.2%減の4.5万tを予測している。今後はブラジルからの輸入量が現地でのコスト高により前年を下回り、タイも現地工場でのコロナ感染状況などもあり数量が減少する見込みだ。

[需要見通し]
首都圏では7月末から厳しい暑さとなり、量販店での食肉販売は振るわない一方で、総菜需要が高まっているようだ。モモは夏場が一番の不需要期でもあり、需要は一段と緩むものとみられる。しかし、緊急事態宣言が発出されたことで、帰省や旅行自粛となれば内食需要が期待され、価格優位性の高い鶏肉への引合いも期待したい。ムネやササミ手羽先は暑さが厳しい間は引続き、強い引合いが期待される。輸入品は外食には期待できないが、テイクアウト需要や、チキンバーガー専門店が増えるなど、工夫次第では販売先開拓の余地はあるようだ。

[価格見通し]
国産生鮮モモは需要が弱まり、例年8月が底値となるため、7月からジリ安と予測する。モモは4月以降下落が目立っており、8月も続落が見込まれる。ムネは週ごとのアップダウンはあるものの、安定した需要に支えられることでもちあいと予測する。そのため日経加重平均ではモモは595円前後、ムネは300円前後、農水省市況ではモモは620円前後、ムネは310円前後と見込まれる。

〈畜産日報2021年8月5日付〉