カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

脳が完全に残された状態のカブトガニの化石を発見
 アメリカ、イリノイ州にあるメゾン・クリーク化石層から3億1000万年前のカブトガニの化石が発見され、『Geology』(7月26日付)で報告されている。

 化石の発見自体はさほど珍しいことではないが、今回珍しかったのは、この化石に脳が残されていたことだ。

 カブトガニの脳の化石が発見されたのは史上初めてのことで、その中枢神経の進化について意外な事実を今に伝えているという。

【奇跡の発見、脳が残された状態で発見されたカブトガニの化石】

 脳が残された状態で化石化していたのは、「Euproops danae」と呼ばれるすでに絶滅したカブトガニの仲間だ。ちなみに”カニ”といっても、カブトガニはカニではない。「クモ綱」に分類されており、むしろクモやサソリに近い。

 大昔の生物の姿を今に残す彼らは、4種が現生しており、日本にも佐賀県岡山県などに繁殖地がある。

 「生きている化石」と呼ばれる彼らの化石はそう珍しいものではない。しかし腐りやすい軟組織まで残されるには、とてつもない幸運に恵まれなければならない。

 カブトガニが死んだとき、保存に完璧な条件が整っているか、さもなければ琥珀にでも閉じ込められなければありえないからだ。

 その珍しさについて「100万に1つか、それよりも希少」と、研究の中心人物であるニューイングランド大学のラッセルビックネル氏は説明する。
1_e0
絶滅したカブトガニ「Euproops danae」の化石。Aの四角で囲まれている部分が脳。Bはそれを拡大したもの( image credit:Russell Bicknell)

脳組織の隙間を鉱物が埋めていた

 発掘場所であるメゾン・クリーク化石層の堆積物は、鉱物沈殿してできた「菱鉄鉱」だ。こうしたプロセスがあるために、ここで生きていた生物はすぐに閉じ込められて化石になりやすい。

 発見された脳もこうして化石になったが、組織がそのまま残されているわけではない。脳組織は腐敗して、その隙間を「高陵石(カオリナイト)」という粘土鉱物が埋めていた。いわば鋳型が残されたようなものだ。

 都合がいいことに、菱鉄鉱は灰色で、高陵石は白だ。だから余計に目立って見えるのだという。
3_e0
発見された太古のカブトガニ、Euproops danae(A&B)の脳は、現在の親戚であるカブトガニ(C&D)の脳と非常によく似ている / (image credit:原文Russell Bicknell (A-C), Steffen Harzsch (D))

カブトガニの脳は大昔から変わっていない

 カブトガニの脳の発見は、クモ綱の動物たちの脳の進化を研究する絶好のチャンスだという。しかし今回の化石からは研究者もびっくりの事実が明らかになっている。

 3億5900万年~2億9900万年前の「石炭紀」を生きたカブトガニの脳は、現在のカブトガニとほとんど変わらなかったのだ。さすが生きている化石と呼ばれるだけのことはある。

 そんなカブトガニだが、その魅力的なフォルムを愛でるだけでなく、彼らが命を賭して大勢の人間の命を救っているという知られざる事実についても知っておいてほしい。

References:Decoding the secrets of a 310 million-year old brain - University of New England (UNE) / Ancient brains: a look inside the extraordinary preservation of a 310-million-year-old nervous system / written by hiroching / edited by parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

水中生物の記事をもっと見る

漁禁止区域で網にかかってしまったアカエイを救出するダイバー - カラパイア

海岸に座礁したシャチを救うため、海水をかけ続ける人々。高潮に乗り自力で海に戻ることに成功(アメリカ) - カラパイア

ニコラ・テスラの発明品かな?CTで明らかになったサメの螺旋状の腸 - カラパイア

熱波による水温上昇に耐えきれず、体に異変をきたすサケ(鮭)が続出 - カラパイア

史上初、脳が残されたカブトガニの化石を発見。構造は3億1000万年前から変わっていなかった