世界的昆虫学者・宮竹貴久教授(岡山大学)が、8月8日放送の「日曜日の初耳学」(毎週日曜夜10:00-10:54、MBS/TBS系)に出演。林修のインタビューに答え、増え続ける新型コロナウイルス変異株に対する昆虫学者としての受け止め方などについて語った。

【写真を見る】林修先生自身が熱望して宮竹教授との対談が実現! 

■「生物は常に変異している」

宮竹教授の「―初耳学」出演は、林修先生自身が熱望して実現した。「プレジデントオンライン」に宮竹教授が寄稿した、進化生物学の観点から見たワクチン接種計画への提言の記事に林先生が感銘を受け、「(記事の主張を)広く世間の方に伝える機会ができないか」と願ったことが、今回の出演につながった。

ウイルス変異株が問題視されている昨今だが、記事の中で宮竹教授は、ウイルスに変異株が現れるのは進化生物学的に言えば当たり前で、ウイルスはワクチンに対抗して変異し、「ここから“いたちごっこ”が始まる」可能性を示唆している。

林先生から「ワクチンに耐えうるウイルスが出てくる?」と聞かれた宮竹教授は「(ワクチンに対する)抵抗力が少しでもある変異体が現れると、それが瞬く間に置き換わっていく。その危険性がゼロではないです」とうなずいた。

宮竹教授は、かつてその“いたちごっこ”を体験している。それが、沖縄県職員時代の1971年に始まった害虫ウリミバエ根絶プロジェクト。沖縄・奄美地方のゴーヤやマンゴーを食い荒らしていたウリミバエを20年以上かけて根絶させた。

放射線を当てて不妊化したオスの成虫をヘリコプターで大量に撒き、繁殖を封じ込める。だが虫を撒くスピードが緩むとメスが学習し、正常なオスを見分けるようになる。プロジェクトは、時間との闘いだったという。

林先生が、現在進行中の新型コロナウイルスワクチン接種計画を念頭に「昆虫学者のお立場からは、ワクチンもスピーディに一気にやるべき?」と尋ねると、宮竹教授は「個人的にはそう思います」と同意した。

■「研究者としてものすごく嬉しい瞬間ですね」

子どものころから虫が大好きだった宮竹教授。今の道につながった直接のきっかけは、沖縄県職員時代に趣味で始めたアリモドキゾウムシの“死んだふり”の研究だったという。

「(虫の死にまねが生き残りに本当に役立っているのかを)ちゃんと立証したデータがまだないことに気付いたんです。ワクワクですよね。今この瞬間、世界でこれに気付いているのは私だけなんだ…これは研究者としてものすごくうれしい瞬間ですね」と宮竹教授。

その後、岡山大学の教授に就任。論文が世界的に権威ある科学誌で紹介され、やがて、海外の名門大学で使われる生物学の教科書でも大きく扱われるほどに。さらに近年は、虫の死にまねの研究が人間の医療に応用できる可能性も見えてきているという。

「研究をやり始めたころは『そんなことをやって何になるんだ』と言われました。でも、世界で誰もやっていないことを公表すると、人類の知識が一つ増えるわけじゃないですか。それは、小さくても大事なことなんじゃないかと思い続けてやっていましたね」と宮竹教授。

それが今や、「虫の死にまね」の世界的権威。「小さな分野でも、その道を究めてトップランナーとして走ると、見えてくる世界が違う」としみじみ語った。

■大学受験時の偏差値は39だった!

そんな宮竹教授、大学受験時は「虫ばっかり取って受験勉強まったくしていなかった」のだとか。当時の偏差値は39.5で、得意なはずの生物も偏差値41。志望大学はすべてD判定だった。これには林先生も「率直に申し上げて、これはかなり悪いですね」と苦笑い。

だが、琉球大学3年次に「生物の行動学」に出会い、「世の中にこんな面白い学問があるのか。これは遊んでいる場合じゃないぞ」と一念発起。生物の研究に目覚め、没頭した。

共通一次試験で200点満点中65点っていう英語の成績でしたけど、今英語で本書いていますからね」と振り返った宮竹教授。

インタビューを終えた林先生は「教授の生き方からまず学ぶべきは、どんな小さな分野でもまずNo.1になること。そうすることによって景色が変わるっていうことが大事だと。そして、今は役に立つかどうか分からない研究、そこへの資金を止めてしまうのは長い目で見たときに大きな損失につながるので、そこは何とかしてもらいたい」と提言し、締めくくった。

偏差値39から、今や“昆虫の死にまね”の世界的権威となった宮竹貴久教授が「日曜日の初耳学」に出演 /(C)MBS