強くあるためには心身の充実が不可欠だ。メンタルとフィジカル、双方のコンディションが揃って初めて選手とチームはその本来の力を発揮する。当たり前だが基本でもあるこの事実が、最下位の横浜FCが5位の名古屋グランパスを粉砕した理由である。満ち足りたホームチームはその良さのすべてを出し、疲弊したアウェイチームはチグハグしたまま萎んでいった。

 6月18日にタイへと向かい、そこから1カ月余りの隔離生活の中で過密日程を戦ってきた名古屋は、その生命線でもあるインテンシティを大きくすり減らしていた。とにかく機動力が出ない、ボール際の争いにパワーが出しきれない。フォーメーションのミスマッチもあった横浜FCとの対戦では相手の優位な形でボールを持たれることが多く、その隙を一気に突かれて9分で失点した。オウンゴールの結果は仕方なくとも、後手に後手を重ねて喫した失点の流れは看過できるものではない。「立ち上がりから相手のプレスであったり、気迫というところでも少し受け身に回ってしまった」とは吉田豊の言だ。そこで不安定さを出さないのが名古屋の強さだったはずが、脆さを露呈したのはチーム全体の摩耗を感じさせるところ。

 2失点目は風で押し戻されたフィードの処理で相手に競り勝たれ、松浦拓弥の美しいスルーパスを松尾佑介にループで仕留められた。二つの失点にはどちらも隙を突かれたという共通点があり、ベンチもピッチも、「ああいう失点の仕方をしているようでは、絶対に勝てるわけがない」(マッシモ・フィッカデンティ監督)、「失点のところはちょっとした隙や緩みのところを相手に突かれた。そういうことをしていると自分たちが勝点を積み重ねるのは難しい」(稲垣祥)という意見で一致している。名古屋は、名古屋らしさを失っていた。

 一方で中断期間をフル活用してチーム全体をリフレッシュしてきた横浜FCには、とにかくエネルギーと自信が満ち満ちていた。この間に招き入れた新外国籍選手5名のうち4名をメンバー入りさせ、U-24ドイツ代表GKスベンド・ブローダーセンとブラジルセンターバックのガブリエウはわずか数日のトレーニング期間でスタメン起用。賭けにも見える一手はしかし、「隔離期間中もオンラインコミュニケーションをとり、戦術的なことやコンセプトを理解してもらっていた」(早川知伸監督)と、できる限りの準備のもとに下した判断だったという。

 結果、ガブリエウは名古屋のアタッカーを力強く跳ね返し、ブローダーセンは50分の名古屋最大の決定機である前田直輝のシュートに見事な対応を見せている。サウロ・ミネイロフェリペ・ヴィゼウのFW2枚も後半に投入され、特にサウロは抜群の身体能力でスタジアムを何度も沸かせている。2得点どちらにも絡んだ松尾佑介は持ち前のスピードあふれるプレーを存分に見せ、瀬古樹や高木友也も実に躍動感あふれるプレーゲームを席巻。渡邉千真、マギーニョらも巧みな存在感を誇示し、90分間を横浜FCの試合に仕立て上げた。瀬古は言う。「方向性を全員で合わせていく、一人が外れそうなら戻す。やることを揃えれば強い相手にも勝てると証明できている。整ってきている」。横浜FCは、その良さを整理してきっちり表現していた。

 希望と野心に溢れる横浜FCは今季初の無失点による連勝で勢いに乗った。問題は名古屋だ。AFCチャンピオンズリーグでの快進撃にやや見失いがちだが、リーグ戦ではこれで5戦連続勝利がなく、2分3敗で6失点、得点はわずか1(しかも鳥栖戦のオウンゴール)である。新外国籍ストライカーのヤクブ・シュヴィルツォクとケガから復帰の金崎夢生が今後は起用できるようになるとはいえ、その時期は曖昧でチームは息つく間もなく連戦を戦う。傷口は徐々に広がっている。可及的速やかに手当てをし、これ以上の“ケガ”を抑えなければジリ貧だ。フィッカデンティ監督はやや沈んだ表情で語る。「どんな内容だろうと勝って帰っていくよね、というのがやはり我々なので」。次節は3日後の横浜F・マリノス戦。同じニッパツ三ツ沢のピッチを舞台に、名古屋はその意地と“らしさ”を見せることができるか。

文=今井雄一朗

横浜FCが名古屋に勝利し、今季初の連勝を飾った [写真]=Getty Images