現在、FRBが対峙している相手がパンデミックであることは、テーパリング(金融緩和縮小)の議論を難しくさせている大きな要因であろう。100年に1度と言われている感染症が引き起こす経済へのダメージが、どのくらい深刻であるかは未知数だ。

【前回は】力強い雇用統計は夢か現か幻か 各市場の値動きと次のターニングポイント 前編

 ワクチン普及によりすでに終息に向かっていると言えるのか、ニューノーマルの時代がこれまでの実体経済にどれだけの影響を与えるのか、誰にも予測することはできない。企業の好決算がどこまで真実であるかも判断は難しい。FRBは非常に難しい手綱捌きを迫られている状態にあると言えよう。

 さて、上昇で引けたダウ平均株価に対して、ナスダック市場がマイナスで引けたことは注視しておきたい。雇用統計後のダウ平均株価の上昇も150ドル程度であり、力強さは感じられなかったが、これまでアメリカの株式市場全体をけん引してきたGAFAM(GoogleAmazonFacebookAppleMicrosoft)を含むナスダック市場が弱いのであれば、アメリカ全体の株式市場は強弱付けがたい気迷い状態と言える。

 また、ダウ平均株価に連動しやすい日経平均株価については、雇用統計前に反発したが、日本銀行によるETFの購入は7月1日以降8月6日時点までゼロとなっており、27,000円という大事な節目を割れる前に自立反発したと言ってよいだろう。

 企業の好決算が買い材料となったと考えられるが、未だに200日線を越えられない状態は続いており、こちらも力強さは感じられない。しかしながら、FRBのテーパリング観測が強まれば、つまりは将来的な利上げはドル高起因となる一方、円安起因ともなるため、輸出産業にはポジティブ要因ではある。

 一方、雇用統計に過剰に反応したと言えるのが、ドルと逆相関の値動きをするゴールドであろう。将来的な利上げはドル高起因となることから、ゴールド安となることは理解できるが、週明け9日の早朝にも大きな下落を引き起こしており、その理由は判然としない。

 しかしながらリスクオフ資産とされる無国籍通貨のゴールドが売られるのとは対照的に、リスクオン資産とされる無国籍通貨である仮想通貨の上昇は際立っている。ゴールドが売られた資金が株式市場ではなく、仮想通貨へ向かっているのだとすれば、FRBとしては面白くないだろう。

 このような状況下で、FRBはテーパリングの手綱をどのように捌いていくのだろうか。これまでを振り返ると、FOMC(連邦公開市場委員会、アメリカの金融政策を決定する会合)で投票権を持つメンバーがテーパリングをほのめかし、FRB議長が後日それをなだめる発言をするというパターンが目立つ。

 力強い経済指標を背景にテーパリング観測が高まるなかで、次に注目すべきは8月26日から28日に行われるパウエルFRB議長の講演(ジャクソンホール会議)であろう。非常にセンシティブかつ前例のない環境下での実験が、いよいよ始まろうとしている。

力強い雇用統計は夢か現か幻か 各市場の値動きと次のターニングポイント 後編