近年、佐賀空港や仙台空港など、国内線中心にもかかわらず「国際空港」を名乗る空港が増えてきました。この名称の変更はなぜ生じたのでしょうか。その歴史を見ていくと、それぞれの空港の願いや思惑がありました。

かつては5つのみだった「国際空港」

古くから「国際空港」と呼ばれている空港は、成田(旧:新東京国際)、羽田(東京国際)、伊丹(大阪国際)、関西(関西国際)空港の4つです。

ただ近年、地方空港でもその名に「国際空港」を冠するところが増えてきているのです。仙台空港(仙台国際)や佐賀空港(九州佐賀国際)が、このケースに入ります。これらの空港は、国内線がメインの空港ではあるものの、実際に公称、もしくは愛称の範囲内で、そう呼ばれています。

わが国では、かつて、空港の分類として、国土交通省が直接管理していた大空港「第1種空港」が5か所、それよりは規模は小さいものの国土交通省が管理していた「第2種空港」が23か所、地方自治体などが管理していた「第3種空港」が54か所のほか、米軍、防衛省が使用している飛行場といった区分けがされていました。このとき「国際空港」の名前は、実質的には国際定期便の運航に不可欠な第1種空港のみが名乗ることを許され、成田、羽田、関西、伊丹、そして中部の5空港につけられていました。

これが全面的に整備、改正されたのが、「空港整備法」に代わり2008(平成20)年に制定された現在の「空港法」です。

この制定は、当時急速に変貌しつつあったアジアの動向や、近年の産業事項、観光の動向などへ適切に対応するためといった背景があります。また、ここでは空港の区分けが新たに見直されることとなりました。つまりこのときから、先述の5空港以外のところも、「国際空港」を名乗ることができるようになったといえるでしょう。

ただ、空港側が自らを「国際空港」と称することができるようになったゆえに、実態と空港名に大きなギャップが生じる空港も出てきました。たとえば、新千歳空港福岡空港などは常時国際線が乗り入れており専用ターミナルもあるため、国際空港と名付けてもよいのではと筆者個人的には思いますが、空港法上は付いていません。

一方で、佐賀空港国際線受け入れ施設こそ備えるものの、その便数はわずかです(現在はコロナの影響で国内線のみ)。一般的に思い浮かぶような「国際空港」のように、1日にたくさんの入国者をさばくことは難しいでしょう。

佐賀&仙台 なぜ「国際空港」と名乗るように?

ただ、佐賀空港や仙台空港が自らを「国際空港」と名乗るのは、空港を運営する側の思いが込められていると言えるかもしれません。

佐賀空港2016(平成28)年、「有明佐賀空港」から「九州佐賀国際空港」へ愛称が変更されました。これには裏事情があるようです。前述の様に、北海道新千歳)、関東(成田)、中部(セントレア)、近畿(伊丹・関西)には日本を代表する空港が設置、運営されており、九州でも九州国際空港を設置しようという動きが1990年頃から起こりました。

ただ九州の空の玄関口、福岡空港の収容力が不足することが予想されたため、新空港は玄界灘などが有力な候補地とされた一方で、佐賀県も積極的に県を挙げてこれを誘致することとしました。佐賀県は、候補地のひとつに佐賀空港をあげています。九州国際空港のプランは、福岡空港の拡張という形で妥結され、現在凍結となっていますが、この改称は、佐賀県側が九州国際空港へのアピールを図ったのではと、筆者は勘ぐっています。ちなみに、空港法においては地方管理空港で、正式には佐賀空港のままです。

仙台空港は、空港法における国管理空港で、元は第2種空港に分類されていました。2016(平成28)年に、ターミナルビルは国内で初めて民営化され、仙台国際空港株式会社が運営しています。2011(平成23)年に発生した東日本震災後、宮城県が仙台空港の民営化を打ち出し、国際線にも力を入れる意味で「仙台国際空港」という愛称を起爆剤としようとした、とも考えられます。

空港法上は、「国際空港」を称する場所でなくとも、第1種から第3種の計82空港すべてにおいて、愛称として「国際空港」と名乗ることが可能で、設備が整えば国際線を就航させることができますが、現在は新型コロナウイルス感染拡大下。国際線を以前のように飛ばすのは難しい状況です、いつか国内線のみならず、日本中を国際線が飛び交う状態に戻って欲しいと感じているのは、筆者だけではないと思います。

佐賀空港(乗りものニュース編集部撮影)。