地球と太陽との距離は約1億5千万kmであり、この値を1天文単位という。この距離は、地球に生命が誕生して進化を遂げていくため、非常に好都合な値であったことは、言うまでもない事実である。一方で木星と太陽との距離は5.2天文単位もあり、木星が単位面積当たりで受け取ることができる太陽放射エネルギー量は、単純計算でも地球の27分の1(つまり5.2の2乗の逆数)に減衰し、そこから推定される木星大気の平均温度は-70度程度となるはずである。

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 しかし実際に観測をしてみるとその温度は推定に反して、420度にも達しているという。実は木星における高層大気温度が異常なまでに上昇している原因については、過去50年間謎のベールに包まれていた。この謎についてJAXAは5日、原因を解明したと発表した。

 JAXA研究チームは、木星上空の大気温度分布を調べ、全球における詳細な温度マップを作製。ホームページでは、木星全球の時系列的な温度変化を非常に高解像度の動画として公開されている。これを見れば、木星上空の温度がどのように変化するのかが視覚的に手に取るようにわかる。

 この動画で明白なことは、木星の北極と南極に位置する上空大気温度が非常に高く、その高温が時間の経過に連れてだんだんその周辺部の大気の温度上昇をもたらしていることだ。

 木星の北極や南極では、木星の衛星・イオの火山活動によって供給された大量の荷電粒子が、木星の非常に強力な磁場に捕らえられ、その結果オーロラが発生する。また、JAXAの惑星分光観測衛星「ひさき」が2013年の打ち上げ以降、地球周回軌道から木星のオーロラを長期間にわたって観測。木星のオーロラが、太陽風(太陽から吹き出す荷電粒子の流れ)の影響を強く受けていることを突き止めた。つまり木星の北極、南極で発生するオーロラが熱源となって木星大気温度の上昇がもたらされていたのだ。

 実はオーロラ原因説も以前提唱されていたのだが、木星は自転速度が速いため、オーロラによる熱発生の影響が、北極部や南極部から木星の低緯度部に伝播するとは考えにくいとするのが定説であった。だが、JAXAの研究でこの論争には終止符が打たれることになるだろう。

 またハビタブルゾーンも、今回解明されたメカニズムが適用できる条件下では、太陽系のそれよりもかなり外周側に拡大される可能性もあり、より広範囲での生命誕生に期待が持てそうである。

木星の高層大気が420度もの高温に達する原因を解明 JAXA